WEB音楽番組『MUSIC SHARE』を主宰する音楽家の本田みちよさんは、シロさんとクロさんという白黒の猫たちと暮らしています。ご主人である俳優の池内万作さんとともに、湯河原と東京の自宅を行き来しながら過ごす、兄弟猫たちとの楽しい日々について伺いました。
軒下で生まれた白黒の兄弟猫
—シロさん、クロさんとの出会いは?
「猫を飼いたいなと思っていた時、偶然、友人のおばあちゃん宅の軒下で子猫が生まれて。里親を探していると聞いて、うちで引き取ることにしました。子猫は全部で6匹いて、白黒のほかにも柄がある猫もいました。最初は黒猫1匹だけの予定だったのですが、子猫たちをみていたら可哀想だなって思って、シロも連れて帰りました」
—子猫たちがやってきて、どうでしたか?
「生まれたてだったので、親猫のもとに3ヶ月くらいいてから引き取ったんです。家にはすんなり馴染みました。私も主の(池内)万作さんも、湯河原と東京を行き来していて、置いてきぼりにするわけにもいかないので、いつも一緒に連れて移動しています。小さい頃からハーネスにも慣れているせいか、どこにいても平気みたいですね」
—2匹の性格の違いはありますか?
「シロは穏やかです。クロは猫らしいというか、ちょっと気分屋ですね。兄弟なのでめちゃくちゃ仲が良く、いつも一緒に寝て、じゃれ合って遊んでいます。シロはヒゲが短いのですが、クロがグルーミングをする時に噛んでしまっているようで……。長年この状態なので、大丈夫みたいです。2匹の関係性は、自由な妹の面倒をみる兄貴という感じでしょうか」
—病気や怪我をしたことは?
「一度、シロの背中におできみたいなモノができて、もしかして癌なのかも……と焦って病院にいったのですが、単なるニキビでした。ネットで調べれば調べるほど、癌かもしれないと思い込んでしまって。なんだニキビか〜って安心しました(笑)」
—本田さんは2匹の猫たちが来る前にも、猫と暮らしたことがあったのですか?
「以前、実家でスコティッシュフォールドの猫を飼っていました。4歳で、短命だったんです。家族はみんな落ち込んでしまって。だから実家はまだペットロスが抜けない感じですね。家を出てから一緒に暮らしたのは2匹が初めてです」
—犬でなく猫だった理由は?
「犬はどうしても人間に依存しますよね。でも猫は、人よりも、部屋に依存している。その自立している姿が好きで。だから、小さい頃からずっと猫派です」
—黒猫に興味をもったきっかけは?
「画家の竹久夢二が描く黒猫をみて、その妖艶なイメージにずっと憧れがあったんです。万作さんも、黒猫は人懐っこくていいらしいよ、とか、友だちが飼っている黒猫はみんなかわいいとか、そういう情報をどこからか得てきて(笑)。それで最初は、黒猫がいいなって思ったんですよね」
—実際に猫たちと暮らしてみて、気づいたことはありますか?
「意外に、猫ってうるさいんだなって(笑)。シロは特に要求が多いというか、毎日ニャーニャー話しかけてくるんです。かまってほしい、抱っこして欲しい。クロはそこまでアピールはしないのですが、前に飼っていた猫に比べると、けっこう甘えん坊たちだと思います」
—7年一緒に暮らしていて、一番大変だったことは?
「クロの去勢ですかね。病院から帰ってきて、しばらくしたら、自分でお腹をひっかいて抜糸してしまったんです。あわてて病院に戻りましたけど、開く直前で、危なかったですね……。昨日のことのように覚えています」
猫は独身男性がお好き !?
—こんなに人懐っこい猫さんたちは取材をしていて初めてです。2匹いたら、どちらかが隠れてしまうパターンも多いので。
「今日は東京なので、マンションからは外に出られないのですが、湯河原にいる時はハーネスをつけて庭で散歩したり、遊んでいます。脱走癖もあって、知らない間に夜中に脱走するんですけど、朝には何事もなかったように帰ってきて、ソファで寝ていますね」
—湯河原のご自宅周辺には、野良猫もいますか?
「庭によく2~3匹きています。喧嘩するかとおもいきや、シロはそのエリアのボスみたいで、みんなをまとめているんです。タヌキがきても、こんにちは〜って感じでみているだけ。おっとりしているようで、肝が座っています。あとシロは、モテない男の人がとにかく好きなんですよ。友人に40歳過ぎの独身男性が何人もいるのですが、必ず彼らの膝にすりよっていきます。しっかり家庭があって子どももいるような人には、全く興味を示さない。仲間だと思っているのかもしれません(笑)」
—2匹は人間の言葉を理解していると思いますか?
「どうでしょう。でもクロは、人間みたいに喋る時があるんですよ。あ、いま日本語を話したよね? って。ご飯を食べる時に“おいしい、おいしい”って言ったり。理解しているのかわかりませんが、私たちが話す音を真似しているのかもしれません。あとシロは歌が好きみたいで、家で録音作業をしていると、一緒に“にゃ〜〜ん”と一緒に鳴くんです。だから、デモテープには必ず猫の声が入っているねって言われます(笑)」
—どんな歌が好きなのでしょうか?
「やっぱり上手い人ですね。もちろん好みがあって、テレビでアイドルが歌っている歌には全く反応しないのですが、youtubeで海外のいい声の歌手を流すと“にぇ〜〜ん”と歌い出します。クロは全く歌わないので、不思議ですね。あとはバードウォッチング用の鳥の声のおもちゃに一番反応するかも。高い音のほうが、音域としては猫に心地がいいのかもしれませんね」
—本田さんが主宰するWEB音楽番組『MUSIC SHARE』はどんなきっかけでスタートしたのですか?
「観たい音楽番組がないなーと思っていて、周りに素敵な音楽をつくっている人たちがいるのですが、彼らがピックアップされるような番組があったらいいなと思い立ち上げました。最初は音楽配信サイト『OTOTOY』の会議室でスタートし、いまは青山にある『Red Bull Studios Tokyo』を拠点に、京都支局があります。6月には新潟支局がスタートする予定で、熱海と仙台でも準備中です」
—ご自身の新作の予定は?
「そろそろ、アルバムをつくらないとなんですよね。情けない話なのですが、自分が観たい音楽番組をつくっていると、好きなミュージシャンばかり呼ぶじゃないですか。そうなると、自分がやっている音楽なんて大したことないって思わされてしまって。ウクレレの世界チャンピオンや、音のスペシャリストたちを目の前にすると、圧倒されてしまうんです。でもようやく、今年はつくろうかなって思えるようになりました」
—猫がいるといいところは?
「癒やされますね。仕事から帰ってきて疲れている時も、にゃ〜んって擦り寄ってこられると、疲れが吹き飛びます(笑)。猫たちは、同居人という感じ。ここはもともと、万作が住んでいた家なのですが、そこに私がきて、猫たちがきて。転がり仲間みたいな感じですね」
—万作さんのお父さまである、伊丹十三監督も、猫好きとして『女たちよ!』などのエッセイに、猫とのエピソードを書かれていましたよね。
「確かに、万作もずっと小さい頃から家に猫がいたので、ふたり揃って完全なる猫派ですね。周りの友人たちも、猫好きが多い。犬も飼っている友人はいますが、あんまり悪くいいたくはないですが(笑)、どうしたって、根本的なところでは違うなって。求めていることが違うんですよね。人間の欲求を満たしているというか。猫好きは、猫たちに何も求めていないですからね」