麦藁飾り作家の岡部綾美さんは、もっふりとした毛並みの雄猫・ぐーぐーさんと暮らしています。雑誌『anan』の猫特集で、投稿写真のグランプリ“猫さま大賞”に輝いたこともある、ぐーぐーさん。取材時は、ちょうどサマーカットしてから冬毛に生え変わるというベストタイミング。まだ3歳というのが信じられないくらい貫禄のある姿に魅了されました。
個性的なブサカワ顔に一目惚れ
—ぐーぐーさんは、この貫禄でまだ3歳なんですね。
「顔がおじさんみたいなので間違われるのですが、まだ若者です(笑)」
—出会いは?
「犬猫たちの保護活動をしている〈ちばわん〉のサイトでみつけました。猫を飼いたいなと思ってからいろんなサイトや譲渡会に出かけていたのですが、なかなかピンとくる子がいなくて。カワイイなと思っても、すぐに募集が埋まってしまって、タイミングもあわず2年くらい探していました。そんな時、ぐーぐーの写真をみつけたんです。いまのようなふわふわな状態でなく、毛がほとんどなくって、なんだこの猫は! と。一目惚れでした」
—保護された時の状況はどうだったのですか?
「横浜の動物愛護センターで保護され、ちばわんにやってきたらしいです。野良猫だったから、毛が絡まりだんご状になっていたみたいで、毛を刈ってサマーカット状態でした。ヒマラヤン系のようなのですが、純血かどうかもわからないのですが、すごくカワイイと感じたんです」
—独特な風貌ですよね。不通の黒猫や白猫ではなく、ちょっとクセのある猫が好きなのですか?
「顔はちょっとつぶれ気味というか、岩っぽい感じが好きなんです(笑)。よくみるととてもキレイなんですよ。飼いだしてから、なんでこの猫なの? って家族に聞かれることもありましたけど」
—動物を飼ったことは?
「猫は初めてです。実家では犬のダックスフンドや亀、ハムスターを飼っていました。でも猫にずっと興味があって、東京にでてからできた友人がみんな猫を飼っていたのもあり、いいなって。あと、友人の旦那さんが『世界ネコ歩き』のディレクターをしていて、DVDを借りて観たり……。犬とはやっぱり違うなと感じ、猫と一緒に住みたいと考えるようになりました。それから、ペットOKな物件に引越し、準備ができたところで探し始めました」
—家にやってきた時はどんな様子でしたか?
「保護猫を引き取る時は、最初1週間くらいでてこないとか、クローゼットに隠れちゃうという話を聞いていたので心配していました。でも、着いてからすぐソファの下にササッと隠れたと思ったら、3時間程ででてきてくれて、一緒に遊ぶようになり、その夜には腕枕をして寝ていました」
猫飼いならではの情報交換術
—実は、雑誌『anan』の“猫さま大賞”でilove.catで審査員をさせていただいたのですが、その際にぐーぐーさんを観て、この猫さんは貫禄がすごいなと。
「賞をいただいて、びっくりしました。たまたまSNSで応募できるというのを知り何枚か写真を送ったのですが、すっかり忘れていて。雑誌が発売されて、大きく掲載いただきびっくりしました」
ーどんな性格ですか?
「気分にムラがあるんですよね。急に寄ってきたと思ったら、脈絡なくパンチをしてダーッと逃げたり(笑)。猫らしい気まぐれさに振り回されています。動きはスローで、どんくさいんですよね。棚にもあまり登れないし。唯一、おしっこハイになる時は走り回るのですが、基本的には日向でゴロゴロしています」
—病気になったことは?
「お腹が弱いのと、目ヤニが溜まりやすいですね。でも、病院に通うほどではないので、自宅で犬猫用のヨーグルトの粉末をあげています。しばらくあげていたら、ゆるいウンチが不通の硬さになりました。先日、どんこさんの飼い主の井上さんがぐーぐーに会いに来てくれたのですが、その時にもウンチ話になって。どんこさんは便秘らしく、コレが効くよ、とか情報交換をしました」
—賢そうな風貌ですが、言葉を理解したり、いたずらしたりは?
「あんまりないですね。人間のご飯に興味もないし、爪もソファで研がないです。飼いやすいタイプの猫なのかなと。言葉は通じていると思います。ウンチをした後、おしりの毛にちょっと付いちゃうんですね。それをなかなか取らせてくれなくて、ウンチした後に、少しだけカリカリをあげるように何度か訓練したら、ちゃんとおしりを拭きに来てくれるようになりました。たまにカリカリ欲しさに、あえてウンチを絞り出している時もあります(笑)」
—ご実家ではダックスフンドと暮らしていたようですが、犬と猫との違いはどういう部分に感じますか?
「犬はいつでも全力ですよね。愛情が強いというか、疲れている時はしんどくなるくらい(笑)。それに比べると、猫は本当に気まま。たまにしか膝に乗ってくれないし。面白いです。向こうの部屋で夫と盛り上がって笑っていると、廊下からじーっとこっちを見ていたり。なんだかんだいって、気になるんだなと。寂しいわけではないと思うのですが、覗きにくるのがおかしいんですよね」
繊細で美しい麦藁飾り
—麦藁飾りを作り始めたきっかけは?
「岡山に暮らす友人から、何か作って展示して欲しいいんだけど、と相談されたんです。突然でびっくりしたのですが、作ること自体は好きだったので、興味があった麦藁飾りを始めました。麦藁に糸を通して立体的な形に構成していくのですが、やり始めるとなかなか難しくてハマってしまいました」
—元々はフィンランドの飾りだそうですね?
「ヒンメリと呼ばれていて、冬の収穫祭の時に飾るモビールが一般的です。冬至に飾り、夏至に燃やすらしいです。でも私はヒンメリではなく、季節を問わない飾り物として手元に置いていただきたく、あえて“麦藁飾り”と言っています。そうすることで、ヒンメリの伝統にとらわれない自由な発想ができるんです」
—少し和風な雰囲気もありますよね。
「日本のインテリアにも馴染みますよ。最初はオーソドックスな星型などを作っていたのですが、最近はアレンジして、ダイヤ型など変わった形にも挑戦しています。11月に開催するグループ展では、ガラス作家さんのパーツをコラボレーションする予定です」
—すごく繊細なので、猫にやられてしまいそうではありますが……。
「壊れやすくって、何個ぐーぐーにやられたことか(笑)。だから、できた飾りは必ず、天井に吊るしています。いまは展示用に大きな飾りも作りますが、基本的には家に飾れるサイズのモノが多いです。段々と麦藁の色が変わってくるので、その変化も楽しんでほしいですね」