ファッションブランド「Made in COLKINIKHA」のデザイナーやモデル・ミュージシャンとしても活躍する酒井景都さんは、12歳になる雌猫・とんぼさんと暮らしています。幼い頃からずっと猫が身近にいたという酒井さんに、ちょっと変わった鳴き声をするとんぼさんの魅力について伺いました。
—とんぼさんとの出会いは?
「とんちゃん(とんぼ)は、旦那さんが飼っていた猫なんです。青山のプラダのお店近くに捨てられていて、衰弱しきっていたところを彼が拾い、動物病院に連れて行ったそうです。彼と結婚してから、そのまま猫も一緒に暮らすことになりました」
—とんぼさんは雌猫なわけで、酒井さんが新たな女性として旦那さんの家に来ると嫉妬されたりしませんでしたか?
「最初は、お互い距離をとっている感じでしたね。いつも目は合うんだけど『何この女?』って感じで(笑)。男の人が彼の家に来ると、すぐ膝の上に乗っていたらしいのですが、私には全然こなくって。だんだん私と彼が親しいことがわかってきて、徐々に打ち解けました」
—いまでは旦那さんよりも酒井さんのほうが、一緒にいる時間は長いですよね?
「そうですね。でも、とんちゃんは旦那さんのほうが好きみたい。彼がいないと、しょうがないから私に甘えるんですけど、彼が帰ってくると一目散にかけよっていきます。彼のほうが私より1.5倍くらい大きいので、膝に乗ると落ち着くのかもしれません」
—とんぼさんと暮らす前に、猫を飼っていたことは?
「幼い頃からずっと猫を飼っていました。ふわふわの毛をしたルイズという名前のペルシャとヒマラヤンのミックスです。おてんば娘だったルイズは家の外にもよく出掛けていて、近所の野良猫と結婚し子どもを4匹産みました。1匹は産まれてすぐ亡くなってしまったのですが、3匹はそれぞれ知人にもらわれていきました。また、犬と猫を同時に飼っていたこともあります」
ガーリーで乙女な猫
—とんぼさんはどんな性格ですか?
「猫やほかの動物も接したことがないので警戒心が強く、うちに来た人にはおそるおそる近づきます。運動神経もあまりよくなくて、高いところからボテッと落ちたり。ルイズはほかの猫と喧嘩したり、スズメをとってきたりと、やんちゃだったので対照的ですね」
—とんぼさんの鳴き声は、ゴロゴロというか、失礼ながら……イビキをかいているような変わった鳴き声ですね。
「気管支炎なのか、この声がデフォルトなんです。最初に連れて行った病院でも、喉がちょっと弱いといわれたみたい。たまに吐くこともあるのですが、今のところ日常生活には問題ないですね」
—お気に入りのおもちゃは?
「たまにプレゼントをいただいた時に、リボンで遊んだりはしますけど、基本的におもちゃは与えていません。いつもしっぽにじゃれてクルクル回転して遊んでいます。ルイズと暮らしていたときから、おもちゃを買ったことはないですね。友人で猫を飼っている人は、キャットタワーとかいろいろ買ってあげていますけど……。お気に入りといえば、白いプフが定位置です。いつもここに座っています。あとはお花が好きで、いただいたお花を活けると駆け寄ってきて、お花にチュッチュとしています。とんちゃんは、ちょっとガーリーな性格のかもしれません」
—ご飯とトイレのこだわりは?
「このお皿はバリで買ったもの。ご飯はフリスキーのカリカリ。トイレは洗面所に置いていて、砂粒が大きいユニチャームのデオトイレです。猫砂がどうしても散らばって、足に付いたりするのが嫌だったので、いろいろ試して大粒のものになりました。とんちゃんは、環境の変化によってストレスを感じることはないみたいです。引っ越しのときもすごく嬉しそうで、階段をのぼったり降りたり走り回っていました」
根強い人気の猫グッズ
—酒井さんが好きな猫グッズや本はありますか?
「リサ・ラーソンの置き物は結婚祝いでもらったものです。猫ブローチはアクビ、女優の本仮屋ユイカさんにいただきました。絵本だと『100万回生きたねこ』や漫画『きょうの猫村さん』が好きです」
—デザイナーとして猫モチーフを扱ったことはありますか?
「『魔女の宅急便』のキキが好きで、9年前くらいに『キキのマフラー』というベロアのアイテムを作ったことがあるのですが、すごく売れました。最近は猫アイテムがブームになっていますが、当時から猫ファンは沢山いたのだと思います。3年前には、とんちゃんのイラストを描いたTシャツを作ったことも。絵を描くときも猫を登場させることもあります。自分の本をリリースする時にサイン会があって、サインのほかに“猫と犬どっちがいいですか?”と聞いて絵を書くのですが、圧倒的に猫が多いですね」
—猫を描くときに気をつけていることは?
「女の子を描くときも同じなのですが、目がちょっと離れている顔が好きなんです。だから目が離れた猫を描きます。猫のアウトラインを描くときは、猫画像を検索して伸びをしているラインなど参考にすることもあります」
—これから猫モチーフが登場するアイテムを手がける予定は?
「ちょうど今、パジャマメーカーさんと立ち上げた新しいパジャマブランドで、猫柄のパジャマを作っているんです。ほかにも空柄と花柄があり、3月に伊勢丹新宿店で発売する予定です。自分で描いた猫のイラストを小さいパターンにしてもらったので、どんな人でも着られる猫柄だと思います」
言葉を使わない癒しの力
—ルイズさんが亡くなって、とんぼさんと暮らしはじめるまで10年以上、猫のいない暮らしをしていたわけですよね。猫を飼いたいと思ったことはなかったのですか?
「グレーの猫が飼いたいと思って、よくネットで里親募集サイトを見ていました。でも私は他力本願なのか、ルイズは親が飼っていたからで、とんちゃんは旦那さんが連れてきたからという。なんとなくの成り行きで一緒に暮らしている感じです。とはいえ、居なくなってしまったら、泣いてしまうと思います」
—犬と猫の両方と暮らしてみて、違いはありましたか?
「私は猫のほうが合っているかな。ほったらかしていても大丈夫だし、遊びたいときは来てくれる。それに、よく私自身が猫っぽいねと言われます。基本的に『束縛しないで!』というタイプ。束縛されると逃げてしまうけど、でもすごく甘えん坊です」
ー酒井さんにとって、猫はどういう存在ですか?
「帰って来たら必ず家に居て、何にも言わないけど癒してくれる。言葉を使わなくてできる相手への癒し具合がずるいなって思います。学ぶところが多いですね。猫になりたいとも思う。ひとつは、予定が詰まっていなくて楽しそうだから。もうひとつの理由は、恋愛しているとき、相手の飼い猫だったら絶対別れることがないなって。罪がなくて、ただ可愛くて癒してくれる。私も猫みたいな存在になれたらと思います」