ファッションデザイナーとして活躍する野口アヤさんは、17歳になるペルシャ猫ミミオさんと、15歳のマメさんの2匹の猫たちと暮らしています。まるで仙人のような、優雅で堂々とした姿のミミオさん。一方、人見知りでそっけなく、実に猫らしい性格のマメさん。長年、猫たちと暮らしてきた野口さんに、猫の魔性的な魅力について伺いました。
—ミミオさん、マメさんの名前の由来は?
「ミミオは美しい男と書いて美美男(ミミオ)、マメは魔性の女と書いて魔女(マメ)と呼びます。17歳と15歳。人間でいうと、もうおじいちゃんとおばあさんですね」
—ミミオさんとの出会いは?
「パートナーであるチダ(コウイチ)が交通事故にあい大怪我をして、自宅療養をしていたんです。少し回復してきて近所を散歩していた時、ペットショップでミミオをみつけ、一目惚れしてしまって。一度家に帰ってきて、飼いたいんだけどどうしよう?っ相談されたんですが、すぐに一緒に暮らそうと決めました。当時からミミオは堂々としていて俺様っていうか、お客さんがきても全然逃げないし、リビングにいると自ら輪に入ってきます」
—マメさんとは?
「ミミオが2歳になって、全然遊ばなくなったんですね。ペルシャ猫の性格だと思うんですけど、寝てばかりいて、運動しないとよくないなと。それで、性格がいいと言われるアメリカンショートヘアを探して、マメを迎えました。ところが、マメはアメショーらしくない性格で(笑)。引っ込み思案で大人しく、人が来たらベッドの下に隠れてしまうんです。今日も全く出てこないですね」
—2匹の相性はどうでしたか?
「それが、あんまり良くなくて。マメが来た頃は、いつもシャーって喧嘩していましたね。最近はさすがになくなりましたけどね。ようやくお互いを認め合ったというか、近くで寝ていることもあります。でも兄弟猫みたいにくっついて寝ていることはないですね。トイレは一緒で、ご飯は別々のボウルにいれています」
俺様タイプのミミオと魔性の女マメ
—性格の違いはありますか?
「ミミオは完全なオレオレタイプですね。小さい頃に、テーブルに乗ってはダメとか、キッチンは危ないから入っちゃダメとか、しつけをしていたんですけど、チダは遊んであげるというか、甘やかしているから、彼の跡をずっとついてまわります。チダのほうが好きみたい」
—まるで子どもが、毎日世話をしてくれるお母さんより、たまの休みに遊びに連れていってくれるお父さんに懐く、みたいな構図ですね(笑)。
「まさにそうです。でもしつけの甲斐あって、ゴミ箱あさりもしないし、粗相もないですね。ミミオと違って、マメはいつもスリスリと甘えてきます。手や顔をすっごいベロベロ舐めてきたり。お客さんがいるとしないんですけど、内弁慶というか、猫らしい猫です。ちなみに実は私、猫アレルギーなんですよ」
—なんと! 2匹と暮らす前からですか?
「いえ、ミミオと暮らしはじめてからです。チダが交通事故にあって、生き方というか、仕事のやり方も考えなおして……ちょうど転機だったんですよね。チダと一緒に会社を立ち上げてからは、とても忙しくなって体調を崩してしまい、アレルギーが出てきたんです。最近はだいぶおさまりましたけど、たまに出るんですよね。ミミオが来てから、本当にいろんなことが様変わりしました。ショールームにミミオがいた時は、招き猫のように人を呼んでくれて。“ミミオ営業部長”なんて呼ばれて、みんなに可愛がってもらいました。ミミオとともに、ブランドも成長してきた感じです」
—幼い頃から猫に馴染みがあったんですか?
「いえ、一度も動物を飼ったことがなく、自分が猫と暮らすようになるなんて、想像もしたことがなかったです。たまたまミミオと出会ってしまって、こんな可愛い生き物がいるんだってビックリしました。一緒に寝る時、頭の上あたりにいつもミミオはいるんですけど、最初はなんだか落ち着かなくて。動物がいる暮らしの、コツをつかむのに苦労しました」
シックスセンスを持つ猫たち
—野口さんにとって2匹の猫はどんな存在ですか?
「子どもでもないし、同居人でしょうか。言葉はわからなくても、こちらが発する感覚はわかっている。寂しい時は、知らない間に近くにそっと居たり。声ではなく、シックスセンス=第6感のようなモノを猫は察知できるのだと思います」
—猫側の気分もわかりますか?
「大体わかります。でもあまり感情の起伏がなく、落ち着いていますね。人がたくさん来ている時とか、やたら構ってくる人が来ると、イライラしているなってわかります(笑)。私自身が、いつもミミオ〜ミミオ〜って構ったりしないし、イヤがるってわかっているので。犬のようなべったりな関係は疲れてしまいます」
—野口さん自身も猫らしい性格ということですね。
「完全に猫タイプですね。チダは構いたがりなので、犬っぽいかもしれません」
—一緒に暮らしていて、発見したことは?
「猫によってゴロゴロの音域が違うことですね。いつもは、ミミオが頭の上で寝ているのですが、ふと違うゴロゴロが聞こえるなと目をあけると、マメが寝ていて。ミミオは低いゴロゴロ〜、マメはコロコロッとちょっと高いんです。すごく近くで聞いてみると違いに気が付くはずです」
可愛いだけではない妖艶な猫
—猫ブームと言われていますが、長年、猫と暮らしてきたわけですよね。
「飼いはじめた頃は、ダックスフントが流行っていて世間は犬ブームでした。でも最近は、猫を飼っている友人も多くなりましたよ。社会的な流れで、癒やしを求める人が多いのかな。チダも弱っている時に、猫に惹きつけられたわけですからね」
—洋服のデザインをする時に、猫を扱いますか?
「猫モチーフは鉄板ですね。Tシャツからクッションから、いろんなところに登場させています。特に、秋冬シーズンは猫柄や猫のイラストを多用します。いまもイラストレーターさんに描いてもらっています。毛がふわふわしていて、相性がいいんですよ。でも猫を描くといっても、ファンシーになり過ぎないようにしています。猫=大人の女っていうイメージ。そしてちょっと可愛い。それは、私が作る大人の女性のための洋服ともリンクするテーマです」
—確かに、猫は可愛いだけではなく妖艶な部分もありますよね。
「猫のそういう部分に惹かれて、洋服にデザインしています。お客様もスタッフも猫好きな人が多いですね。イタリアでみつけた猫モチーフのタロットカードやAstier de Villatteのお香立てなど、ちょっと雰囲気のある猫グッズがお気に入り。目がくりっとした幼い猫ではなく、こういうちょっと怖さや雰囲気のある猫が好きなんです」