エッセイストとして活躍するしまおまほさんはご両親とともに、4歳になる雄猫・ケミと1匹の犬・マクと暮らしています。島尾家で生活をしながら外と室内を自由に出入りしているケミ。その暮らしぶりを取材しました。
家と近所を行き来する猫
—ケミさんとの出会いは?
「以前、ミケという猫を飼っていて23歳まで生きたんです。ミケが亡くなってから、別の猫を飼う気はなかったのですが、ミケが亡くなった2ヶ月後、たまたまうちに出入りしている植木屋さんが子猫を拾い、育てて欲しいと連れてきたのがケミでした。最初は小さくて華奢だったのですが、大人になるとしっかりした体つきに。鼻の柄がコアラみたいなんですよね」
—取材オファーした時に半野良だと伺い、もしかして当日家にいないかもと不安だったのですが、今日は雨だったので居てくれてよかったです。半野良というのはどういう状態なのですか?
「正確にいうと"3分の1野良"って感じです。人間と同じで、好きな時に出かけて、好きな時に帰ってきます。朝起きたらエサを食べて近所のパトロール、帰って来て寝て、ご飯食べて、夜また出かけて。また明け方戻ってきて自分のベッドで寝ています。出入りは専用のドアがあるんです。トイレはうちの庭にスペースがあって、そこで用を足しています。ミケも同じような飼い方でしたね。ミケは雌だったからか、わりとツンとしていましたが、ケミは甘えん坊。父親のことが大好きで、旅行などでしばらく居ないと猛烈に寂しがっています」
—そもそもしまおさんは猫好きだったのですか?
「そうですね。最初に飼ったのが猫だったので。小学生のときに、段ボールに捨てられている子猫を拾ったんです。5匹くらいいて、ほかの猫はもらわれていって、最後に残ったのがミケでした。当時は、祖母と母が猫嫌いで飼うのを反対されたんですが、どうしてもとお願いして飼い始めました。「動物は動物らしく」という父の方針で、ミケは外と家の出入りが自由になりました。マクは家にあげずに、庭にある犬小屋で飼っています。家にいるケミを、マクは庭から恨めしそうに見ていますね。ケミが甘えるものだから、父も猫にはちょっと甘いんですよね」
—犬と猫の違いは感じますか?
「全然違いますね。マクはもともと奄美大島で祖母が飼っていたのですが、7年前に祖母が亡くなったのでうちで引き取ることになりました。今14歳の雄です。猫しか飼ったことがなかったので、犬は散歩にいかなきゃいけないし面倒臭いかなと思っていたんですよね。あと『ドラえもん』でのび太がいっつも犬に追いかけられて、ちょっと怖いなって(笑)。でもいざ飼ってみると人懐っこくて猫とは違う愛らしさがありました。気分転換にもなるし、家の近所のことにも詳しくなって、散歩も苦じゃなかったです」
—猫を飼いだしてから発見したことは?
「小学生で猫を飼うまでは猫も一緒に散歩をできるのかなと思っていたのですが、全然できないし、素っ気ない。一人っ子だったので、人に構ってもらうのが当たり前だったけれど、ミケは全然相手にしてくれない。精神面で鍛えられましたね(笑)。抱っこもさせてくれないし、思いのままにならない。猫と一緒に寝てみたかったのですが、親にベッドには猫を絶対乗せてはいけないとしつけられて。そうなると誘っても絶対にベッドに乗らないんですよね。足元に潜り込んでくるとか、夢だったんですけど。でも家に、それぞれ違う生き物が居るっていうのは面白いですよね。意思疎通ができているようで、できていないし」
—猫は人間の言葉がわかっていないと?
「話しかけてはいますけど、わかっているような、いないような・・・。ケミはすごい寂しがり屋で、家で留守番させられるのを嫌がります。だから、奄美大島へ家族で旅行する時はケミもマクも連れて行くんです。マクにとっては里帰りですね。ケミは向こうでも外と中、出入り自由。ふらりと出かけていって、戻ってくる。言葉による意思の疎通があるかはわかりませんが、ケミは絶対に帰ってくるという信頼関係はできています。逆にミケは家を離れるのを嫌がったので、留守番専門でした。」
仲間として暮らす
—外にはキケンが多いので室内飼いのほうがいいと考える人もいれば、ずっと家に居るというのはストレスなんじゃないかと思う人もいますよね。
「外に出していたミケが23歳まで生きたので、ケミも大丈夫かなと。室内で健やかに育っている猫もいますし、外に出たがらない猫もいるので、それぞれだと思います。ケミはよく庭の木にも登ったりしていて、楽しそうですよ。たまに外から帰ってきて、ネズミを咥えて見せに来たりするのは、ちょっとビックリしますけど(笑)」
—しまおさんとケミの関係は?
「仲間ですね。たまにマクと散歩をしていると “ママとお散歩いいわね〜”とか言われるんですけど、“ママじゃねーし!”って。抵抗があるんですよねー、そういうの。向こうはよかれと思って言っているみたいなんですけど、うちはあくまで人間と犬というスタンスですね。猫に対しても同じ。猫としての人生(猫生)というか、それを尊重しながらお互い暮らすように心がけています」
—好きな猫本や漫画などありますか?
「ロシア映画の『こねこ』が好きです。漫画だと、伊藤潤二さんの『よん&むー』とか。実際は自分の家以外の猫ってあまり興味が持てないんですよね。前に猫カフェに行ったんですけど、全然萌えなかったんです。行く前まではすっごい楽しみだったのですが……。やっぱりケミが一番萌え〜ですね」
—しまおさん自身は猫っぽいと言われることが多いですか?
「自分では猫っぽいと思っていたのですが、目がギョロッとしているからか、チワワに似てるって言われたことがあって。猫がいいのに! と、微妙な気持ちになりました。マクも大きい猫みたいな感覚で飼っていますから。犬は賢いって言いますけど、ケミをみていると猫のほうが賢いなって思います。エサも自分で調節して食べるし、外に出ても帰ってくる。マクは出されればずっと食べ続けるし、一度綱を放してしまうと、戻ってこない。行方不明になったことが5回くらいあって。探しまわったら警察に保護されていたり、近所の庭にいたり。連れて帰って来た時、屋根の上からケミが呆れた顔で見てました(笑)」