「猫の王ー猫はなぜ突然姿を消すのか」小島 瓔禮 (小学館)amazon.co.jp
猫が家からいなくなることを、九州などでは「猫丘参り(ねこだけまいり)に行く」と言われています。
”猫丘とは、熊本県阿蘇山の主峰が連なる中央火口丘の五つの山の一つ、根子丘のことである。猫丘とも書き、地元では、この猫丘には猫の王がすんでいるといい、各地の猫が修行に来ると伝えている。修行を終えると、一人前の化け猫になるという”
こういった言い伝えは、突然飼い猫が猫がいなくなることや、野良猫たちの上下関係といった、猫の習性から生まれた信仰とのこと。その「猫の王」の伝承をもとに、日本各地の猫にまつわるお話を紹介しています。また、招き猫のポーズとなっている猫の顔新いは、”猫がなにか新しい行動を起こすきっかけで、これからなにかが起こるという前兆とみるのに、ふさわしいしぐさ”と言われているとか。古くから伝わる招き猫のルーツや、ヨーロッパをはじめ飼い猫の起源といわれている古代エジプトの神話などを、民俗学と観点から検証する一冊です。
”猫にとって、人間の家にいることは異常な事態で、たまたま人間の家に来ているということになる。人間の寝床にもぐりこみながら、猫は、人間のお守りは世話がやけるとおもっているのかもしれない。猫の王の観念は、そうした自立した猫の社会の存在をあらわすみごとな表徴であった”
猫は、招き猫など縁起物として可愛がられる一方で、化け猫や猫又など恐ろしい生き物として描かれることもあります。その善と悪の両面性が、猫という動物の魅力なのかもしれません。