世界中で毎週のように開催されている「キャットショー」。19世紀末に英国で開催されて以降、ヨーロッパやアメリカでは「キャットショー」を主催する多数のキャット・クラブが設立されました。303種類の猫が掲載された猫図鑑「フォーグル博士のCATS」では、CFA(The Cat Fanciers’ Association)とTICA(The International Cat Association)の2大「キャットショー」が紹介されています。
「キャットショー」に登場する血統猫とは、ほかに類のないオリジナルな特徴を持つ猫種のこと。後世にその品種を伝え残していくという目的で、CFAには39品種が公認されています。自然に生まれた土着猫や突然変異による耳の折れた猫種、また既成の猫種を掛け合わせたハイブリッドの猫種など、姿だけでなく性格もさまざま。「キャットショー」にはそんな多種多様な猫が集まり、猫たちの美しさを競います。
《ペルシャ・ホワイト》
なんだか敷居が高く感じる「キャットショー」ですが、実は一般の人も無料で見学することができます。そこで今回、ilove.catは横浜で開催されたCFA JAPAN REGIONが主催する日本最大規模の「キャットショー」に潜入。ディレクターの小泉かよ子さんに「キャットショー」の楽しみ方について伺いました。
《メインクーン》
—CFAが主催する「キャットショー」とは?
「私達がやっている『キャットショー』は、CFA(The Cat Fanciers’ Association)といって、1906年にアメリカで創設されました。 CFAは血統猫を保護するだけではなく、人間と猫のコミュニケーションをより深めていくことを目的にしています。日本では40年前からCFA主催の『キャットショー』が開催されており、CFA JAPAN REGIONという名前になってから、来年で20周年になります」
—今回は何匹の猫が参加しているのですか?
「全部で229匹です。普段の『キャットショー』では80〜120匹くらいですが、今回は特に参加者が多いですね。日本各地にCFA公認のキャットクラブがあり、今回は各地のクラブが集結した日本最大規模のキャットショーとなっています」
《オシキャット》
—プロのブリーダーさんが参加しているのですか?
「もちろんプロのペットショップの方もいますが、普通の家庭で猫を飼っている方も参加しています。私達は100%ボランティアで活動していて、『キャットショー』は販売目的というよりも、猫を通した“コミュニケーションの場”でもあると考えています。例えば、病気の猫にはきちんとした獣医をご紹介することができますし、地方の獣医ならどこがいいかなど、猫に関する情報交換をしているんです」
《ソマリ》
—犬は公園などで他の飼い主さんと交流ができますが、家の中で飼っている猫が外で交流することは難しいですよね。
「そうなんです。いってみれば、子どもの“公園デビュー”のような感じですね。東京だけではなく、北海道や大阪からもきている人もいるんですよ」
《アメリカン ショートヘア》
—ジャッジ(審査員)はアメリカからも来日されています。どのような人がジャッジをやっているのですか?
「ジャッジになるのは非常に難しいです。ブリーダーの経験が7年以上、自分で繁殖し『キャットショー』でグランドチャンピオンになった猫が10匹以上であることが条件。さらには、人間性も加味され、既存のジャッジからの推薦がなければなることはできません」
—参加するにはとても敷居が低いのですが、実際の審査する人々は、猫のプロフェッショナルが揃っていると。キャットショーに参加する、一番の目的は何なのでしょうか?
「例えば、自分の子どもが学校で成績が良かったら親は誰でも嬉しいですよね。さらに、学芸会で舞台にあがって拍手をもらえるなら、そんな幸せなことはありません。もちろん対抗意識はあって、顔はニコニコしていてもみんな“うちの子が一番!”と思っているんですけど(笑)」
《アビシニアン》
—なるほど。ではショーの審査基準を教えてください。
「まずは長毛・短毛にわかれ、それぞれの猫種の審査基準をクリアし『チャンピオン』のタイトルを獲得します。次に、『グランドチャンピオン』『リジョナル・ウィナー』『ナショナル・ウィナー』など、各タイトルを目指します。2日間で8カ所のジャッジがあるので、1回のショーで『グランドチャンピオン』を獲得することもできます。結果はすぐにウェブサイトに掲載されて、自分の猫がどれくらいのポイントを獲得したのかを見る事ができます」
—審査の仕組みを理解するのはやや難しいですね…。
「なかなか一回で理解するのは難しいかもしれません。そういった“興味はあるけれどよくわからない”という方に向けて、今回私達はすでにグランドチャンピオンを獲得した猫たちを集めて『キャットショー』について解説するイベントを開催しました。もちろん、会場にいるスタッフに声をかえてもらえれば、ショーの内容を詳しく説明してくれるはずです。さらに会場では猫のおもちゃやキャットタワーなどの猫グッズも販売していますし、キャットフードも無料でもらえます」
—実際に会場に来てみると、猫たちがとても落ち着いていることにビックリしました。また、エキシビションに登場した猫たちは、美しい毛並みや瞳、凛とした風格を持っています。生まれ持ったモノなのでしょうか?
「いえ、お手入れの賜物です。手入れしているかどうかで、毛並みは全く違ってきます。特にシャンプーは大切です。小さい頃から水に慣れていると、猫もお風呂が好きになるんですよ」
《ノルウェージャン フォレスト キャット》
—小泉さんは、なぜ『キャットショー』に参加することになったのですか?
「友人にペルシャ猫を飼っている人がいて、譲り受けたんです。その友人から『キャットショー』に出して欲しいといわれて、参加したのですがビリだった。すると、生まれつきの負けず嫌いがムクムクと湧いてきて、ショーのことを勉強をして3匹目で日本一になりました。それ以来、33年間ペルシャ猫のブリーダーをやっています。最近はペルシャの短毛種『エキゾチック』という猫を8匹飼っています。猫を連れてお嫁にもいきましたし(笑)、猫がいなかったらどんな人生を過ごしていたのか想像つかないですね」
《ペルシャ・シェーディッド シルバー》
—最近では、ペットショップでなく保護された猫を里親募集などで譲り受ける人も多いですよね。そういった保護活動については、どのように考えていらっしゃいますか?
「動物愛護の目線でみると、『キャットショー』のことをよく思わない方もいらっしゃるかもしれません。ただ、お互い立場は違っても“猫が好き” “動物が好き”という気持ちは同じだと思います。猫に対してストレスにならないよう、参加しているみなさんはとても気を遣っている。しっかりと抱いてあげたり、ショーの期間は一緒に寝たり…。人間の自己顕示欲としてショーをしている訳ですから、私自身も最大限の愛情を持って接しています」
《ペルシャ・レッド アンド ホワイト》
—今回参加されている方で、小泉さんの猫を譲り受けた人もいるのですか?
「はい。最近のブリーダーさんには、自分が負けたくないという理由で、猫を譲っても子どもを産ませないという人もいます。私はその考えとってもナンセンスなことだと思っていて、いい血統の猫はきちんとした飼い主を選び、100年、200年と受け継いでいくべきだと思っています」
《トンキニーズ》
—なるほど。とはいえ実際に猫を飼っていなくても、「キャットショー」では図鑑でしかみることができないような貴重な猫を見て楽しむこともできますよね。次回の開催予定は?
「CFA JAPAN REGIONが主催する大きな規模の『キャットショー』は、毎年1月半ばに開催されます。CFA公認のキャット・クラブのショーは毎週全国各地で開催されています。ウェブサイトに告知されますので、チェックしてみてください」
《ペルシャ・クリーム アンド ホワイト》
今回のCFAキャットショーに参加した猫たち
《エキゾチック》
短毛のペルシャ猫。大きな丸い頭とまんまるの目、短い鼻、ずんぐりとした体型が魅力。ペルシャから受け継いだ温和な性格に、短毛の人懐っこく遊び好きな所も合わせ持っています。
《アビシニアン》
エチオピアで発祥し、イギリスで改良された猫種。細長くしなやかな身体と、輝く短いコートが特徴。野性味あふれる見た目とは異なり、繊細で穏やかな性格です。
《スフィンクス》
1960年代のカナダで、突然変異として生まれた無毛の猫種。体を保護するための皮下脂肪が多く、スエードのような肌触り。性格は従順で温厚といわれています。
[撮影協力]
CFA JAPAN REGION http://cfajapan.org/
エキゾチック:Japan Liberty Cat Club(小泉かよ子)http://www.laves.org/j-liberty/
アビシニアン:CATTERY LICCA(稲富理香) http://www.licca-aby.com/
スフィンクス:BEAUTY EXOTICA(ニーナ) http://www.beauty-exotica.jp/