画家・ヒグチユウコ × ボリス — 手間のかかる猫ほどかわいい

May 22, 2014 / Interviews

Photo:Kazuho Maruo Edit&Text:Madoka Hattori

猫やきのこ、少女などを独特なタッチで描く画家・ヒグチユウコさんは、愛猫・ボリスさんと暮らしています。ホルベイン、Emily Temple cute、ユニクロ、資生堂、ninita、MELANTRICK FEMLIGHET、あちゃちゅむなどブランドとのコラボレーションも多数手がけるヒグチさん。猫を描くときには、ボリスさんがモデルになることも多いとか。猫をモチーフとして描くことについて、そして猫との暮らしについて伺いました。

未熟児だったボリス

—ボリスさんと暮らし始めるきっかけは?

「ずっと実家で何匹も猫を飼っていたのですが、家を出てからは猫を飼いたいなと思って、ペット可物件に引っ越したんです。どんな猫がいいというのはなくって最初に出会った子にしようと決めていました。偶然、保護猫の貼り紙をみつけて。野良猫だったボリスの母猫が、車に轢かれて怪我をしてしまったらしく、そこで保護した方がお腹にいた子猫たちの里親を探すために、張り紙をしていたんです。初めてボリスに会った時は、生まれて一ヶ月半くらいで、未熟児ですごく小さかった。2匹いてもう片方が全然大きかったのですが、ボリスは生き延びていけるのかなってくらい、心配していました。母猫から離してよい3ヶ月になったら迎えに行きますといって、しばらく待ってから引き取ったんです」

—幼い頃から猫に囲まれていたので、猫との暮らしは慣れていたのですね。

「多いときには6〜7匹いたのですが、みんな雌猫だったんです。雄はボリスが初めて。だからこんなにも性格が違うのかってビックリしました。ボリスはわりと凶暴で、走り回ったりパンチをしたり、最初は手こずりましたね。実家では多頭飼いだったので、こんなに1匹の猫と深くコミュニケーションすることはなかった。だからいままでの猫たちとは、全く在り方が違います。常に全力でかまってくれとやってくる。猫と暮らし始めてから、数年後に子どもが産まれて、その変化も猫にとっては大きかったかもしれません」

猫をモチーフにすること

—ヒグチさんの作品には猫が多く登場しますよね。

「もともとは猫をたくさん描こうと思っていたわけではなく、鳥やきのこなどモチーフのひとつとして描いていたのですが、だんだん企業からの依頼で、猫を描いてくださいとリクエストされることが多くなって。やはり猫のモチーフは、反響が大きいみたいですね。人物もたくさん描いているのですが、猫の印象が強いのか、猫しか描いていないって思われることもあります(笑)。最初の頃は猫のモデルはいなかったのですが、最近ではボリスやサバ美など、猫仲間たちの愛猫をモチーフにすることが多いです」

—猫は描きやすいですか?

「他のモチーフに比べて特に描きやすいということはないです。ただ描いた枚数が多いので、描き慣れてはいます。最近では猫の写真やボリスを見ずに、描き慣れた比率で描いています。目や鼻の位置だったり、実際の猫よりも後頭部が丸かったり、自分の独特な比率があるみたい。ヒグチさんの絵が好きですっていう方に作品を見せてもらうことがあって、それが私の絵の猫っぽいんですよね。猫って誰が描いても同じかなと思っていたのですが、私らしい猫の個性があるみたいです」

—猫を描く時に、気をつけている点はありますか?

「企業でのお仕事は、もっと可愛らしくとリクエストされることが多いので、丸みをもたせたり、黒目を大きくします。自由に描いていい場合は、もっと猫らしさを強調して、ちょっと怖くしたり。でも猫自体というよりは、テーマに合わせて、ストーリーを紐付けていくほうが重要だと思っています。また猫は子どもの頃から一緒にいる生き物なので、やはり特別です。魚や虫よりも、感情がはっきりとありますからね。そういう意味でも、思い入れというか、心の拠り所なのかもしれません。若い頃は、猫は身近すぎてモチーフになりえないと思っていたんですよ。芸術というか、アートとしては扱いにくいですよね。でも歳をとってきて描くことに悩んだ時、身近な猫や個人的な思い入れのあるモチーフを表に出してみたら楽になった。すごく難しいこと考えて描くのではなく、自分のイメージする世界をそのまま表現していいって気がついたんです」

—影響を受けたアーティストはいますか?

「たくさんいるので特にこの人、とあげるのは難しいですね。でも草間彌生さんは毒っ気がありながらも、ここまで大衆に受けるというのはすごいことだと思います。メジャーな感じになりながらも、孤高のアーティストとして存在していますし。また伊藤潤二先生や楳図かずお先生など、漫画家さんも好きです。世界観と伝えたいモノの一貫線に、いつも心打たれます。伊藤先生に関しては、スピリッツでの連載を見てショックを受けて、影響されてしまうと思ってなるべく見ないようにしていました。いまでは奥様の石黒(亜矢子)さんとも友人になったので、お会いする度にサインしていただいたりして(笑)、実際すごく影響を受けていますね」

—今回、5/23から渋谷パルコでスタートするイベント「PARTY SALE」でビジュアルを手がけていますよね。

「MELANTRICK FEMLIGHETの優哉さんから、猫のアイドルグループをつくりたいというリクエストがあったんです。確かに、そういう発想は私ではでてこないので面白いなと思って。アイドル並みにかわいい6匹の猫写真をリストアップして優哉さんに見せて、その中にボリスも入れていたんですけど(笑)、すぐにバレてしまいましたが、ボリスをリーダーにしてくれました。実在のアイドルの役割と同じく妹キャラとか、1匹ずつ性格やキャラクターも設定があるんですよ」

—ヒグチさんの猫は、キャラクターが際立ったストーリーがありながら、うちの猫に似ているって思わせるような匿名性もありますよね。

「和猫というか、雑種というか、どこにでもいるような猫を描くからでしょうか。依頼があって描くわけではない場合は、特にモデルがいるわけではないですし。でも最近は、サバ美やてんまる&とんいちなど友人の愛猫を登場させることも多いです。そういう時は写真をみたり、柄を真似したりします」

—猫の一番の魅力とは?

「難しいですね。ボリスで言えば、手間のかかる子ほどかわいいってやつですかね。寝ていても3時間ごとに起こしに来るんですよ。でも、そこがいい。トイレに行った後に、ダーッと走ってきて、パッとお尻を私のほうにむけるんです。それって、舐めろってことですよね?(笑)お尻の周りを撫でてやると、満足して去っていくのですが、きっと母親だと思っているのかもしれません。攻撃的だし、かまってほしがりだけど、そういうところも含めてボリスの魅力なのだと思います」

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宛先:info@ilove.cat
応募締切: 6月1日(日) 

*当選者発表は発送をもって代えさせていただきます。
*個人情報は、本イベントに関するご連絡のみに利用し、第三者に開示することはありません。

  • 名前: ボリス
  • 年齢: 8歳
  • 性別:
  • 品種: 雑種
  • 飼い主プロフィール:
    ヒグチユウコ
    画家。東京都在住。多摩美術大学 油画科卒業 (福沢一朗賞受賞)。
1999年より東京を中心に個展開催。ファッションブランドのEmily Temple cute、ユニクロ、ホルベイン画材、あちゃちゅむ、ninitaなど様々な企業とのコラボを展開している。作品集『ヒグチユウコ作品集』(グラフィック社)、『ふたりのねこ』(祥伝社)などが発売中。
    http://higuchiyuko.tumblr.com
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    twitter @nekonoboris