ライティングディレクター・東元丈典 a.k.a. HIGASIX × ロビン — 〈死なないための住宅〉で暮らす猫

May 30, 2013 / Interviews

Photo:Shin Suzuki Edit&Text:Madoka Hattori

ポカリスウエット「ION WATER」やJR東日本「行くぜ、東北。」のキャンペーン広告、KOSE「雪肌精」のCM、ゆず「LAND」のMVなどで照明を手がけるHIGASIXこと、ライティングディレクターの東元丈典さんと14歳になる雄猫・ロビンさん。ロビンさんが産まれた時からずっと一緒に過ごしてきたというだけあり、東元さんは猫のいない生活は考えられないと言います。そんな東元さんさんが愛猫と暮らす、建築家・荒川修作が建てた〈死なないための住宅〉に伺いました。

産まれた時からずっと一緒

—ロビンさんとの出会いは?

「高校生の時、親友からモモという名前の猫を譲り受けたんです。実家だったので、部屋のタンスでこっそり飼っていたのですが、案の定みつかってしまって。でも親も猫を飼うことに反対はされず、一緒に暮らすことになりました。むしろ猫の可愛さにどっぷりハマっていましたね。しばらくして父親が知人からペルシャ猫を預かり交配させ、子猫が3匹産まれました。その中の1匹がロビンです。もう14年目に一緒にいます。僕は引っ越しが多くて、実家を出てからはいろいろな場所へ連れ回している感じかな。この家(三鷹天命反転住宅)に引っ越して来たのは1ヶ月くらい前。家財道具をほとんど持っていないので、住みやすいですよ」

—建築家・荒川修作+マドリン・ギンズによる「三鷹天命反転住宅」は普通の住宅とは異なり、床や部屋の構造が変わっています。人間はもちろん、猫にとっても遊び場所がたくさんあって楽しそうですね。

「そうですね。でもロビンはもう老猫なので、ジャンプしたり走り回ったりもしないから、正直、居心地がいいのかはわからないですね(笑)」

—ロビンさんはどんな性格ですか?

「ペルシャの血が入っているからか、おっとりしています。体も大きいし。毛が長くてすぐ毛玉ができてしまうので、1年に1度丸刈りにします。本人はいやかもしれませんが、その姿が可愛くて(笑)。たまに事務所にも連れていきますが、おとなしくしていますよ。ご飯はカリカリ、トイレはニャンとも清潔トイレを使っています」

暗闇から光をつくるライティングディレクター

—建物自体にこれだけインパクトがあると、どんな猫グッズを置いても、あまり違和感がないですよね。好きな猫の本や映画はありますか?

「荒木経惟さんが好きで、『愛しのチロ』は何度も見ています。ただ、チロの亡くなった写真は、ちょっと直視できないですね。僕はずっと、竹中直人さんに憧れていて、高校卒業後に付き人になろうと会いにいったのですが、門前払いされて。ちょうどその頃、映画『東京日和』で竹中さんがアラーキーを演じていたので知ったんです」

—なるほど、東元さんのちょっと奇抜な装いは、竹中直人さんからきているんですね。

「影響はかなり受けています。弟子にはしてもらえなかったのですが、そのツテで竹中さんが次に撮影する映画『連弾』の撮影現場で、照明部に入ったんです。いままで生きてきた中で最高の1ヶ月でしたね。憧れの竹中さんの近くに毎日いられるだけで幸せ。そこでどんな照明の仕事をしたのか、記憶がほとんどないんですけど(笑)。その後、大学に行きながら映画の現場を5〜6本経験して、そのままフリーランスの照明助手になりました」

—まさにライティングディレクターが天職だったわけですね。

「いや、仕事は辛いです(笑)。今はご飯が食べれているので、天職というより、適職だったのかな。ちゃんと仕事として意識したのは、CMの照明を手がけている人のアシスタントを始めてから。真っ暗闇から光をつくっていくのは面白いんですよ。でも基本的にはクライアントありきの仕事なので、いってしまえば僕はピエロ。いかに喜んでもらうか、おもてなしの精神が試されているんです」

—いかに相手を喜ばすか、ということでいえば、犬よりも猫を飼っている人のほうが比較的上手い気がしますが。

「んーどうかな。ライティングに関しては、抽象的な言葉で注文されることが多いんです。それをいかに汲み取るか。そういわれると言葉が通じない猫と一緒ですね」

—撮影現場などで猫や動物と接することはありますか?

「現場に猫がいると、ちょっとあがりますね。以前『ミルクラッパー』という子ども番組のPVを牧場で撮影したのですが、その牛小屋に産まれたての子猫がいたんです。3日間撮影だったので、子猫を箱にいれて誰かもらいませんか?と里親探しをしていたのですが、なかなかみつからなくて。さすがに情が湧いてきたので、いい出会いだし連れて帰ることにしたんです。ただ、その後のスケジュールが詰まっていたので、スタッフに1週間くらい預けていたら、彼の奥さんが気に入ってしまって。“ミルクちゃん、返してよ!”っていっても、返してもらえず(笑)。こういうのは縁だからしょうがないのですが、ちょっと切なかったですね」

“死なない猫”とは

—猫と暮らす一番の魅力は?

「今回取材を受けるにあたり、猫と暮らすことの意味を考えてみたのですが、なかなかコレ!という答えがみつからないんです。家に帰れば必ず居るんだけど、猫自身はどう思っているかわからない。人間の一方的な思いで、一緒にいるわけだしね。猫という大きなくくりではなく、ロビンという個と接しているです。実は去年、実家のモモや兄弟が亡くなってしまって、次はロビンの番なのかもって、ちょっと不安になっていて……。荒川修作さんはこの家を〈死なないための住宅〉と言っていましたが、どうなるのかな。 “死なない猫”なんていないですもんね」

—それで、福島・三春シェルターの保護猫(https://ilovedotcat.com/ja/7596)にも興味があると。

「猫がいない生活が考えられないんです。だから、ロビンがいなくなってしまった時のことを考えて、もう1匹いたほうがいいかなと。そこでシェルターの保護猫の話を聞いて、興味を持ったんです。ロビンは血のつながった猫としか暮らしたことがないので、新たな猫と暮らすのはストレスになるかもしれないけど。でもこういうのは、縁ですからね。今度ぜひ一緒に行ってみたいです」

  • 名前: ロビン
  • 年齢: 14歳
  • 性別:
  • 品種: スコティッシュフォールド
  • 飼い主プロフィール:
    東元丈典 a.k.a.HIGASIX(ひがしもと・たけのり)
    GO-SUNS 代表。ライティングディレクター。舞台、イベントプロデューサー。広告、CM、ミュージックビデオなど数々のメディアでライティングディレクターとして活躍。最近手がけた照明は、ポカリスウエット「ION WATER」、JR東日本「行くぜ、東北。」、KOSE「雪肌精」、キューピー「バターミルクランチドレッシング」、ゆず「LAND」など。また劇団「GO-SUNS」のプロデューサーとして、過去に4回の舞台公演を開催。写真家・高橋恭司の展覧会「異展 ザマッドブルームオブライフ」「走幻」で照明も手がけている。
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