「猫に時間の流れる」保坂和志

Nov 2, 2012 / Topics

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「猫に時間の流れる」保坂和志(中公文庫)amazon.co.jp

“外を歩いている猫を見て、その猫のことが気にかかったり、猫のからだつきや仕草をかわいいと思ったりするのは恋愛や性の感情とはずいぶん違っている。それは恋愛や性のように激しい心の動きではなくて、特に昂揚感を伴うわけでもなくて、強いて説明しようとするなら、猫を見ているときの気持ちはとたえば海を眺めている時間と似ているのかもしれない。”

物語の中にたびたび猫が登場するという小説家(愛猫家)、保坂和志による猫小説です。古いアパートの両隣に住む飼い猫のチイチイとパキ、マーキングをしにくる野良猫のクロシロ、そして飼い主たちの日常を綴ったストーリー。

表紙の猫は、ウィルス性の白血病にかかり、4歳で亡くなってしまったという著者の愛猫チャーちゃん。単行本では小説に登場するクロシロに似た猫の写真を表紙に使っていましたが、著者の意向で文庫版ではチャーちゃんが表紙になったとか。巻末に掲載された、大島弓子さんによる「解説マンガ」も必見です。