フィンランドのライフスタイルブランド「marimekko」の店舗デザインなどを手がけるインテリアデザイナー、小林マナさん。真っ白なマロンさんと、ギルバートさん&ジョージさんの3匹の猫と暮らしています。人見知りなギルバートさん&ジョージさんは全く姿を表さない一方、マロンさんは堂々とした振る舞いを見せてくれました。アンニュイで色気たっぷりな、白猫マロンさんの表情に癒されます。
—3匹の猫とのと出会いは?
「最初に飼っていたのはギルバート&ジョージの2匹だけだったんです。猫が好きな姪っ子に“友達の所で猫が生まれたからちょっと見に行かない?”と誘われて見にいったら、そこにいた5匹のうちの2匹がギルとジョージでした。姪っ子の友達の家の軒下で生まれ、里親を募集していたんです。ほかの3匹は人懐っこかったのですが、ギルはずっと物陰に隠れていて、ジョーもチラりと出てはくるんだけどすぐギルのもとへ戻ってしまったんです。だからこの2匹は離してはいけないと思い、2匹まとめて飼うことにしました」
—それまで、猫を飼ったことはあったのですか?
「中学生の時に捨て猫を拾ってきて、飼っていました。だから猫の飼い方もわかっていたし、抵抗はなかったですね。ただ、飼い始めた当初は猫を飼ってはいけないマンションだったので、すぐに今の場所を見つけて、猫のために改装して住むことになりました」
—マロンさんとの出会いは?
「2008年頃、友人が千葉の海岸で生まれたての猫を見つけて、保護して連れて帰って来たんです。飼い始めて3ヶ月くらいした頃、彼はすごく忙しい人だったのでもう飼えないということで、うちで引き取ることにしました。ギルとジョージは全く手がかからなかったので、1匹くらい増えても全然平気かなと。でも、マロンが来てからは大変。お互いの猫たちが慣れるにすごく時間がかかかりました。昼間はマロンだけ事務所に連れて行き、夜は別の部屋で寝かせたりしていたのですが、段々寒くなって来た頃、気がつくと3匹が一緒に布団で寝ていたんです。私の知らない所で打ち解け合ったみたいですね」
—3匹の名前の由来は?
「最初の2匹は猫にしては珍しく、いつも双子みたいにくっついていて、その姿が似ているなと思い、イギリスのアーティストのギルバート&ジョージから名付けました。NYに住んでいる友人が『FASHIONISTA CATS』という電子絵本を作って、ギルとジョージも登場しているます。マロンを拾ったのはアーティストの栗林隆さんという方で、拾った頃は頭に斑点があったので、栗林さんはマロって呼んでいたんです。引き取る時に“俺の名前かマロって名前にして”と言われたのですが、マロはいやだな〜と思い(笑)、栗林の栗とマロをひっかけてマロンになりました」
—それぞれ、どんな性格でしょうか。
「ギルとジョージはいつも私の側にいて、顔をみてはニャーニャーとわがままをいう内弁慶です。マロンはこの家でなくてもいいのかなって思うくらい、シラーってしていまっすね。人懐っこいわけではなく、こだわりがないというか……。興奮するとピンクの鼻や肉球が真っ赤になるんですが、シラーって気分の時は真っ白なままなのでわかりやすいです」
猫と人ためにデザインされた家
—猫と暮らすために工夫された所は?
「玄関から出てしまわないように、入り口の扉を2重にしました。帰ってきた時にお迎えをしてくれるので、下の部分はクリアガラスにしています。また、猫用のごはん皿って床に置いてあるとたまに踏んでしまうんですよね。だから、キッチンの下にあえて猫用のごはんスペースを作りました。壁に設置している猫階段は、アーティストの谷山恭子さんの作品です。展覧会で見た時に猫に使えるかもしれないと思って、オーダーして作っていただきました。猫たちはよく階段を登って、上の棚で寝ています。ほかにも納戸に出入りができるように、壁に猫の通り道を空けたり。お客さんが来ると、ギルとジョージはこの穴から納戸に逃げるんです(笑)」
—ご飯やトレイのこだわりは?
「ギルの尿道結石の対策とマロンがちょっと太り気味なので『ヒルズ』のダイエット用をあげています。器はマリメッコのお皿とグラタン皿。ギルとジョージは食べる量を自分たちで調整できるのですが、マロンは置いてある分だけすべて食べてしまうのでお皿を分けています。トイレは2台で、おしっことウンチで分かれています。コンパクトなサイズの『キャットワレ』に、砂はドイツ製の『キャッツエコ』、シートは『ニャンとも清潔トイレ』を使っています。本当はセットで使うのがいいのかもしれませんが、色々試して、猫たちが気に入るように組み合わせて使っています」
猫が虜になるおもちゃ箱
—どんなおもちゃで遊びますか?
「猫型ブラシが大好きで、ブラッシングした後の毛を丸めて、毛玉にして遊ぶのが一番好きです。遠くに投げては拾ってくることをひたすら繰り替えしています。リードも慣れさすためにたまに付けるのですが、猫たちは“脇はやめてくださいー!!”って感じで(笑)、ペターっと地面に張り付いてしまうんですよね。震災があってから地震対策として首輪も付けたいと思ったのですが、嫌がるのでできなくて。いざという時には3匹いるので捕まえるのが大変。いつでも連れていけるように、キャリーバッグは玄関に置いています」
—集めている猫グッズはありますか?
「猫がモチーフのグッズはそんなに好きではなくて、ギルとジョージを飼い出してから、なぜか白黒のモノに目がいくようになり集めています。また猫だけでなく動物が好きなんです。中でも一番ライオンが好き。ライオンのドキュメンタリーDVDや写真集などはたくさん持っています」
—猫用のおもちゃ箱『CATTOY ARCH』をデザインするきっかけは?
「2007年のDESIGN TIDE TOKYOで椅子を発表した時、作りたくてメーカーさんにお願いして一緒に作ったんです。素材は段ボール。猫は宅配荷物などの段ボールがあると、すぐ入りますよね。そこで段ボール屋さんと相談して制作しました。サイドの細かい穴は、猫の手足が出やすい大きさにしているので、猫じゃらしでつついたりできます。また、組み合わせてキャットタワーみたいにすると、下には隠れることもできるし、互い違いにすると上下の穴からも通り抜けができるんです。マロンは一番ここがお気に入りで、いつも入っています」
—これから制作予定の猫グッズはありますか?
「具体的に予定はないのですが、キャリーバッグを作りたいですね。3匹いるので、持ちやすさも考えられた背中に背負えるタイプとか。既存のバッグはスポーティなデザインが多いので、もっとおしゃれで機能的なモノが欲しい。あとはインテリアの仕事をしているので、猫と暮らすための内装を手がけたいです。この家でいえば、夫が喘息を持っているので、猫が走り回ってもホコリがたたないようにベッドは高床式にしています。また猫は横に動くよりも上下運動が必要なので、飛べるギリギリの距離で猫階段をつけました。ワンルームなのですが、リビングだけにいるよりも隠れることのできる納戸や部屋を見渡せるキッチンなど、猫にとって自由に動き回れるようなつくりにしています。うちには3匹もいるので、猫を飼っている人ならではの悩みやポイントなどを、上手く生かしたデザインができるかなと。そしてゆくゆくは、ドイツのベルリンにある『ドイツ・ティアハイムベルリン』のような動物の保護施設の設計などもしてみたいと考えています。寄付とボランティアで運営されているとは思えないくらい、かっこいいビルに動物たちが悠々と住んでいるんです。デザインってそういう場所にこそ必要なんじゃないかと思うんです」