NY発のお洒落な猫「FASHIONISTA CATS(ファッショニスタ キャッツ)」

May 7, 2013 / Topics

Tags: column

photo:Jay Bierach

雑誌『フィガロジャポン』のblogでも人気のNY発のお洒落な猫「FASHIONISTA CATS(ファッショニスタ キャッツ)」。ilove.catでも取材したアラキミドリさんの愛猫・ウィズタムさんや、小林マナさんの愛猫・マロンさんもキャラクターとして登場しています。NYで3匹の雄猫たちと暮らす、クリエイターの矢吹恭子さんにファッショニスタキャッツに込められた想いを伺いました。

—「FASHIONISTA CATS(ファッショニスタ キャッツ)」を始めたきっかけは?

「ブログが流行り始めた2010年頃、自分自身が登場して好きなモノや食べたモノを紹介しているブログをやっている人が周りに多かったんです。でも私はもっと手間をかけて、自分の好きなモノを紹介したいなと思って。そんな時、うちの猫たちをキャラクターにして登場させてみようと思いついたのがきっかけです。ファッショニスタ キャッツのキャラクターは、私が飼っているMUKUにインスパイアされてできました。物語の中には、SUSHI 、TAMA、MUKUの3匹の愛猫が登場します。実は猫たちに洋服を着せてお洒落をしたかったのですが、彼らは洋服を着せられるのが嫌いですよね(笑)。だから、キャラクターをつくり、物語の中で思いっきりお洒落をさせているんです」

—キャラクターを思いついてから、ストーリーを生み出したのですか?

「ファッショニスタ キャッツはお洒落が好きな猫という設定で、最初はブログのキャラクターとして登場させていました。今日はシャネルを着てパーティへ、今日はデレクラムを着てショッピングへ、という日々のブログを更新する中でストーリーが生まれてきたんです」

—猫を登場させることで、周りの反響はありましたか?

「ファッションデザイナーがファッショニスタ キャッツをみて、うれしかったとか、この服を着させて欲しいという反応がありました。登場するキャラクターの多くは、NYや日本にいるクリエイターの友人たちが飼っているペットがモデル。それぞれの性格にあわせて、こんな洋服が似合う、この服を着せたいなと考えて構成しています。私は、ファッション雑誌のコーディネーター兼ライターとして、毎シーズンNYのファッションウィークを取材しているので、そこでチェックした最新トレンドの洋服が登場することが多いですね」

—ilove.catでも取材したアラキミドリさんの愛猫・ウィズタムさん(https://ilovedotcat.com/ja/2656)や、小林マナさんの愛猫・マロンさん、ギルバート&ジョージ(https://ilovedotcat.com/ja/4059)もいますね。ストーリーを作る上で、実在する猫や犬たちの性格が反映されているのですか?

「飼い主さんから写真を送ってもらい、どんな性格なのかを必ず聞きます。そのコメントは、実は動物たちよりも、飼い主さんの性格が見えるんですよね。そこからサイキックのように動物たちの行動を読み取り、お話が出来上がってくるんです。マナさん宅のギルバート&ジョージは、もともとアーティストのギルバート&ジョージから名付けられていることもあり、物語の中でもアーティストとして登場します。マナさん自身やご主人もアーティステッィクな方なので、キャラクターと猫、そして飼い主さんの趣味性が自然と反映されているんです」

—キャラクターをつくる上でのポイントはありますか?

「実は、みんなシッポがないんですよ。シッポをつけてしまうと、服を着せてもどうしても動物にみえてしまうんです。体は人間のフォーマットで、顔だけをその動物たちにして、必ず立っています。キャラクターは動物ですが、人間の住む世界を描いています。たまに、マロンちゃんのような動物らしいままの姿のキャラクターもいますが、基本的には人間に置き換えているんです」

—ストーリーのアイデアはどこからきているのでしょうか。

「例えば、キリンはファッションモデルがモチーフ。あまりに細くて手足が長くて、似合う洋服がないという悩みをお話にしています。人間の悩みや出来事からインスパイアされることが多いですね。また猫のことを知れば知る程、猫はいろんなことを教えてくれます。物語を作る上で一番気をつけているのは、『モノを買う』という表現を使わないこと。お金を使ってモノを買うことは資本主義経済のベースになっていますが、ファッショニスタ キャッツに登場するキャラクターたちは、何か欲しい時には『手に入れる』という表現をしています。〈BUY=買う〉ではなく〈GET=手に入れる〉なんです。猫たちはお金なんて1銭も持っていないのに、こんなに幸せそうで、クリエイティブに生きている。人間の考えでは、ハイファッションを着るには何十万円も必要ですよね。でもファッションを楽しむには、お金がすべてではない。もちろん欲しいモノを手に入れたいと思い、努力することは大切ですが」


〈左からTAMA、MUKU、SUSHI〉

—なるほど。猫から学ぶことがストーリーに反映されているのですね。

「そうです。そして、このキャラクターたちはみなママやパパという表現もしません。現代社会において、サザエさんのようなおじいちゃん、おばあちゃん、父親、母親がいるというような家族構成はなかなか難しいですよね。特にアメリカにいると、ゲイのカップルや片親の人、養子縁組みで継母に育てられた人、そして本当にたった一人で生きている人がたくさんいます。その人たちに愛がないといえば、嘘になる。猫たちをみても、親が分かっている猫なんて数少ないですよね。それでも楽しく暮らしている。その人間愛、猫愛を表現したいんです。なるべく、“普通の家族”という形にあてはめないようにしています。教訓としては、私が幼い頃から読んでいたグリム童話がベースになっています。そのグリム童話を現代的にアップデートしているんです」

—NYでは暮らす3匹の猫たちについて教えてください。

「ボーイフレンドの実家に子猫が新たに産まれたというのでMUKUを譲り受け、飼うことになったんです。そしてSUSHIとTAMAの2匹も飼う事になりました。3匹ともみんな同じ母親から産まれた兄弟で、MUKUだけ父親が違います。日本にいた頃は猫や動物を飼ったことがなかったので、初めての体験だらけでした。オモチャをガリガリしていたらポロって歯がとれたことがあって、生え変わることを知らなかったので、慌てて動物病院へいったことも。何もわからなかったので、しょっちゅう病院へ行ったり、かなり過保護にしていましたね(笑)」

—猫と暮らしはじめて、発見はありましたか?

「いちばん驚いたことは、猫によってそれぞれ性格が異なるということですね。SUCHIはいい子で悪さをしないようにみえて、こっそり盗みをするタイプ。TAMAはフレンドリーで友人が来てホームパーティをする時にはみんなに可愛がられます。そして3匹のボス。そしてMUKUは頭がいい。ドアも空けるし、お手もする。餌をポンと投げると、両手でキャッチする芸も披露してくれます」

—NYのお宅の猫トレイもお洒落ですね。

「これはIKEAで購入した段ボール箱をくり抜いて作りました。本棚はキャットタワーとしても活用しています。猫がいると爪で引っ掻いてしまうので、ソファーもコットン荒くない生地にしたり。NYでは周りに猫を飼っている人が多くて、犬のように吠えたりもしないし、飼いやすい環境だと思います」

—今後、ファッショニスタキャッツの展望は?

「まずは、今までのお話を本にまとめたいと思っています。またフィガロでの連載から動画がうまれたのですが、その動画からアニメーションへ展開していきたい。キャラクターグッズも制作したいですね」

矢吹恭子 (やぶき・きょうこ)
ニューヨーク在住の「ファッショニスタ キャッツ」クリエイター。グラフィックデザイナーとライターの経験を生かし、2010年より、実在の猫が活躍するイラストのブログをスタート。

FASHIONISTA CATS
http://fashionistacats.com
ブログ
http://blog.madamefigaro.jp/kyoko_yabuki/