文筆家・服部みれい × あたり — 福を運んでくれる猫

Oct 23, 2014 / Interviews

Photo:Kazuho Maruo Edit&Text:Madoka Hattori

murmur magazine』の編集長として、また冷えとりグッズや代替医療に関する書籍の企画など、あたらしい生き方やライフスタイルを提案している、服部みれいさん。夫の福太郎さんとともに4ヶ月になる愛猫・あたりさんと暮らしています。みれいさんは、猫は家族にたくさんの福を運んでくれると語ります。動物と暮らすことで生活はどのように変わるのか。元気に走り回るあたりさんに翻弄されながら、ご自宅で猫の魅力について伺いしました。

生まれ変わりを信じる

—あたりさんとはどうやって出会ったのですか?

「わたしが通っている整体の先生に教えてもらって、中央区の動物シェルターにいる子猫を夫と見に行ったんです。そこにいた猫たちはみんな可愛くて、みんなを連れて帰りたい! って思ったくらい。でもあたりを見て、すぐに決めました」

—そもそも、猫を飼いたいと思ったきっかけは?

「去年の春に結婚して、ふたりでの暮らしがスタートしました。家族になったわけですが、とにかく毎日忙しくて。ふたりでもう少しのんびりゆっくり暮らしたいね、それならふたりで何か育てるのがいいかもと、自然と猫と暮らしたいなと思うようになったんです」

—みれいさんのWEBサイト(http://hattorimirei.com/words)には、かつて一緒に暮らしていた猫・ドモンジョとのエピソードが書かれていますよね。

「ドモンジョはわたしがひとり暮らしをしていた時に飼いだした猫です。でも住宅の事情で飼えなくなってしまい、岐阜の実家で飼うことになりました。20年くらい生きたんです。実はびっくりすることがあって。今年の6月、ドモンジョが亡くなるかもしれないって電話がくる2時間前に、子猫の情報を整体の先生に聞いたんです。続けて飼おうと思っていたわけではないですが、このタイミングは偶然ではないなと。猫に関しては、不思議なタイミングが重なるんですよね」

—そもそもドモンジョを飼うきっかけは?

「22〜23歳の頃、精神的にちょっと落ちていた時期があったんです。ひとりで暮らすのもちょっとしんどいって思っていた時、猫を飼ったら世話をしなきゃいけなくなるから、わたしもしっかり生きられるかも、猫を飼おうって。動物愛護センターに行って殺処分される直前のところにいた猫を、連れて帰ってたんです。とにかく賢い猫でした。親バカかもしれないけど(笑)。ドモンジョは雌猫らしく、警戒心が強め。でも、私が落ち込んで泣いていたら、涙を舐めてくれたり。本当に、ドモちゃんがいてくれたから、命拾いした。実家にいっても、老夫婦の間を取り持ってくれましたし。うちの家族にいっぱいいいことをもたらしてくれた猫でした。亡くなる直前に実家に帰ることができて、膝に乗ってきて、ニャアって鳴いてくれました。きっと最後のあいさつをしてくれたんだと思います」

戌年の猫好き

—そもそも世話をする目的でペットを飼うとして、犬ではなく猫を選んだ理由は?

「わたしは戌年なんです。だから犬も好きなんですけど、正直、犬を見ていると、ちょっとつらくて……。一生懸命しっぽを振って、飼い主の反応をずっとまっている。その姿が自分に似ているというか、自分をみているように感じてしまうんです。だから猫のこの距離感があっているんだと思います」

—当時は、みれいさんと猫はどういう関係性でしたか?

「仲間というか、同士ですね。一緒に生きていこうな! って。私自身も大変だったし、ドモちゃんも数週間ずれていたら殺処分されていたわけです。だから、生きていくことに対してのエネルギーみたいなものに、勝手にシンパシーを感じていたのかもしれません」

—なるほど。では、あたりさんとは?

「今回は全く違いますね。わたしと夫、そして子どもって感じかな。やんちゃ盛りの長男です。ふたりの関係性は変わらないけど、にぎやかになりましたね。普段はバタバタ忙しくしているのですが、ちょっと抱っこしたり、少し、一瞬だけでも、ホッとする時間が持てるようになったんです。あとは掃除をマメにするようになった(笑)。毛やトイレなど汚れるから、おかげさまで、これまたいいことばかり。友人やmurmur magazineの編集部のスタッフたちも、あたりのことをすごく可愛がってくれます。来年のカレンダーの表紙もあたりくんです。みんなに愛されているんです」

—“あたり”という名前の由来は?

「夫が、シェルターからでてきてすぐ、“あたり”にしようって言ったんです。まさに“大当たり!”でしたね。あたりくんは4人兄弟の末っ子で、動物の習性として強い子を生き残らせるために、小さい子はお母さんが餌をあげなくなるらしいんです。だから身体も他の子に比べてすごく小さくて。だったら、この子は、人間が育てるべきだなって思ったんですよね」

—どんな性格ですか?

「シェルターの人から、恐怖心を知らないから、子猫のうちは人が居ないときはゲージに入れていたほうがいいと言われるくらい、人懐っこい。ドモちゃんに比べて、そんなに利発な感じじゃないかなって思っていたのですが、今日取材があるので掃除をしようとゲージをずらしたら、下からいーっぱいガラクタがでてきたんです。鉛筆とかペットボトルのキャップとか。きっと気に入ったモノを集めていて、まるで子どもみたいですよね(笑)」

—言葉は通じていると思いますか?

「いくつかはわかっていると思いますよ。ご飯だよ、って言うと『ニャ』って返事をしますし。でも最高に面白いことがあって、夫とわーっと盛り上がって、パッとあたりくんをみると知らんぷりしていたり(笑)。猫と人間とは、違う空気が流れていて、それがまたいいんですよね。あと人間の男性と猫の雄はとても似ていると思います。先日、子どもたちと接する機会があったのですが、男の子たちは、ちょっとお調子者というか、みてみて〜って騒いだり。女の子のほうが現実的ですよね。“男子、なにいってんの?”みたいな(笑)」

自分を知っている粋な存在

—2匹目を飼う予定はありますか?

「今後、住環境が整ったら、猫2匹と犬1匹が理想ですね。だから猫だけってわけじゃないんですよ。動物と暮らすことは、純粋に面白いですよね。見ているだけで飽きない。実は獣医さんの指導を受けながら、ご飯を手作りであげています。最初は市販のカリカリだったのですが、蒸したささみやお魚など動物性タンパク質とじゃがいもや少量のごはんなどを混ぜたご飯をあげるようになってから、身体がクタクタっと柔らかくなり、目もキレイになったんです。人間も同じで、丁寧に毎日ごはんをつくって食べる。それだけで大きくかわることがわかりました」

—猫のいちばんいい所は?

「本当に仲の良い友達って、ずっと黙って一緒にいても、落ち着きますよね。猫はそういう存在。黙ったまま、まったりしていても、帳尻が合う。心と心で、わたしたちわかっているよねって。あと、けっこういい大人になって何かを育てていないのって、ちょっと人間として不自然だと思うんです。もちろん子どもだけでなく、後輩だったり、植物だったり、なんでもいいと思うんですけど。何かの世話をして面倒を見るって本当に大事なことだと。自分自身も誰かのお世話になって生きてきたわけですから。そして猫って、粋ですよね。いつもはものすごく元気な父が入院した時に、ドモちゃんが弱ってしまい、父が退院する2日前に亡くなって、父は看取ることができなかったんです。でもそれは、ドモちゃんが毛も抜けてみずぼらしくなったところを父に見せたくなかったんだなって。女心ですよね。猫には、そういう不思議な一面もあります。その粋を、あたりくんと暮らしていると、ふとした日常にも感じるんです」

  • 名前: あたり
  • 年齢: 4ヶ月
  • 性別:
  • 品種: 雑種
  • 飼い主プロフィール:
    服部みれい(はっとり・みれい)
    岐阜県生まれ。文筆家、『murmur magazine』編集長、詩人。育児雑誌の編集を経て、1998年独立。ファッション誌のライティング、書籍の編集・執筆を行う。2008年春に『murmur magazine』を創刊。2011年12月より発行人に。冷えとりグッズと本のレーベル「マーマーなブックス アンド ソックス」(旧mmsocks、mmbooks)主宰。あたらしい時代を生きるための、ホリスティックな知恵、あたらしい意識について発信を続ける。『冷えとりガールのスタイルブック』(主婦と生活社=刊)をはじめ、代替医療に関する書籍の企画、編集も多数手がけている。新刊に『SELF CLEANING DIARY 2015
あたらしい自分になる手帖』(アスペクト=刊)、『日めくりッ コンシャスプランカレンダー2015』(エムエム・ブックス=刊)
    http://hattorimirei.com/