東京・練馬にお店を構える『MAMMOTH COFFEE(マンモスコーヒー)』の河野恵里さんは、9歳になるニール君と暮らしています。夫・河野武史さんとともにお店を切り盛りしながら、4歳と12歳の男の子を育てる中で出会ったニール君。やんちゃな子どもたちにもクールな対応をみせる猫の大人らしさを垣間見ることができました。
やんちゃな子どもたちと大人しい猫
—ニール君との出会いは?
「上の息子が保育園の頃、夫が店を片付ける間に息子と店の近くのペットショップで時間をつぶしていたんです。そこで、息子がニール君に釘付けになってしまって。当時、彼が体調を崩していたり、なんとなく家族全体が重い空気が漂っていて、ニール君がきてくれたら少しでも明るくなるかなと思って暮らしはじめました。実はその時、アメリカンショートヘアの雌猫も飼っていて、2匹目でした。いまその猫は、実家にいます」
—なぜニール君だったのでしょうか?
「チンチラシルバーですが、猫種にこだわりがあったわけではないんです。以前住んでいた家は庭がなかったので、犬は飼えないなと思っていたんですね。猫は散歩も必要ないし、大丈夫かなって。とにかく息子が可愛がっていて、だから彼の友だちみたいな感じでした」
—どんな性格ですか?
「穏やかですね。息子が風邪をひいて寝込んでいると、お布団にべったりついていたり。彼らは性格も似ているんです。でも、2人目の息子はやんちゃな性格で、彼が風邪をひいても全然寄っていかないんですよ(笑)。ニール君もわかっているんでしょうね。お兄ちゃんとは友だち、弟はちょっと苦手。いくら弟が泣いていても、耳を伏せてうるさいなあって表情で離れたところにいますから」
—猫は2歳児くらいの知能をもっていると言われますよね。
「確かに、賢いですね。あまり抵抗もしないし、下の子が抱っこしても手を出さずにじっとしています。子どもは気まぐれなので、ニール君はけっこう振り回されているかもしれません」
—河野さん自身は、幼い頃に猫と暮らした経験があるのですか?
「夫はずっと大型犬を飼っていたのですが、私はずっとペット不可の家に住んでいて、いつか飼いたいなって思っていました。父も動物が好きで、その反動じゃないですけど、ザリガニやカマキリ、カメなどの小動物をたくさん飼っていました。だから猫に対するあこがれがあったんです」
—ザリガニは見ていて飽きなそうですが、とはいえコミュニケーションをとることはできないですよね?
「そうですね。餌をあげると寄ってきたりするものの、イマイチな反応で。たくさん飼っていたけれど、物足りなさがありました。ニール君は、言葉はわかっていないかもしれませんが、呼ぶと顔をこちらに向けてくれるし、なんとなく伝わっている気がします。そういえば、下の子がまだ赤ちゃんの頃、何もない壁をニール君とふたりでみていたことがよくあって。動きがシンクロして、実はふたりにしか見えないモノが見えていたのかも。不思議でしたね」
—子どもにとって、自分より小さな生き物と暮らす体験はとても貴重ですよね。
「優しく撫でたり、幼いながら動物を気づかう心は育まれているのかもしれません。もしまた2匹目を飼うなら、保護猫から探すと思います。でもニール君との相性があるので、なかなか難しいですね。お店には犬を連れて来てくださるお客様も多く、店内には連れ込めないので、テラス席をつくればよかったかなと。散歩がてらお店に寄れるのは羨ましいですね」
—今日は猫柄の靴下ですね! 猫グッズにも目がないですか?
「これはtupera tupera(ツペラ ツペラ)という絵本などを手掛ける作家ユニットさんの靴下です。あとは猫のアンティークの小物入れや、ニール君に似ているブローチ、招き猫なども。見つけるとつい手にしてしまいます。でも実はカバも好きなんですよ。自分でもわからないんですが、カバは癒やしです」
猫と珈琲の時間
—『MAMMOTH COFFEE(マンモスコーヒー)』をオープンするきっかけは?
「今年の5月でちょうど10年目になります。以前、夫は代官山の輸入食材店で働いていて、私も別のカフェで働いていました。練馬は私の地元かたも近く、ふたりでお店を出そうと決めてから、ここを見つけました」
—最近は珈琲屋さんも増えましたよね。
「10年前は、古い喫茶店くらいで、最近のお洒落な珈琲屋さんは全くなかったんです。だから、こんなに増えるとは思いもしませんでした。地元の常連さんも多いですし、駐車場があるので遠方から豆を買いに来てくださる方もいらっしゃいます。始めた当初は、珈琲豆を買いに来るお客様がどれだけいるのかわからなかったのですが、ブームもあって、意外に買いに来てくださるんだなって」
—お店にはカフェもあるんですよね?
「もともとは、カフェがやりたかったんです。でも、夫が代官山に勤めている時に、豆の焙煎を勉強して、この豆も販売できたらいいねと思って焙煎所をつくりました。いま思えば、豆を自家焙煎していたから、ここまで続けてこれたのだと思います。最近では、卸先も増えましたけど、最初は中目黒のうどん屋・豊前房さんの店主が知り合いで、そこにおいてもらったのが始まりです」
—豊前房とは、人気猫・どんこ(https://ilovedotcat.com/ja/6209)の出版記念イベント「どんころり」祭りも同時開催していましたよね?
「どんこがきっかけとなり、初めて来てくださったお客様も多くて、猫話がたくさんできて楽しかったですね。お店にいると思われる方もいたのですが、どんこもニール君もお店にはいません。連れて来られたらいいんですけど、猫は外に連れ出すのは難しいですよね。どんこの飼い主である井上佐由紀さんとは、仕事やプライベートで共通の知人が多く、気が付くと家族ぐるみで仲良くなっていました。どんこにも会いにいったのですが、下の子がグイグイいってしまって、ちょっと警戒されてしまいました(笑)」
—猫がいる暮らしのいいところは?
「子どもたちが寝静まると、ニール君とふたりの時間です。賑やかなのは楽しいのですが、反面ちょっと疲れてしまう時もある。そんな時、ニール君と言葉を使わずに、ただそばにいる関係はとっても心地がいい。癒されるといったら簡単ですが、私のほうが甘えさせてもらっているのかもしれません」