羊毛フェルトとオリジナルグラスアイで、手のひらサイズのリアルな猫の姿をつくりだす作家・猫ラボさん。雄猫の蘭丸さん、姉妹猫の南天さんと福さんの3匹の猫たちと暮らしてます。ちょっぴり臆病な蘭丸さんと、好奇心旺盛な姉妹たち。多頭飼いならではの楽しさやお世話のコツを伺いました。
臆病な兄とやんちゃな姉妹
—蘭丸さんだけが雄猫なんですよね? カーペットに隠れてまったく出てきてくれませんが(笑)。
「南天(グレー☓白)と福(白☓黒)は姉妹なのですが、蘭丸(黒ヒゲ)だけ血縁関係がないんです。蘭丸が半年違いで年上のお兄さん。蘭丸はビビリな性格で、お客さんがくると絶対にでてこないですね。いつもはベッドの下に隠れるのですが、今日はなぜかカーペットの下に入ってしまって、でられなくてどうしようと焦っていると思います(笑)」
—3年前にilove.catで取材した時(https://ilovedotcat.com/ja/8756)には、先代の猫さんたちが亡くなられた頃でしたよね。新たな猫たちとはどのように出会ったのですか?
「先代が亡くなってから、しばらくしてやっぱり猫と暮らしたいと思い、探し始めました。里親募集サイトや譲渡会などに足を運んだものの、なかなかこの子という出会いがなくて……。1年くらい探し続けていたある日、里親募集サイトで蘭丸をみかけて、この子だ! とピンときんです。同じタイミングで、夫がミグノンで南天と福をみて、この子たちだ! と。もともと2匹飼いをしようと考えていたのですが、急にこの3匹が候補になって。南天と福は姉妹だったので離すことはできず、すごく悩みました。蘭丸だけ血縁関係がないので、仲良く慣れるかわからないし。蘭丸の保護主さんとミグノンの友森さんにも何度も相談したのですが、みんな若いし大丈夫だよ、という後押しをいただいて、3匹を一緒に飼うことに決めました」
—蘭丸さんにグッときたポイントは、どこだったのですか?
「おっとりしていて少しどんくさい所ですかね。保護主さんによると、野良をしていた蘭丸の一家がいて、最初、蘭丸のお母さんを保護しようとしていたのですが、その捕獲ケージに蘭丸がなんどもかかったらしいです。蘭丸は捕まえやすいから、後でって何度逃しても、3日連続でケージに入ってきたみたいで(笑)。じゃあ蘭丸を先に保護しようと、捕獲されたと。保護されたあとの毎日の様子も保護主さんが丁寧にブログに記録されていて、甘えん坊なのにがまんするところとか、控えめでいじらしい性格にも惹かれていきました。あとは可愛くて性格もいいにもかかわらず、長期間いいご縁に恵まれていなかったのも決め手になりました」
—旦那さんは、南天さんと福さんのどこにピンときたのでしょうか?
「夫は気が強い美少女たちにふりまわされたいという願望があるらしく(笑)、下僕体質なんですよね。先代の猫がそういう性格で相思相愛だったから、もうあんな特別な猫はいないとあきらめていたんです。ミグノンの譲渡会ではたくさん猫や犬がいて、大抵の猫たちはシュンとなっているのですが、南天と福は物怖じせず、人がきてもグイグイアピールしていたんです。その雰囲気が、先代の猫とそっくりで、夫が恋におちた瞬間をみてしまった感じです。実際に飼ってみたら、ストレートに愛情表現をしてくれる猫たちだったので、すっかりメロメロになっています」
—名前の由来は?
「蘭丸は保護主さんが名付けていて、すでに里親募集サイトのブログでも蘭丸くんとして浸透していたので、そのまま引き継ぎました。ミグノンはいつも個性的な名前をつけられていますが、南天と福は記号的な呼び名しかなく、母猫ともう2匹あわせて“川渡り一族”と呼ばれていました。最初、2匹とも体が弱く病院通いが続いていたので、“災い転じて福となす”という意味をこめて、南天と福にしました」
3匹だからそこの楽しさ
—ご自宅には、一緒に3匹がやってきたのですか?
「2日違いで届けてもらいました。まずは蘭丸を、先住猫のお兄ちゃんとして立てることにして、後から南天と福がきたんです。最初は、蘭丸も浮かれていて、あ!なんかカワイイ子がいる〜! って感じだったのですが、しばらくすると女子たちに圧倒されてしまいました。姉妹は運動能力が高くてすばしっこいのですが、蘭丸はおっとりしていて、遊ぼうにもレベルが違うんですよね。姉妹なので団結力が強く、蘭丸をおじさん扱いしてちょっと邪険にしたり。女子っぽいですね(笑)」
—姉妹それぞれ性格の違いは?
「福は性格がよく、他の子がやってきたら譲ったりするのですが、南天は完全にジャイアンです。人のモノも自分のモノ。おもちゃも、後からきてサッと奪います」
—3匹いることの大変さはありますか?
「それぞれアレルギーや胃腸の問題などがあって、一時期は3匹とも別々のご飯をあげていました。いまは姉妹は同じご飯になったのですが、やはりそれぞれ用意するのは手間がかかります。また病院に行く時も、夫と交互で先に2匹連れて、戻ってきて残りを連れて、と。慣れるまでには大変でしたね」
—逆に、3匹だからこその良い点は?
「それぞれ性格が違うので、その違いをみるのはとても楽しいです。また2匹だと、猫2匹と対人間のパターンですが、3匹いると組み合わせごとに行動が変化するんです。姉妹がいつも一緒というわけでもなく、蘭丸とどちらかという組み合わせも多い。蘭丸は南天のことが好きで、でも南天は遊び相手としかみていない。福は、蘭丸のことが好きだけどちょっとこわい。自分からは舐めたりするけど、蘭丸に舐められるとキャーといって逃げる(笑)。蘭丸と福はビビリなので、インターホンが鳴ると2匹で隠れたり。状況によって、それぞれペアが変わっていくのはとても面白いですね」
—1匹だけでなく、多頭飼いだと、猫同士の社会性にもよいですよね。どれくらいのパンチをしたら痛いのか、噛む加減などの勉強になります。
「先住猫の1匹目は本当に噛み癖がひどくて、だから2匹目を飼ったというのもあります。やはり2匹目がきたら、それぞれ力加減などは学んだようですが、とはいえ、持って生まれた性質が大きい気がします。いまの3匹はみんな攻撃性はないですし、蘭丸なんて何をされても全く引っ掻いたりしないですから」
—一緒に暮らし始めて、変化したことは?
「最初は猫同士でくっついていたのですが、それぞれ人間に甘えてくるようになりました。ご飯をあげるから、夫よりも私に懐いています。母親みたいな感覚なんだと思います」
猫がくつろぐインテリア
—猫たちのために家を改造したのですか?
「先代の猫が最後は体調がわるく、いろんなところに嘔吐をしてカーペットなどがボロボロだったんですね。だから、床はブロックごとに貼り替えられるカーペットにして、ついでに玄関の柵と猫ドアもつけました。ソファのカバーは自分で縫って、いつでも洗えるようにしています。どうしても汚れてしまいますからね」
—収納がたくさんあって、モノが少なくみえます。
「実家が大震災を経験したので、必ず棚には扉をつけるようにしています。もしオープン収納だったら、それこそ姉妹がいたずらしまくっていたでしょうね。作家さんの作品はガラスケースやカゴにいれてガードしています。モノを極力出しっぱなしにしない、汚れたら洗濯する。猫たちがいるからこそ、家の中がキレイに保たれているだのと思います」
—羊毛フェルト作品については以前もお伺いしましたが(https://ilovedotcat.com/ja/8756)、この3年の間に巷では猫ブームと言われていましたが、作り続けていて変わったことは?
「自分がつくった分しかお届けできないので、複製して販売できる人に比べたら広がりはないのですが。いろんなところからお声がけいただき、人との繋がりが増えていくことは本当にうれしいですね」
—今後予定している企画はありますか?
「来年の3月に個展を予定しています。今回は、いろんなジャンルの方々とのコラボレーション企画を考えています。作品だけでなく、コラボレーションのアイテムやライブなども検討中です。また作品集も制作中で、いくつか出版社さんからもお声がけいただいたのですが、あえて自費出版という形で進めています。ちなみに、3月までにも、個々に展覧会やイベントなどにも参加していますので、HPやTwitterなどでご確認いただけたらと思います」