「どうぶつ帖」幸田文(平凡社) amazon.co.jp
「いったい動物のからだのうちで、どこがいちばんかわいいでしょう。それは、〈はなのあたま〉と〈あしのうら〉ではないでしょうか。動物は〈けもの〉といわれるほどで、からだじゅう毛が生えていますが、毛の生えていない鼻のあたまと、あしのうらはなぜかとてもかわいい形をしています」
作家・幸田文が犬や猫、そして動物をとりまく人たちについて綴った随筆集です。幼い頃は犬派だったという著者は、父から与えられた赤毛の雑種の犬とともに成長してきました。ところが、大人になると2匹の黒猫ボンや、玄関前に捨て猫として置かれていた「阪急」という名の猫との暮らしを楽しんでいたといいます。第一章は犬、第二章は猫、そして第三章は動物園にいるサイやペリカン、そして飼育員たちのエピソードが登場します。
「冬のネコはたいがい美しい。寒さに弱いから、よけい厚い冬支度になって、毛並みが美しくなるのだろうか」
幸田文がいかに、言葉の通じない動物たちへの深い愛情をもち、そして独自の視点で人間と動物との関係を観察していたかを教えてくれる一冊です。