アニメーション作家・ひらのりょうさんと暮らす、愛猫・しゃがれさん。雪の日に出会ったというしゃがれさんのほか、一軒家のシェアハウスには猫たちが何匹も住んでいます。ずっと猫と一緒に暮らしてきたというひらのさんに、猫との不思議な関わり方について聞きました。
猫と男たちのシェアハウス
—今回は、しゃがれさんに会いに来たのですが、見慣れぬ猫たちがいますね。この家には何匹の猫が住んでいるんですか?
「僕が飼っているしゃがれに、イラストレータの花原(史樹)くんが飼っている、はるちゃんとその娘のゆきちゃん。あとはミュージシャンの奴が飼っている白い雄猫のコメです。猫は4匹、人間は4人で住んでいます」
—しゃがれさんとの出会いは?
「実家ではリュウとワインという2匹の猫を飼っていました。当時、家の離れのガレージに住んでいたのですが、大雪の日にニャーニャー鳴いていたのでワインかなって思ってドアをあけたら、しゃがれがいたんです。スタスタ歩いてきて、膝の上にのって、気づけば住み着くように。警察や保健所にも届けたのですが、飼い主がみつからず僕が飼うことになりました。実家は埼玉の春日部で、車通りも少なかったので半野良にしていたのですが、東京にきてからは室内飼いにしています」
—去年の年末に、脱走したんですよね?
「はい、逃げられちゃいまして……。しゃがれは、外が大好きなんです。何回も逃げられたことがあるんですけど、いつもすぐ戻ってきていたんですよ。でも丸一日戻って来なくて、探しまくりました。Bluetoothで居場所を確認できる首輪もつけていたのですが、外しちゃったみたいで。2日経って、近所の獣医さんから保護したよと連絡がきた時は、号泣しました。丸2日間、僕は全く寝れなくてご飯も食べられなかった。でもしゃがれは飄々としていて、隙あらばまた逃げようとしています」
—どんな性格ですか?
「外に出してくれって、めちゃくちゃ鳴くんですよ。そのせいで声がしゃがれてて、そこから名付けたんですけど。人懐っこいし、外にでても平気で、あまり猫っぽくないですね。4匹の中では、しゃがれと女の子たちは仲良しなのですが、コメは喧嘩になりがち。しゃがれとはるちゃんは、たまに同じベッドで寝ているので、付き合っている説があります(笑)。ごはんもトイレも全部別です」
猫はやっぱり獣です
—ひらのさんと猫はどういった関係ですか?
「学生時代に飼っていなかった時期はあるのですが、いないとダメですね。人間と同じように接していて、家族みたいな感じ。とはいえ、動物だなって思うことも多い。いなくなると、人間とはやっぱり違うなと。なんでケータイ持ってねぇんだよ! とか(笑)。法的には探し人ではなく、落し物の扱いになってしまうわけじゃないですか。猫が落し物だなんて、全く思えない。だから何者なんだろうって」
—言葉は理解していると思います?
「いや、全然わかってないんじゃないですかね。こちらが勝手に解釈しているだけ。急に暴れだしたり、意味分かんない。コミュニケーションがとれないと、冷静な目で、あ、やっぱこいつは獣だなって思います」
—でも、わかりあえているなって時もありますよね。
「確かにあります。会話している感じはないけど、ご飯やトイレのタイミングはわかるし、何をして欲しいかも理解できる。表情が豊かなので、怒ったりするとかわいい。棚に引きこもるんですよ。家猫は、人間より上手く生きる方法をみつけたわけじゃないですか。可愛さを対価に、一日中寝て、ご飯をもらう。賢いなって思います。進化の上でも、完全に人間は負けてますよね」
—ひらのさんのアニメーション作品にもたびたび猫が登場しますよね。
「あえて描こうと思っているわけではなく、出てきちゃうんですよね。前にイモリを登場させたことがあって、その時はイモリを飼っていたんです。だから身近な生き物が、自然と登場するのだと思います。しゃがれは描きやすいんですよ。ゆきちゃんみたいな丸っこい猫は意外と描きにくい。最近の作品の猫はほとんどがしゃがれがモデルです。『ギター』に登場する猫はリュウがモデル。亡くなってしまった頃につくった作品で、尻尾が二股の猫又にして登場させました」
—猫がいてよかったことは?
「基本的にひとり作業なので、自分の部屋のこもっていると、しゃがれが横にいるんです。たまに椅子を占領されると、どかすのも悪いのでサボったりしますけど。触らせてくれるし、本当に癒やしです。しゃがれはずっと僕についてくるんです。ちょっと犬みたい。だからいなくなったとき、飯も食えなくなって……失恋した時より辛いっすね。しゃがれがいなくなったら立ち直れないと思います。オス同士ですけど、ベッドの中でのいちゃつきはすごいですから(笑)」