京おばんざいのレストラン「青家」のオーナーであり、料理人としてテレビや雑誌などで活躍する青山有紀さんは、6歳になるアメリカンショートヘアのガルシアさんと暮らしています。猫と暮らし始めてから、身の回りに大きな変化が訪れたという青山さん。マーブル模様の美しいガルさんは、青山さんにとってどんな存在なのか、猫のために改装したというご自宅に伺いました。
突然変異の白っぽいアメリカンショートヘア
—ガルシアさんとの出会いは?
「ずっと白い猫を飼いたくて、里親募集のサイトなどなどで探していたんです。でもなかなかこれだと思う出会いがなくって。たまたま見つけたアメリカンショートヘアのブリーダーさんが、突然変異で白っぽい猫ができたと聞き見に行ってすぐに飼うことを決めました。ガルちゃんを飼ってからも、ほかに白い猫がいたら一緒にとも思っていたのですが、いまはガルちゃんだけで手一杯です」
—猫との暮らしは、すぐに慣れましたか?
「ガルちゃんは突然変異だったからか、産まれた時から身体が弱かったんですよね。ご飯もあまり食べないし、ヨボヨボしていて、子猫らしい可愛らしい感じが全然なくって。お腹に虫がいたりして、最初の頃はよく病院にも連れて行きました。でもうちにくるのは運命だなって思ったんです。猫を飼ったことがある人はみんなそうだと思うんですけど、一晩過ごしたら、もう虜になってしまった。早く帰るようになったし、もう彼氏もいらないし!って、すべてが猫中心の生活になりました。でも猫に夢中になって、すべての欲がなくなったら、ふっと現れた人と結婚したんです。そんなもんですよね(笑)」
—ガルさんが来るまでは、生活がまるで違ったのですか?
「31歳で姉がお店を開いてくれて、でも翌年に亡くなってしまい、急に私がオーナーシェフになったんです。その当時はあまりに忙しくって、正直ほとんど記憶がないんです。朝から夜中まで働いて、お店があるから友達にも全然会えないし、苦しいよーって。結局カラダを壊して、投げやりになりかけていた時に、こんだけ苦しい思いをしているなら、自分のしたいことをしようと思ったんです。一番したかったのが、猫と暮らすこと。だからガルちゃんがやって来てから、本当に変わりました。日々、幸せを感じています」
—仕事中心の生活に変化が訪れたと。
「そう、人間になったというか。仕事しかなかった当時は、自分が男か女かもわからない状態。外では女オーナーだからと、いろいろ厳しいことを言われたりもしましたしね。もう誰も信じられない!って、野犬みたいな時期もありました(笑)。このままだと心がボロボロになってしまうと感じ、変化を求めたのだと思います。猫を飼いだして、こんな安らぎがあるのかと、その日から人生が大きく変わりました」
ウンチをするのは生きている証
—猫が心の安定を連れてきてくれたのですね。
「身体も弱いし、絶対私がガルちゃんを守らなきゃいけない!と思っていたのですが、1週間もしたら、私のほうが守られているんだなって気づいたんです。お店を潰しちゃいけない、スタッフを育てなければいけないとか、こうしなきゃと思い込んで自分を苦しめていました。でも猫は、私のために何もしてくれないけど、そこに居るだけでこんなにも幸せにすることができる。本来、生き物ってそういう存在なはずですよね。でも小さい頃から、いい子でないといけない、何かをしてもらったら返さなきゃいけないという教育をされてきて、仕事をする上でも責任感からその思いから苦しんでいたのですが、もう生きているだけで素晴らしいじゃんて思えたんです。そこから自分にも優しくできるようになって。日々の生活を大事にしたり、余裕ができて人にも優しくなれた」
—何かをしてくれるわけではないのに、猫がいるだけで違うんですね。
「してくれないどころか、むしろモノを壊したりしますからね(笑)。大事なモノに限って割ったりするし。でも自分にとって、猫ほど最高な生き物ってほかにいない。犬も飼ったことがあるのですが、彼らは自分に夢中だから、答えてあげなきゃ! ってこちらも頑張らないといけない。猫はお互いに自分のペースで、関係性を築くことができるんです。もうウンチをしてくれるだけでありがたい。だってウンチをするってことは生きている証ですよね。ご飯を食べて、ウンチをする。そうやって今日も元気でいてくれるだけで、本当にありがたいなあって思うんです」
—ガルさんはどんな性格ですか?
「おとなしいですね。そんなにダラけることができるのかというくらい、ダラ〜っとくつろいでいます(笑)。抱っこしてもジーっとして、そのまま寝てしまったり。最初は病気がちだったのですが、いまは健康そのもの。食事は、目のアレルギーもちなので、病院で指定されるカリカリとささみをあげています。カリカリだけのほうが長生きすると聞いたのですが、杉本彩さんの飼っている猫が20歳を超えてもすごくキレイで。秘訣を聞いたら、手作りのご飯を毎日あげているとおっしゃっていたんです。私も食の仕事をしているので、心を込めてつくることは本当に大事だと思っているので、毎日ささみを蒸してあげることにしたんです」
—青山さんとガルさんの関係性は?
「運命の人という感じですかね。ガルちゃんは私のことをお母さんだと思っていると思います。旦那と遊んでいるとよく噛むんですが、私には全く噛まない。抱っこすると恍惚な表情をするし、甘えようとする。旦那さんには抱っこではなく、遊んでアピールをするから、違いをわかっているのかもしれません」
—言葉も理解していると思いますか?
「かわいいね〜って言う度に、じーっと私の目をみて、目を細めるんです。旦那との会話も全部聞いている。だから理解しているのかな。ちょっと喧嘩になりそうだなって時は、間に入ってかわいいポーズをしたり。具合の悪い時はそばにいてくれます」
一生、夢中にさせてくれる存在
—猫のためにご自宅を改装したのですか?
「はい。ここは猫のための部屋です。モルタルの床は肉球に優しそうな絨毯に張り替えました。吊るすキャットタワーも買ったのですが、全く乗ってくれないですね。ひとりで走り回ることが多いかも。こんど友人の愛猫コムタンに会いに行くのですが、猫によって性格が全然違いますよね。ガルちゃんは子どもが遊びにきて触られても嫌がらないし、本当に優しいんですよ」
—周りに猫好きな友達も多いですか?
「猫に対する気持ちってあんまり人に言っちゃいけないかなって思っていたんです。こんな毎日かわいい〜って思うのって、ちょっと変かなって。猫が好きって話しだすと、止まらないんですよね(笑)。でもコムタンの飼い主のメグちゃんが、猫への思いを話してもいいよって受け入れてくれて。ようやく、こうやって猫のことを話してもいいんだって思えるようになりました。でも猫グッズとかはあまり持っていなくって、料理の仕事をしているのと、あまり猫好きって前に出しちゃいけないと思っていたから。これからは増えていくかもしれませんけど(笑)。でも猫っていうより、今はガルちゃんが一番ですね」
—猫の一番の魅力は?
「わからない所ですね。すごい甘えていたと思ったら、急に機嫌が悪くなったり。興味ないふりをしていたのに、気づくと近くによっていたり。人間もそうですが、すべてを知ろうとしたり答えを求めすぎるのはよくないと思っていて。幸せから遠ざかってしまう。自分のことも、どんな性格かと聞かれたら、その時々によって全然違いますよね。それが、生き物のあるべき姿だと思うんです。猫のわからない魔性な所にハッとさせられる。恋人だって結婚して一緒に暮らしていたら大体わかりますよね。でも猫はわからない。一生、私を夢中にさせてくれる存在なんです」