文筆家・甲斐みのりさんは、15歳になる雌猫・BIDさんと暮らしています。旅や散歩、お菓子、雑貨など、乙女心をキュンとさせるような場所やアイテムをピックアップして紹介しつづけている甲斐さん。長年の猫との暮らしから、猫がもたらす、さまざまな出会いや魅力に迫ります。
猫の歌に憧れて
—BIDさんとの出会いは?
「1999年から一緒に暮らしています。もう15歳なので、おばあちゃんですよね。大阪の大学に通っていた頃、知り合いから軒下にいた猫を拾ったという話を聞いて。ずっと猫を飼いたいなと思っていたので、飼うことに決めました。まだ片手に乗るくらいの小ささで、靴箱に入った状態で渡されたんです」
—そもそも、なぜ猫を飼いたいと思っていたのですか?
「当時、日本でも海外でも女性アーティストの歌の中でも、猫は出てくるものが好きで。たとえばカヒミ・カリィさんのような。また雑貨でも犬より猫モチーフに自然と惹かれていったんですよね」
—実際に一緒に暮らしてみて、どうでしたか?
「一度も猫と暮らしたことがなかったので、我流で育てた感じです。ホームセンターでトイレなど一式を購入したものの、どうやって教えたらいいかなって思っていたら、自らトイレで用を足すようになって。猫って頭がいいんだなとびっくりしました。ベタベタするというよりは、他人同志が同じ家に同居しているという感覚。それでも、私が落ち込んだ時は寄り添ってくれたり。そういう自然な関係で、気がつけば15年経っていました。大学を卒業後、京都やいくつか引っ越しをしたのですが、移動も割りと大丈夫だし、人も怖がらない。適応能力が高いので、すごく助けられています」
猫自身への愛情が、猫グッズ熱へ
—最近、猫グッズがとても流行っていますが、なぜそんなに興味をもつのだと思いますか?
「犬は洋服を着せたり、犬自体を飾ることができますよね。でも猫は、首輪すら嫌がる猫も多い。だから、自分の猫への愛情をグッズに向けているのではないでしょうか(笑)。実は以前、BIDをモチーフにした絵本やぬいぐるみなどのグッズをおもちゃ会社とコラボレーションしてつくったんです。あまり猫っぽくないキャラクターなので、子どもにはくまちゃんって呼ばれたりもしましたが(笑)。設定は、ケーキの箱に入れられて女の子のもとにやってきた猫が、彼女が恋をして笑ったり泣いたりしているのを見て、なぜ泣いているのかわからず、でもなんとか理解しようとするというお話です。以前、私が泣いていた時に、BIDが涙を舐めてくれたことがあって。そういう体験もエピソードとして入れています」
—BIDさんとは、言葉が通じていると?
「そうですね。言葉というか、気配で通じ合えているかな。仕事をしていると常に足元にいるんです。共同体というか、私が忙しくなると、ちょっと具合が悪くなったり。そういえば、猫の気配を察することで、人間同士でも察することができるようになったと思います。BIDと暮らすまでは、正直あまり空気を読むことができなくて、友人に察することができないと言われることもあったのですが(笑)、猫と暮らすことで変わったねと。もちろん、私自身の環境の変化もあったかもしれませんが」
季節を教えてくれる猫
「幼い頃、動物を飼いたいと言っても親にダメって言われていたんですね。生き物と暮らすことは、死と向き合うことだから、あなたにちゃんとできるの?って。1度だけ、ハムスターを飼っていたのですが、そのハムスターが死んでしまった時、親が慰めてくれるかと思ったら、すごく怒られたんです。ちゃんと世話をしなかった私の責任だと。動物と暮らすには、死と向き合い、命の責任をもつ必要がある。それを教えられてから、BIDのことは責任をもって世話をしようと決めました。それに、BIDと暮らすようになって、生き物全般が好きになりました。猫だけでなく、犬や鳥などもカワイイなって思います」
—猫の一番の魅力は?
「季節を教えてくれることですね。秋口になると、布団の中に入ってきて、ああ冬が近づいているんだなとか。布団で寝なくなると、もう春なんだなって。家の中にいても、自然を感じることができる。猫ってやっぱり、自然の生き物なんだなと思います」