週刊文春の表紙や三谷幸喜さんの新聞連載、書籍の装画、挿絵など、イラストレーター・和田誠さんがさまざまなメディアで描いてきた猫たち。 300点以上のにも及ぶ、猫作品を集めた画集「みんな猫である」が発売。どのページを開いても猫猫猫といった、猫好きにはたまらない1冊です。根っからの猫好き!? である和田誠さんに、猫の魅力について伺いました。
《谷川俊太郎・訳『マザー・グース』(講談社文庫)の挿絵。1981》
—なぜ猫の絵を集めた本を制作することになったのですか?
「玄光社『イラストレーション』の編集部から“猫の絵を集めた本を作りませんか”と提案されて、“あ、それいいね”と同意したからです」
—猫を描くときは実際に猫に会いに行かれたり、写真を見て描くのでしょうか?
「猫カフェに取材に行ったことがあります。うちの猫を描く時は自分で撮った写真を見ます。マザー・グースの詩や童話に出てくる猫を描く場合は詩を読んだり、お話を読んだりして、その猫を思い浮かべます。
—猫を描くとき、難しいところはありますか?
「動いているところをスケッチするのは難しいけれど、それ以外は難しくありません」
ー楽器を弾いたり、料理をしたりといった擬人化した猫を描くときに気をつけている点は?
「楽器を弾く人、料理をする人を思い浮かべて、それを猫に当てはめればいいので、特に気をつけることもないですね」
—猫の好きな部位といえば肉球をあげる人も多いですが、あまり肉球は描かれていない印象があります。和田さんの猫の好きな部位を教えてください。
「寝ているところを見れば肉球が見えるので、肉球を描くチャンスはたくさんあります。猫の中の好きな部位は猫によりますね。しっぽが可愛いとか、背中の縞が可愛いとか」
—犬や鳥など、ほかの生き物を描く時と猫を描く時の一番の違いは?
「犬は犬らしい、鳥は鳥らしい、猫は猫らしい、それぞれの違いがあるだけです」
—いままで描いた猫で、お気に入りのベスト3を教えてください。
「友人の旅行中にあずかった子猫のドージイ、結婚後、初めてうちに来た桃代、小学生の長男が捨てられていた子猫を拾ってきて、そのままうちの家族になり、16年一緒に暮らしたシジミ。どの子も人になついて、とても可愛らしかった」
—今、猫を飼っていますか?
「うちの庭にいた小さな野良が家に入ってきてそのまま居ついた。小さいので『チビ』と呼んでたのが、いつのまにか『チーちゃん』になった。ぼくは猫を『飼っている』とは言いません。『一緒に暮らしてる』という気分なんです」
—猫を描くことで、猫に対する見方が変化しましたか?
「描くことでの変化はありませんね。一緒に暮らすことでの変化はありますが」
《雑誌『猫びより』に寄せた小沢昭一さんのエッセイ「ネコ二代」の挿絵。2008》
—猫は人間の言葉を理解していると思いますか?
「理解していると思わせる時がありますね。例えばうちの妻が新聞に載ったライオンの子どもの写真を見て『あら可愛い』と言うと、遠くの方にいたチーが、とことこ妻のそばに寄ってきます。『可愛い』という言葉に反応するようです」
《朝日新聞連載・三谷幸喜「ありふれた生活」挿絵。2000-2011》
—猫の一番の魅力とは?
「人間に媚びず、自分の生活様式を貫くのが『カッコいい』と思える時があります。それとは逆に、寒い夜、蒲団の中に入ってきてゴロゴロのどを鳴らしてるのなんか、たまらなく可愛い。どちらも猫ならではの魅力です」
『みんな猫である』(玄光社)和田 誠
http://www.amazon.co.jp/dp/476830446X
和田誠(わだ・まこと)
1936年生まれ。 グラフィックデザイナー、イラストレーター。多摩美術大学卒業、ライトパブリシティに入社、68年よりフリー。77年『週刊文春』の表紙(絵とデザイン)を担当し現在に至る。74年講談社出版文化賞(ブックデザイン部門)。97年毎日デザイン賞。出版した書籍は百冊を超える。