「アブサン物語」村松友視

Oct 19, 2012 / Topics

Tags: book

「アブサン物語」村松友視(河出書房新社)amazon.co.jp

「ネコが、テレビを見たり本を読んだりしている人間のそばで眠っている光景はよく見かけるが、あれには理由があるらしい。人間が何かに集中しているときは、そこにある種の“熱"が生じている。その“熱”の輪の中にいると心地よいので、ネコは人が何かに集中しているところを好むというのだ」

作家・村松友視による、21歳もの大往生をとげた愛猫アブサンの書き下ろしエッセイです。知人が日比谷公園で拾った(出会った?)という、アブサンとの出会いから最期の日までを細やかに描いています。直木賞受賞作「時代屋の女房」にも登場するアブサン。本書には、アブサンの遊びや失敗といった何気ない日常から、友人の糸井重里氏にたのまれ広告撮影に挑んだエピソードなども掲載。猫に不慣れだった「カミさん」が次第に著者よりもアブサンのことを理解していく姿にちょっぴり嫉妬したりと、猫に対する深い愛情を感じる1冊です。著者の庭に出入りする猫たちを描いた「野良猫ケンさん」も必読です。