靴下ブランド『MARCOMONDE』のデザイナー、角末有沙さんは、12歳になるジルさんと、6歳のジジさんの2匹の猫と暮らしています。長年、猫と暮らしてきた角末さんにとって、猫はすでに生活の一部だとか。なかなか出てきてくれないジジさんと対照的な、リラックスしたジルさん。2匹との暮らしについて伺いました。
猫と暮らして早12年
—ジルさん、ジジさんの2匹の猫たちとの出会いは?
「ジルは12年前、ブリーダーをやっていた知人が、猫たちを手放さなきゃいけなくなったと聞き、見に行ったんです。スコティッシュフォールドとアメリカンショートヘアのミックスだったのですが、ジルはスコティッシュのように耳が垂れていなくて、飼い主がなかなかみつからなかったんですよね。でもめちゃくちゃ可愛くて、迷わずうちで引き取ることにしました」
—では子猫の時に出会ったんですね。
「産まれてまだ数ヶ月でした。そこからずーっと一緒にいます。黒猫のジジは、千葉のシェルターで出会いました。友人で、BORONのデザイナーである桜井さん家が猫を飼いたいといって探していて、彼らがシェルターに見に行く時についていったんです。2匹目を飼うつもりはなかったのですが、帰り際にジジが切ない目で見てきて……。ああこの子は連れて帰ってあげなきゃと思い、連れて帰ることにしました」
—2匹の相性はどうでしたか?
「ジルはとても性格がいいので、すんなり馴染みました。もしジジが先だったら、上手く行かなかったと思います。6年ジジと暮らして、2匹になってまた6年。12年間ずっと猫と暮らしてきたので、猫はもう生活の一部ですね」
—どんな性格ですか?
「ジルは穏やか。しっぽがちょっとハゲているんです。最初は何か病気かもと思い、動物病院でみてもらったのですが、ホルモンのせいなのか……男性でも剃りこみみたいに毛が薄くなっている方がいるじゃないですか。そんな感じで、しっぽの根元だけ薄くなっています。もうハゲて8年になるので、わたしたちは見慣れてしまったのですが、初めて見る方はちょっとビックリしますよね(笑)。ジジにくらべても優しいし、子どもができてからも、ゆずるんですよ。大人です」
—ジジさんはいまも一瞬しか出てきてくれませんね。
「ジジは臆病で内弁慶。宅急便の人にもビビって絶対出てこないですからね。ジルとジジは親子みたいな関係です」
—お気に入りのおもちゃは?
「ジルはいま、靴下に夢中。洗濯物から靴下をみつけては、片足だけ咥えて持って行ってしまうんです。獲物か子どもを捉えた気になっているのかも。ちょうどいいサイズなんですよね。ジジはやらないから、きっと雄の習性なんでしょうね」
子どもと猫たちのいい関係
—2匹飼になって変わったことはありますか?
「生活に変化はあったと思うのですが、昔すぎてあまり思い出せないです。むしろ息子が産まれて、3匹いる状態になった感じ(笑)。ますますジルが大人になって気をつかってくれるようになりました。まだ赤ちゃんの頃、ベビーベットになるべく猫たちを近づけないようにしていたのですが、気づくとジルが一緒にベッドで寝ていたことも。でも絶対に爪はたてないし、見守っている感じ。すごくいい関係です。息子自身も、産まれてからずっと猫がいるから動物が大好き。猫たちの名前がジルとジジだからか、まだ言葉がはなせないのに、好きなモノには全部 “ジー” って言うんです」
—一説によると猫は2〜3歳児くらいの知能をもっていると言われますが、2匹の猫たちは言葉を理解していると思いますか?
「わかっていますね。でも気配なのかな。旅行の準備をしていると、トランクに入って邪魔をしますし。あとは夫婦げんかしているとき、かならず間にやってきて、私たちのことをみるんです。そうなるともう、話をやめるしかない。空気をあえて読まないことで、仲裁しにきているのかもしれません。とはいえ、最近はくだらない言い争いに呆れてしまったのか、途中でどっかいっちゃうこともありますけど(笑)」
—角末さんは、昔から猫が好きだったのですか?
「いえ、私はもともとすごく猫が好きだったわけではなく、なりゆきで一緒に暮らし始めただけ。でも、ジルがとても可愛いくて人懐っこかったので、いま猫を飼っている友人たちが猫を好きになるきっかけになったと思います。周りにも猫を飼っている人が多いんですよ。いまBORONの桜井さんは同じマンションにいて、彼らが飼っているウズラをたまに預かったり、私たちが旅行に行くときに面倒をみてもらっています」
猫とのクールな距離感
—ここ最近、猫ブームと言われて猫グッズも人気ですが、長年猫と暮らしているのに角末さんが手がける『MARCOMONDE』には猫モチーフがないですよね。
「つくろうと思ったことがないんです。猫たちは生活で、仕事はまた別。確かに作ったら売れそうですけど……。確かに『MARCOMONDE』のテキスタイルを使ったぬいぐるみ『BORON』も、猫はすぐに売れてしまいます。ほかの動物たちも可愛いのに(笑)。『MARCOMONDE』は毎シーズン、旅や国をテーマにしていて、初期の頃はトルコをテーマにしていました。トルコの人たちは猫をすごく大事にしていて、いたるところに野良猫もたくさんいて。だからそこで猫をモチーフにできたかもしれませんが……しなかったですね」
—たくさんの国を旅されていて、日本の猫と世界の猫の違いはありますか?
「かなり違いますね。暑い国は短毛で、サイズも小さい。マレーシアの猫も小さめで、野良猫がたくさんいました。スタッフに猫好きがいて、彼女はどこに行っても道中ずっと猫の写真を撮っています」
—角末さんはずっと猫を暮らしていますが、意外に猫との距離感はクールですよね。
「そうですね。実際、生活の一部すぎて、もう “私、猫を飼っているのー!”というアピールしたい気持ちが薄くって。私にとって猫は特別な生き物ではない。ジル、ジジっていう同居人がいるだけです」
—今後の『MARCOMONDE』の展開は?
「ブランドをはじめて来年で10周年。毎シーズン展示会はメンズ、レディースあわせて、東京、パリ、NYと全く休みなく続いていくので大変です。靴下が中心なので、多少ファッションのサイクルよりはちょっとラクかなとは思うんですけど。クリスマスシーズンには毎年、スパイラルでショップをやらせてもらっていますが、今後は10周年を区切りにしつつ、自分のお店もやりたいと考えています」