赤裸々なアラサー女の恋愛模様を描いた4コマ漫画『アラサーちゃん』をはじめ、同世代の女性から共感を集めるコラムなどでも人気の峰なゆかさんは、10歳になるチンチラの愛猫・プッシーさんと暮らしています。美女や美しいモノが好きという峰さんに、猫の美しさとその魅力について伺いました。
真っ白でフワフワの猫
ープッシーさんとの出会いは?
「昔から友人たちに、真っ白でフワフワの猫を飼っていそうだねと言われることが多かったんです。あと、男の人に猫をプレゼントしてもらうっていうシチュエーションにも憧れがあって、当時の彼氏に“誕生日プレゼントで白くてフワフワの猫を欲しい!”っておねだりしたんです。それで、彼が連れてきたのがぷっしーさんでした」
ー猫を飼うのは初めてだったのですか?
「幼い頃からずっと猫を飼いたかったのですが、親も猫好きで、好きすぎてむしろ死ぬと悲しいから飼っちゃだめと言われていたんです。一人暮らしをするようになって、ペット可のマンションに引っ越して、19歳の時にようやく飼うことができるようになりました。動物を世話すること自体は好きなので、猫を飼う前は金魚を飼ったこともあったのですが、やっぱり猫がいいんですよね」
ー猫に執着している理由は?
「美しいモノが好きなので、猫なんです。犬よりも猫のほうが美しくて、高貴ですよね。例えば、ユニコーンやドラゴンが好きな人っていますよね。空想の生き物ですが憧れが入っているというか。そういう気持ちで猫を見ているのだと思います」
ープッシーさんと暮らし始めて、何か発見はありましたか?
「すぐ仲良くなれると思ったのですが、うちに来てからしばらくずっと隠れていたんです。気づくとご飯が減っていて、慣れるまで1ヶ月くらいかかりました。あと猫の目って、内側の膜が縦に閉じるじゃないですか。ビックリして、病気だ!と思って病院に連れていってしまったり(笑)。毛玉ができた時もどうしていいかわからなくて連れていっていました。長毛なのに、ブラッシングをすごく嫌がるので、最近は毛玉ができたら切るようにしています」
上司のような同居人
ープッシーさんは、どんな性格ですか?
「家にお客さんが来るといつも怒っていますし、全然慣れないですね。触られるのもあまり好きじゃないみたい。猫を飼うのが初めてなので、こんなものかなと思っていたのですが、ほかの猫を飼っている人に聞くと、こんなに凶暴な猫はあまりいないよねって言われます。初めて会った時に無理矢理、触ろうとした人はその後もずっと嫌われているかも(笑)。何もしないで距離を保っているほうが、なついてくれるんです。とはいえおもちゃでも遊ばないし、ベッドで一緒に寝ることもないですね」
ープッシーさんと峰さんはどんな関係ですか?
「少し目上の同居人ですね。人としては認めるけど私の方が上ね、という空気は感じます。上司というか。上司と同居って、実際にあったらいやな感じですけど(笑)」
ープッシーさんは、峰さんの言葉を理解していると思いますか?
「どうですかね。猫漫画を読むと、猫自身の気持ちが描かれているじゃないですか。遊んで欲しいとか、ほかの猫に嫉妬しているとか。なんでみんな、そんな猫のきもちがわかるのかなって。私は全然、ぷっしーさんの気持ちがわからないんですよね。シャーっといっていたら怒っている、というくらいは理解できるのですが、細かい心の動きは読めないです」
ー10年も一緒に暮らしていると、友達や恋人などさまざまな人との出会いがあったと思うのですが、プッシーさんとの接し方で人間が見えたりしたこともあるのでは?
「んー、彼氏のような人は大体好かれていたかな。猫好きな人が多かったですね。猫好きな人はインドアで、私には気が合うんです。犬派ですって言われると、ああこの人とは価値観が合わないなって思う。友達がたくさんいて、コミュ力が高い。犬好きな人はちょっと苦手です。映画監督の伊丹十三さんも猫好きで、エッセイ集『女たちよ!』の中で犬派をディスっていて(笑)。猫派の人は、あえて犬派を否定するというか、ちょっと性格がひねくれているんですよね」
高貴な美女と猫が好き
ー峰さん自身は、猫っぽい性格なのですか?
「私は犬だと思います。下っ端にまわるのが好き。命令されたり、パシリのように骨をとってくるとか。猫みたいな、高慢な性格にみられることもあるのですが……。私は美しくて気高いモノが好きで、女の人はそうであってほしい。でも美女でないと、その気高さは保てない。プライドが高く気高い人が好きなんです。あと私はほっこり猫写真が好きじゃないんですよね。全然興味がない。それが、最近ツイッターでSpaceCatsというアカウントを見つけて、私の求めていた猫写真はこれだ!と。“宇宙を制する猫”というくらいの高貴な猫が好き。だからプッシーさんは、ベタベタ触れ合ったり、甘えてベッドに入ってきたり、そんなアバズレみたいなことはしなくていいんです」
ー猫が好きで触れ合いたいけど、少し距離のある関係が心地よいということですよね。人間関係でも同じですか?
「美女が好きなのですが、別に付き合いたいとは思わないんですよね。生活とかセックスとか日常的なことは男とでもしておけばよいから、美女はたまにあって顔を見る。それくらいの距離感がいいんです。猫と美女を神格化しているのかもしれません」
ー猫漫画を描きたいと思ったことは?
「いまのところないですね。『アラサーちゃん』にも猫を登場させたいと思っていたのですが、意外とネタとしての猫の使い方がわからなくって。特に私の作風だと、ほっこりして終わることがないので、動物モノは難しいんです。もし描くとしたら、猫との日常を綴るのではなく、もっと大スペクタクルな戦争モノとかになると思います。もしくは『吾輩は猫である』のような、猫視点で愚かな人間の暮らしを観察する話なら、自分も読んでみたいですね」
ー猫と暮らしていてよかったことは?
「猫と暮らしてよかった、というよりは、猫がいなかった生まれてから19歳までの間はあまりよくなかったなと。ずっと猫が足りなかった。猫がきて、ようやく人として一人前になれたんです。言ってみれば、猫は信仰の対象。猫がいることで寂しさが紛れるという人もいますが、猫じゃ寂しさは埋められない。何も信仰がないと、人は不安定な気持ちになりますよね。対象は何でもよかったのかもしれませんが、でも、美しく気高いモノということで、私には猫がぴったりだったんです」