NHK連続テレビ小説「あまちゃん」のヒビキ一郎役やバンド「グループ魂」のバイト君をはじめ、個性的な役柄で映画やドラマなどで活躍する俳優・村杉 蝉之介さんは、3歳になる雄猫・ゼリーさんと暮らしています。猫と暮らし始めてから、趣味であった怪獣フィギュアの蒐集やDVDのコレクションをしなくなったという村杉さん。猫と暮らすことで大きく変わったこととはー。
ずっと猫と暮らしてみたかった
—猫と暮らしはじめたきっかけは?
「お付き合いしている彼女が猫を2匹飼っていて、彼女が“動物病院で里親募集している猫がいるよ”と教えてくれたんです。保護されたばかりの3ヶ月くらいの子猫でした。もう1匹サバ柄もいたのですが、会ってすぐこの子だなと。ゼリーという名前の由来は忌野清志郎さん(タイマーズ)からつけました」
—彼女が2匹飼っているのであれば、その猫たちと戯れる事もできると思いますが。
「彼女は関西に住んでいるのでそんなに頻繁に会えず、やっぱり自分でも飼いたいと思ったんですよね。僕自身、小さい頃からずっと猫を飼いたかったんですが、実家がお店をやっていたので飼えなくて。変わりに親戚の家にいる猫を可愛がったりしていました。ずっと猫との暮らしに憧れていたんです」
—猫に対してどんな魅力を感じていたのですか?
「ほっといて大丈夫だし、こちらもほっておいてくれる。その距離感ですかね。飼う前は大変かもしれないという不安もありましたが、実際は猫って意外なほど自立しています。たまに何かを訴えて、鳴いて甘えてくることもありますが、うちに来た時からいたずらもしないし、ゼリーはむしろいい子すぎるかもしれない。彼女の家の2匹と合わせる時も、喧嘩することもなく上手くやっています」
猫が孤独を埋めてくれる
—ゼリーさんは、どんな性格ですか?
「集中力がなくって、僕自身に似ています。何かやっていても、別のことが気になってキョロキョロしてしまう。あと“ニャーーー”って鳴く事も多いですね。正直、全部“ごはん”って言っているように聴こえるように鳴く時もあります(笑)。鳴かれたら、とりあえずカリカリをあげています。肉系のモノしか食べなくて、マグロとか魚系の缶詰には興味がないみたいです」
—おもちゃやキャットタワーなど猫グッズもたくさんありますね。
「つい買ってしまうんですよ。実は猫と暮らし始めるまでは、独り身の寂しさを埋めるために、怪獣のフィギュアやDVDを蒐集していたんです。ゼリーが来てからは、そのコレクション欲が猫グッズに変わりましたね」
—蒐集癖があるということは……もしかして、ちょっと依存型ですか?(笑)
「そうかもしれません。DVDとか、そんなに買わなくていいじゃんと思うのですが、ストレスが溜まると一気に買ってしまって。一度観た作品を何度も見返すタイプなので、DVDで持っていてもブルーレイで買い直したり。いまは猫グッズを見つけると買ってくるのですが、ゼリーは高いおもちゃにはあまり見向きしないんです。キャットタワーなんて、フィギュアを置くディスプレイ変わりになっていますからね」
—猫がいることで一番変わったことは?
「気持ちの面では大きいですね。お酒が飲めないので、外で発散することもできず。暗い人間なんで……。撮影現場でも猫の写真を見せたりしています。iPhoneで撮った動画を編集するアプリを教えてもらって、たくさん撮り溜めていて。アルバムも猫だらけです。たまに地方のロケで一人で泊まっている時とか、気配を感じてしまうんですよね。ドアが少し空いていたりとか、布団の重みだったり。結局、お互いが依存していると思うんですよ。ゼリーの誰もいない時の甘え方は、他人やほかの猫がいるときと全く違う。人前だとかっこつけているのかもしれません」
—それは村杉さんご自身の性格とも通じているのでしょうか?
「ああ、そうですね。自分がそういう性格だから、猫も同じに見えているのかも。阿部(サダヲ)くんも猫を飼っているのですが、彼は完全に犬派なんです。もともと犬が好きみたいで。だから僕とゼリーとの関係とは全く違います。僕が猫を飼うことになったら“気持ち悪い!”って言われました」
憧れは『ハリーとトント』
—猫以外に自分自身を投影していたことはありますか?
「仕事で役を演じる時、オタクっぽい役は自分自身の中にもあるのでやりやすいですね。舞台など長く役に入らないといけない場合は、映画などで見た近しい役をなぞることが多いです。後から、あの役はこの映画のコレなんだよっていっても、人には伝わらない。自分の中から投影するというよりは、サンプリング型なんです」
—オタクやちょっと怪しい役の印象が強いですが、意外なオファーが来たことはありますか?
「ストーカーとか殺される役が多いんですけど、でも最近は父親役や権力を持ったビジネスマンの役なども増えていて。ダサいポロシャツにズボンみたいな格好から、すごくオシャレなスーツを着せてもらうこともあります」
—どういった役柄が、一番好きですか?
「悪い人の役は面白いです。自分の中に嫌な面を持っているので、その引き出しを出せるので。そういう役は、コピーではなく自分を投影しているのかもしれません。そこに超能力やサイコなど、SFホラー要素があれば、なお得意です。グループ魂では素を出しているようで、実は台本があって真横に演出家がいる。正直、よそで一人でやっているほうがよっぽど楽です(笑)」
—好きな猫の本や映画はありますか?
「町田康さんはもともと好きなのですが、特に『猫にかまけて』はよく読んでいます。映画でいえば『ハリーとトント』。もう少し年をとったら、ハリーのような役をやりたいですね」