interview

デザイナー・原研哉さんがディレクションするプロジェクト「犬のための建築」。犬の尺度で建築を捉えなおすことで、新たな建築の可能性を模索する本プロジェクトは、世界をリードする建築家・デザイナー13組が参加。彼らがデザインした「犬のための建築」作品は、サイト上でフリーダウンロードできる設計図と共に公開されています。なぜ犬なのか、そして「猫のための建築」はありえるのか。猫と暮らしたこともあるという原さんに本プロジェクトについて伺いました。 ー「犬のための建築展」はどのように思いつき、構想していたのですか? 「建築の新たな捉え方に興味がありARCHITECTURE FOR (    ).の括弧内に入るテーマを様々に考えていました。(swimming)も(sleeping)も面白そうでしたが、dogsはとても具体的で、地球に住む全ての人が知っている普遍的なテーマだと考え、このアイデアを温めてきました。発想したのは15年ほど前です」 〈ARCHITECTURE FOR LONG-BODIED-SHORT-LEGGED DOG by ATELIER BOW-WOW for DACHSHUND SMOOTH〉 ー原さんは今、犬と暮らしているのですか? 「今は旅や移動の多い生活なので飼っていません。小学1年生から高校の3年まで『チビ』という名のスピッツを飼っていました。性格のおっとりした賢い犬で、散歩はいつも僕がしていました」 〈BEAGLE HOUSE INTERACTIVE DOG HOUSE by MVRDV for BEAGLE〉 ー猫と暮らしたことはありますか? 「僕が実家の岡山を離れた後、父も亡くなってやや寂しくなった実家で、母と妹が猫を飼いはじめました。小さな三毛猫でしたがすぐに二匹の子を産んで、一匹は雄、一匹は雌でした。雄は一二年で、巣立っていきましたが、母と娘は仲睦まじく、その後二十数年間、仲よく実家で飼われていました。母は賢く、娘は甘えん坊で人なつこく。娘は二十二年生きた後、母より一年早く皆に抱かれて息を引き取りました。賢い母は、その一年後に、死期を悟ったのでしょう、どこかにいなくなりました」 〈ARCHITECTURE FOR THE BICHON FRISE by KAZUYO SEJIMA for BICHON FRISE〉 ー本プロジェクトに参加している建築家で、一番犬好きだと思う人は? 「伊東豊雄さんではないでしょうか。発想が極端で、ご自身の犬・ももちゃんに集中されていたように思います。また、ももちゃんは撮影モデルも勤めてくれて、ご家族との微笑ましい関係も目にしました」 〈MOBILE HOME FOR SHIBA by TOYO ITO for SHIBA〉 ー小説家やミュージシャンには猫好きが多いのですが、建築家は圧倒的に犬好きが多いですよね。なぜだと思いますか? 「分かりません。猫は、自身では飼われていると思っていないのではないでしょうか。そういう自由さが、明日をも知れない漂泊の日々を生きていくミュージシャンと相性がいいのかもしれません。一方では、垂直壁もものともせず上がり下りする猫の運動性は、建築家の感覚的な常識を逸脱しすぎた存在なのかも知れません。いずれも憶測に過ぎませんが」 〈WANMOCK by TORAFU ARCHITECTS for JACK RUSSELL TERRIER〉 ーこの企画をスタートしたことで、犬や建築に対する見方は変化しましたか? 「猫はおおむね同じような大きさですが、犬は実に多様です。セントバーナードやゴールデンレトリバーとトイプードルはまるで違う生き物で、飼い主同士の話も興味も合わない。したがって、犬の建築に普遍解はなく、犬への選択と集中が必要だと思いました」 〈NO DOG, NO LIFE! by SOU FUJIMOTO for BOSTON TERRIER〉 ー犬と人間は主従関係といわれますが、なぜ人は犬を必要とするのだと思いますか? 「犬の交配はほぼ完全に人間が支配し、その種のバリエーションも、人間が作ってきたものです。ですから人間と犬の関係は特別で、主従関係に近いものがあるかもしれません。しかし犬自身は、家族の中で自分のポジションを下から二番目と考えていると言われています。猫は勝手に生きていて、人間との関係も五分五分に見えます」 〈POINTED T by HARA DESIGN INSTITUTE for JAPANESE TERRIER〉 ー犬は人間の言葉を理解していると思いますか? 「完璧には理解していはないでしょう。きわめて限定された言葉の意味は理解していると思います」 ー犬と猫の一番の違いはどこでしょうか。 「猫はおおむね猫であるが、犬はそれぞれに犬である」 〈PARAMOUNT by KONSTANTIN GRCIC for TOY POODLE〉 ー犬になりたいですか? 「いいえ」 ー今後「猫のための建築」をやる予定は? 「今は考えていません。あまりに自由な『猫のための建築』は可能性があるでしょう。お考えがあれば教えてください」 ■ARCHITECTURE FOR DOGS 犬のための建築 http://architecturefordogs.com/ja/architectures/ ■ARCHITECTURE FOR DOGS 犬のための建築展 開示:2013年10月25日(金)~12月21日(土) 会場:TOTOギャラリー・間 http://www.toto.co.jp/gallerma/ex131025/

Dec 20, 2013

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絵本『くまとやまねこ』『はんなちゃんがめをさましたら』をはじめ、独特のタッチで動物や子どもの世界を描く絵本作家・酒井駒子さん。グレーの毛並みが美しいロシアンブルーのミツさん&コトさんと暮らしています。美人な猫さんたちとの出会いから、猫がもたらすものについて伺いました。

美しいグレーの猫

—ミツさん、コトさんとの出会いは?

「ずっと猫を飼いたくて、今の家に引っ越してきてからグレーの猫を探し始めたんです。たまたま見つけた四国のブリーダーの方に連れられ、4ヶ月のミツがやってきました。それから2年くらいたち、ミツのお母さんがまた子猫を産んだというのでコトを譲り受けることになりました」

ー“グレーの猫”に惹かれた理由は?

「吉行理恵さんの『小さな貴婦人』という小説に、グレーの猫のお話がでてくるんです。その物語とグレーという色が好きなので飼ってみたいなと。でも出会いがあれば、どんな猫でもよかったのかなと思います」

ー実際に猫と一緒に暮らし始めていかがでしたか?

「子どもの頃、犬を飼っていたのですが、犬の世話はほとんど親がやっていたので、動物とこんなに近く暮らすのは始めてでした。キレイ好きだし、トレイもきちんと覚えるし、賢いんだなって。主に、ご飯とおしっこと遊びについてですが、ちゃんと自分の主張を伝えるために話しかけてくる。猫ってこんなに自分のことをちゃんとできる動物なんだ! と驚きました。ミツは小さい頃はいらずらをしなかったのですが、大きくなってくるとテリトリーを意識しはじめて、自分の理屈に合わないことがあると、シャーッと言いながらパンチをするんです。たまに野良猫が窓の外をウロウロしていると、八つ当たりで私もパーンと叩かれたり(笑)。最初はなぜ殴られるのかわからなくてびっくりしたのですが、習性みたいですね。落ち着いたらケロッとしています」

ーミツさんはちょっとやんちゃな性格なのでしょうか。

「責任感が強いんですよね。コトともそんなにべったりと仲良しではないのですが、私がコトに目薬をさそうとしてコトが嫌がってニャーッと鳴いたら、慌ててミツが駆けつけてくるんです。また、私が家の者と喧嘩をして泣いていたら、側に来てニャーニャーと、どうしたの?と話しかけてきたり。自分がみんなを守っているという感覚なのかもしれません」

ーコトさんがやってきてから、ミツさんは変わったのでしょうか?

「コトがうちに来た時、ミツはすごく傷ついたような顔をしたように見えました。すぐ仲良くなるかなと思っていたのですが、コトがミツのお気に入りのクッションに座っているのを見てから2ヶ月くらい、その部屋に入らなかったんです。でも今は一緒に追いかけっこするくらいは、近くなりましたね」

ーコトさんの性格は?

「子どもっぽく、甘えん坊な性格です。でもうちに来た当初は大人しくじっとしていて、病院に連れて行ったら歯の病気だといわれたんです。薬で治療していたのですが、だんだんご飯を食べられなくなってしまったので、結局、歯を全部抜くという大手術をしました。歯を抜くなんて、本当にしてよいことなのかすごく迷ったのですが、あまりに辛そうで。結局、歯を抜いたら元気になって、性格もどんどん積極的になりました。猫は病院に行く時、それが元気になるためだとしても理解できないんですよね。だからストレスを与えてしまったかなと心配しましたが、結果として、手術をしてとても快活になったのでよかったです。いまはご飯も元気に食べています」

ー2匹の猫たちと酒井さんはどんな関係ですか?

「コトにとって私は母親。ミツも最初は母親だったはずですが、段々とヒエラルキーが変わってきて、対等な友人になり、最近は威張っていてミツのほうがお姉さんですね。ミツ、私、コトの順番。ミツと私でコトを守っているんです。地震があると、パッとミツと顔を見合わせてコトは大丈夫かなって探します」

猫と人が接する時

ー猫と一緒に暮らしていてよかったことは?

「猫といえど、人と一緒に暮らしているような感覚です。今までは、家の者が仕事で留守にしている時は、ひとりぼっちのように感じていましたが、猫がいると安心できる。その存在の大きさはとても計り知れない。みんなペットのことを家族だと言いますが、一緒に暮らしていると本当に家族になっていくんですよね」

ー絵本『くまとやまねこ』では、喪失がテーマになっていますよね。猫は人間よりも長く生きられないので、どうしても先のことを考えてしまう人も多いのかなと。

「猫たちが居なくなった時のことを考えると、どうなってしまうのだろうと不安になります。毎日一緒に寝て、一緒にご飯を食べているのでその喪失感を想像すると恐ろしい。まだ体験したことがないので、時々考えては震えています」

ー猫を描く時に気をつけている点はありますか?

「去年、猫が登場する『はんなちゃんがめをさましたら』という本を出しました。この本で一番描きたかったのが、猫がおしっこをしている所。真面目で哲学的な顔をするじゃないですか。その姿を描きたいなと。また伸びをしている姿だったり、美しい猫の形をできるだけ表現したいと思っています。ロシアンブルーは特に美しいなと思いますが、とはいえ猫を飼い始めるとちょっとブサいくな野良猫でも、猫自体が可愛く見えてくるんですよね。それは、猫と暮らして変わった部分だと思います。また猫は今自分にとって一番身近な生き物。ほかの動物を描く時も、動物の基本として猫があり、そこから想像し展開ていくことが多いですね」

ー猫に惹かれる理由は?

「自分とは全く違う存在だからでしょうか。私よりも猫のほうが賢い。人間と猫は違う種の生き物なのに、人間が悲しんでいると側によってきたり、小さい生き物をいたわったり。Youtubeで赤ちゃんをあやしている猫の動画をみると、本当に猫って優しいな賢いなって思います。また怪我をしている半野良猫を保護して病院に連れていったことがあるのですが、治療の時に興奮して私の手をガブッと噛もうとしたらハッと我に返り申し訳なさそうにすぐ止めて、なんてジェントルマンなのだろうと。自分の感情だけでなく、相手の気持ちを読むことができる。そういう人間との接点に触れると、とてもキレイな瞬間に出会ったような不思議な気持ちになります」

Nov 21, 2013

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「少年性」をキーワードに、東京コレクションなどでも注目されているメンズファッションブランド『Sise』のデザイナー・松井怔心さん。7歳になる雄猫・SOU(ソウ)と暮らしています。猫モチーフのファッションアイテムがブームになる昨今。ファッション・デザイナーが魅了される美しい猫との暮らしについて伺いました。

産まれた時から猫と暮らしていた

—猫と暮らすきっかけは?

「産まれた時から、すでに猫がいたんです。実家ではアメリカン・ショートヘアとラグドール、ヒマラヤン、ミックスなど5匹の猫を飼っていました。上京してからもやっぱり猫を飼いたいなと思っていたのですが、一人暮らしのワンルームでは狭いので、猫を飼うために妹と一緒に広い部屋を借りました。猫のためと思って借りた家が思いのほか広く、アトリエとしても使える部屋があったので、自分のブランドを立ち上げることになったんです。洋服を作るにはある程度のスペースがないとできないので、あの広さがなかったら自分で始めたいとは考えなかったかもしれません。猫がきっかけで、すべてがスタートしました」

ーSOUさんとの出会いは?

「ベンガルを飼いたいなと思って調べているうちに、ブリーダーさんをみつけて妹と会いにいったんです。普通のアメリカン・ショートヘアしかいなかったのですが、レッドタビーやブラウンタビーを探しているといったら、バックルームから抱っこされてSOUがでてきたんです。その姿があまりにも間抜けで(笑)、すぐに決めました。アメショーにしては変わった柄で、雄で去勢しているのに7歳になった今も太らず、ずっと子猫みたいな体型です」

ー一緒に暮らし始めて、ご自身に変化はありましたか?

「実家で猫を飼っていたとはいえ、ご飯やトイレなど母が面倒を見ていたわけですよね。病気になっても、病院へ連れて行くのは母がやっていた。でもSOUは、日々のご飯はもちろんワクチンや去勢など、全てを自分で世話してきました。手塩にかけるというか、たっぷりと愛情を注いでいます。だから、SOUが亡くなったら1年間は何もできないと思う。それくらい、居なくなってしまうことを考えると怖いですね。妹とはすでに別居しているのですが、彼女は黒猫を飼っています。産まれた時から猫と暮らしていると、猫がいない生活は考えられないですね」

ーSOUさんはどんな性格ですか?

「ものすごく甘えん坊です。もっと猫らしく、自由で気ままでいて欲しいいんだけど。朝はご飯で起こされて、帰ってきたらすぐ抱っこをせがむ。洗面台に行くと出掛けるとわかるのか、ニャーニャー鳴きます。遊ぶのも大好きで、猫じゃらしで跳んだり、走り回ったり。ご飯はサイエンスダイエットのカリカリ。コンビニで売っている安い缶詰が好きなんだけど、なるべくカリカリだけであとは鰹節を朝と夜の2回あげています。おやつもたまにあげますけど、基本的には食にあまり執着がないみたいですね。トイレはニャンとも清潔トイレ。爪研ぎは段ボールだとゴミが出るので、麻のタイプを使っています。高さが必要だなと思い7歳の誕生日プレゼントにキャットタワーをプレゼンしたんですけど……これは全く遊んでくれないですね」

イット・ガールならぬイット・キャット!

ーファッション・デザイナーと猫といえば、最近ではカール・ラガーフェルドが愛猫・シュペットに夢中で、キャラクター化するなど、まるでミューズ扱いされていますよね。松井さんとSOUさんは、どういう関係なのでしょうか?

「SOUは、ブランドを始めたきっかけになった猫。品番にも『SOU-0011』と名前が入っています。ものを作る上で、重要なキーになっている。イット・ガールならぬ、イット・キャットですね。SOUの由来は、僕の名前が“セイシン”なのとブランド名も“Sise(シセ)”でサ行の名前にしたく、また創造の“創”という意味も含めで名付けました。華奢で美しい姿は、ブランドイメージも体現していると思います」

ー最近はステラ・マッカートニーやミュウミュウなど、猫モチーフのファッションが数多く登場し、一過性のトレンドから定番になりつつありますよね。

「ロンドンのショーン・サムソンというブランドのキャットプリントTシャツは、かっこいいと思いました。メンズだと甘くなってしまうので、なかなか難しいですよね。猫は好きだけど、猫グッズには全く興味がなくって……。でも、いずれはSOUの柄をプリントにしてみたいと考えています」

ーSOUさんがいることで、お仕事にも影響を与えていますか?

「以前は自宅とオフィスが一緒だったので、モデルがフィッティングに来たり、打ち合せでたくさん人が出入りしていました。演出家チームやフィッティングチームなど、コレクション前は夜中まで作業しているので、SOUが癒しだったんですよね。平気で資料の上で寝ていたり、現場のピリピリした空気を和ませてくれた。だから、ブランドの運営がMARK-STYLERになってからは会社での打ち合わせが当然の事になるのですが、最初はSOUがいないことに違和感があって。逆にSOUも寂しいかもしれませんが。猫の自由で気ままなところは、仕事の場でも潤滑油になっていた気がします」

ー猫の一番の魅力は?

「造形的に美しく、フォルムの完成度が高いところ。また、普段は全くこないのに、ちょっと辛いことがあると近くによってくる。その付かず離れずな距離感は、人間関係に置き換えると勉強になります。近すぎると甘えてしまうし、遠くなると疎遠になってしまう。猫は、その距離感のとり方が上手いなと。どうすれば人に愛されるかを知っている。こちらが構いたくなるような、小悪魔的な駆け引きが自然にできるんですよね。人間にしたらすごく仕事ができると思います。見た目も美しく、みんなの空気を読んで、いるべき場所にいる。たまにフラりと居なくなったりしながらも、カリスマ性があって人を惹き付ける。わがままデザイナーみたいですが(笑)。とにかく猫は不思議な生き物だと思います」

Aug 30, 2013

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ファッションブランド「Made in COLKINIKHA」のデザイナーやモデル・ミュージシャンとしても活躍する酒井景都さんは、12歳になる雌猫・とんぼさんと暮らしています。幼い頃からずっと猫が身近にいたという酒井さんに、ちょっと変わった鳴き声をするとんぼさんの魅力について伺いました。

—とんぼさんとの出会いは?

「とんちゃん(とんぼ)は、旦那さんが飼っていた猫なんです。青山のプラダのお店近くに捨てられていて、衰弱しきっていたところを彼が拾い、動物病院に連れて行ったそうです。彼と結婚してから、そのまま猫も一緒に暮らすことになりました」

—とんぼさんは雌猫なわけで、酒井さんが新たな女性として旦那さんの家に来ると嫉妬されたりしませんでしたか?

「最初は、お互い距離をとっている感じでしたね。いつも目は合うんだけど『何この女?』って感じで(笑)。男の人が彼の家に来ると、すぐ膝の上に乗っていたらしいのですが、私には全然こなくって。だんだん私と彼が親しいことがわかってきて、徐々に打ち解けました」

—いまでは旦那さんよりも酒井さんのほうが、一緒にいる時間は長いですよね?

「そうですね。でも、とんちゃんは旦那さんのほうが好きみたい。彼がいないと、しょうがないから私に甘えるんですけど、彼が帰ってくると一目散にかけよっていきます。彼のほうが私より1.5倍くらい大きいので、膝に乗ると落ち着くのかもしれません」

—とんぼさんと暮らす前に、猫を飼っていたことは?

「幼い頃からずっと猫を飼っていました。ふわふわの毛をしたルイズという名前のペルシャとヒマラヤンのミックスです。おてんば娘だったルイズは家の外にもよく出掛けていて、近所の野良猫と結婚し子どもを4匹産みました。1匹は産まれてすぐ亡くなってしまったのですが、3匹はそれぞれ知人にもらわれていきました。また、犬と猫を同時に飼っていたこともあります」

ガーリーで乙女な猫

—とんぼさんはどんな性格ですか?

「猫やほかの動物も接したことがないので警戒心が強く、うちに来た人にはおそるおそる近づきます。運動神経もあまりよくなくて、高いところからボテッと落ちたり。ルイズはほかの猫と喧嘩したり、スズメをとってきたりと、やんちゃだったので対照的ですね」

—とんぼさんの鳴き声は、ゴロゴロというか、失礼ながら……イビキをかいているような変わった鳴き声ですね。

「気管支炎なのか、この声がデフォルトなんです。最初に連れて行った病院でも、喉がちょっと弱いといわれたみたい。たまに吐くこともあるのですが、今のところ日常生活には問題ないですね」

—お気に入りのおもちゃは?

「たまにプレゼントをいただいた時に、リボンで遊んだりはしますけど、基本的におもちゃは与えていません。いつもしっぽにじゃれてクルクル回転して遊んでいます。ルイズと暮らしていたときから、おもちゃを買ったことはないですね。友人で猫を飼っている人は、キャットタワーとかいろいろ買ってあげていますけど……。お気に入りといえば、白いプフが定位置です。いつもここに座っています。あとはお花が好きで、いただいたお花を活けると駆け寄ってきて、お花にチュッチュとしています。とんちゃんは、ちょっとガーリーな性格のかもしれません」

—ご飯とトイレのこだわりは?

「このお皿はバリで買ったもの。ご飯はフリスキーのカリカリ。トイレは洗面所に置いていて、砂粒が大きいユニチャームのデオトイレです。猫砂がどうしても散らばって、足に付いたりするのが嫌だったので、いろいろ試して大粒のものになりました。とんちゃんは、環境の変化によってストレスを感じることはないみたいです。引っ越しのときもすごく嬉しそうで、階段をのぼったり降りたり走り回っていました」

根強い人気の猫グッズ

—酒井さんが好きな猫グッズや本はありますか?

「リサ・ラーソンの置き物は結婚祝いでもらったものです。猫ブローチはアクビ、女優の本仮屋ユイカさんにいただきました。絵本だと『100万回生きたねこ』や漫画『きょうの猫村さん』が好きです」

—デザイナーとして猫モチーフを扱ったことはありますか?

「『魔女の宅急便』のキキが好きで、9年前くらいに『キキのマフラー』というベロアのアイテムを作ったことがあるのですが、すごく売れました。最近は猫アイテムがブームになっていますが、当時から猫ファンは沢山いたのだと思います。3年前には、とんちゃんのイラストを描いたTシャツを作ったことも。絵を描くときも猫を登場させることもあります。自分の本をリリースする時にサイン会があって、サインのほかに“猫と犬どっちがいいですか?”と聞いて絵を書くのですが、圧倒的に猫が多いですね」

—猫を描くときに気をつけていることは?

「女の子を描くときも同じなのですが、目がちょっと離れている顔が好きなんです。だから目が離れた猫を描きます。猫のアウトラインを描くときは、猫画像を検索して伸びをしているラインなど参考にすることもあります」

—これから猫モチーフが登場するアイテムを手がける予定は?

「ちょうど今、パジャマメーカーさんと立ち上げた新しいパジャマブランドで、猫柄のパジャマを作っているんです。ほかにも空柄と花柄があり、3月に伊勢丹新宿店で発売する予定です。自分で描いた猫のイラストを小さいパターンにしてもらったので、どんな人でも着られる猫柄だと思います」

言葉を使わない癒しの力

—ルイズさんが亡くなって、とんぼさんと暮らしはじめるまで10年以上、猫のいない暮らしをしていたわけですよね。猫を飼いたいと思ったことはなかったのですか?

「グレーの猫が飼いたいと思って、よくネットで里親募集サイトを見ていました。でも私は他力本願なのか、ルイズは親が飼っていたからで、とんちゃんは旦那さんが連れてきたからという。なんとなくの成り行きで一緒に暮らしている感じです。とはいえ、居なくなってしまったら、泣いてしまうと思います」

—犬と猫の両方と暮らしてみて、違いはありましたか?

「私は猫のほうが合っているかな。ほったらかしていても大丈夫だし、遊びたいときは来てくれる。それに、よく私自身が猫っぽいねと言われます。基本的に『束縛しないで!』というタイプ。束縛されると逃げてしまうけど、でもすごく甘えん坊です」

ー酒井さんにとって、猫はどういう存在ですか?

「帰って来たら必ず家に居て、何にも言わないけど癒してくれる。言葉を使わなくてできる相手への癒し具合がずるいなって思います。学ぶところが多いですね。猫になりたいとも思う。ひとつは、予定が詰まっていなくて楽しそうだから。もうひとつの理由は、恋愛しているとき、相手の飼い猫だったら絶対別れることがないなって。罪がなくて、ただ可愛くて癒してくれる。私も猫みたいな存在になれたらと思います」

Feb 7, 2013

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今日マチ子さんの愛猫ムームさんがお引っ越しをしたということで、取材に伺いました。 前回のインタビュー「「漫画家・今日マチ子 × ムーム — 人見知りな“お姫さま”」はこちら ムームさんは新しい家に到着してから、しばらくは慣れずに動き回っていたようですが、いまでは広くなった家の主としてすっかり自分の居場所をみつけていました。 走り回っても大丈夫なように、防音のじゅうたんを貼った仕事部屋には、お気に入りのかごが置かれています。朝5時になるとベッドから抜け出し、かごの中で二度寝をするのが習慣だとか。 かごの中にはilove.cat祭りの招き猫も。白猫の人形を自分の分身もしくは子どものようにかわいがるムーム。猫型のポットも気になっているようです。 夏にはひんやりとした大理石の上が定位置。以前の家よりも階数が低くなったので、窓から鳥を眺めることが最近の一番の楽しみだとか。冬毛でふんわりとしたムームさんの新居レポートでした。

Mar 22, 2012

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川崎市市民ミュージアムで開催中の『岩合光昭どうぶつ写真展』で催された、トークショウ「ネコの撮り方」をレポート。猫に対する愛情たっぷりの岩合さんが、猫の撮影方法の秘訣を教えてくれました。 猫とのコミュニケーションが大事 「沢山の動物を撮影していますが、僕が一番最初に作ったのは猫の写真集です。だから、猫についてはとても強い思いがあるんです。一般的に野良猫といっても地域によって、猫の表情や動き方は全く異なります。人が穏やかな場所では、猫も穏やかな表情をみせてくれます。特に坂道の多い場所では、人の動きがゆっくりとなるので、猫の動きもゆっくりしている。また、道が細く車が入れないような所は、道の真ん中に寝っころがってくつろいでいてますよね。そういうリラックスした猫たちは、“おはよう”と声をかけると、きちんと返事をしてくれるんです」 どんなカメラや機材が必要? 「携帯電話のカメラ機能で十分です。ただ、望遠レンズがないと猫に近づかないといけないので、外で撮影するには一眼レフを使うのはいいかもしれませんね。一緒に暮らしている場合は、大きなカメラを構えてしまうと嫌がってしまうので、普段からカメラが目につくような位置に置いておくことが必要です。カメラが怖くない物だと慣れさせてから、シャッターを押すといいですね。ストロボを室内で使うと猫の毛が毛羽立って見えてしまい、猫のソフトさがなくなってしまうので、ストロボは使わないほうがいいと思います。また三脚を使うと視線が高くなってしまうので、おすすめしません。僕が撮影する場合は、猫と同じ目線になって、ほとんどホフク前進のような格好になっています(笑)」 撮影は朝5時から! 「今くらい(4月〜5月)の季節だと、朝5時くらいから撮影を始めます。その時間に寝ていると猫の写真は撮れない。夜明けとともに外にでてください。夜型の人はそのまま寝ないで撮影に出かけるといいと思います(笑)。猫は夜行性と思われていますが、実際は人の動きに準じているので、人が動き出すと猫も動き始めます。人が起きて窓を開けると、猫は外に出る。最初に外にでると、まず立ち止まる。その立ち止まることがとても重要で、天気や風などを敏感に感じとり、一日の動きを決めているんです」 街中にいる猫との出会い方 「よく聞いて、よく見て、よく匂いを嗅ぐと、“猫を見る目”が研ぎすまされていきます。歩きながら五感をフル稼働させていると、路地を曲がった瞬間に猫の匂いがしたり、猫のいる場所がわかるようになるんです。そういう時は、人の目ではなく“猫の目”になっている。本来、人間も自然の生き物なので、空気や匂いを感じる能力をもっているんです」 オス猫とメス猫の違い 「動物全般にいえることですが、特に哺乳類は、オス・メスはもちろん、大人か子どもかということがとても大切です。野生動物に襲われるのは、やはり女性が多い。猫の場合は、オス猫に引っ掻かれることが僕は多いですね。実際、撮りやすいのはオス猫なんです。オスは暮らしに余裕があるというか、暇なんです(笑)。メスは子育てだったり、身の回りのことに集中しています。オスはパトロールをしているので、出会う確立も高い。暇だから、撮影に付き合ってくれるんですよ」 ナイーブな猫との距離のとり方 「猫と目が合い、ずっとこちらを見ているようなら、かなりこちらのことを気にしています。そういう時は、少し遠ざかったほうがいい。気にしている猫に近づこうとすると、“これ以上近づくな”という表情をしてますます距離ができてしまう。その表情に気づかずにまた一歩近づいてしまうと、サッと逃げてしまうんです。撮影する時は、その距離のとり方がとても大切です。近づける猫かどうかを、観察し見極めなければなりません」 猫の目線をこちらに向かせる方法は? 「猫によって、振り向かせかたは様々です。例えば夕暮れの暗くなっている時は、シャッタースピードが遅いので、猫が動くとブレてしまう。そういう時は“ハイ、息を吸って〜、止めて!”と、掛け声をかける。そのタイミングでシャッターを押します。語りかけると、猫にはきちんと伝わるんですよ。とはいえカメラ目線にこだわらず、猫に自由に動いてもらうほうが、いい表情が撮れます」 難易度高し!黒猫を撮るコツ 「黒猫は確かに難しいですね。ポイントは、表情を捉えるために、目をしっかりと写すことです。そして自分の目を信じて、黒猫の表情や毛の質感や一番よく見える所を探します。猫を動かすのではなく、自分がよく動いてその場所をみつける。そして、黒くベッタリと平になってしまわないように、立体的に見える光を選ぶことが必要。でも基本的に、黒猫は黒く撮るのがいいと思います。黒猫はいい猫ですよね。とても賢いし、僕は大好きです。猫は自分の毛の色をわかっていて、白猫と黒猫では太陽の光を吸収する量が異なるので、動き方も全く違います。黒猫は光が少ない場所で休むことが多いので、日陰を探すと見つかりやすいかもしれません」 より生き生きとした表情を撮るには? 「ブラッシングをしてあげましょう。健康状態がいいことはもちろん、目のゴミを取ってあげたり。モデルさんがお化粧をするように、猫も整えてあげるんです。メス猫であれば美人に撮ってあげたいですし、オス猫であれば凛々しい表情が見たいですよね。それが生き生きとした表情になる、大切なポイントです。よく黒目が大きい方が可愛いといいますが、僕はそんなに気にしていない。猫はどんな表情をしていても100パーセント可愛いんです(笑)。自分の既成概念で、猫をあてはめるのではなく、自分の見方を変えることが必要。カメラよりも人の目のほうが優れているので、自分の目を信じること。また、背景や光も重要です。猫ばかり見ていると、猫が何をしているかばかり気になってしまいます。写真になることを考え、自分でカメラを動かしながら、猫が一番立体的に見えるポイントを探すこと。より丸みを帯びたように見える光を探したり、影を利用するのもひとつの方法です。僕の場合は、猫と背景は半々の割合で考えて撮影しています」 人間は猫に飼われている!? 「猫と一緒に過ごしていると、あっという間に時間がすぎていきます。猫と暮らしている人は多いと思いますが、彼らは飼われているつもりはないと思います。犬は、主従関係をしっかりしてあげたほうがいいのですが、猫は全く違う。むしろ猫は、“人間を飼っている”と思っているかもしれません(笑)」 ポートレイト:2009年日本、田代島 ⓒ Hideko Iwago 岩合光昭(いわごう・みつあき) 1950年、東京都生まれ。動物写真家。80年木村伊兵衛賞受賞、85年に日本写真協会年度賞、講談社出版文化賞受賞。写真集に『おきて』『ホッキョクグマ』『ちょっとネコぼけ』など。 http://www.digitaliwago.com/ 『岩合光昭どうぶつ写真展』 動物物写真家・岩合光昭 40年の集大成「地球の宝石」シリーズに加え、地元神奈川の猫たち、初公開「よこはま動物園ズーラシア」の写真を展示。 日時:2011年4月16日〜6月26日 会場:川崎市市民ミュージアム 企画展示室1、アートギャラリー1・2 入場料:一般600円、学生・65歳以上400円、中学生以下 無料 http://www.kawasaki-museum.jp/

May 11, 2011

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“天才アラーキー"の名で知られる写真家・荒木経惟さんと愛猫チロ。妻・陽子さんの実家で生まれたチロが、荒木さんにもとにやってきたのは1988年3月のこと。それから22年。2010年3月2日、チロは最愛のパートナーである荒木さんによって看取られました。『愛しのチロ』から始まった、荒木さんとチロの“猫”写真人生。荒木さんの解説とともに、チロが登場する写真集を紹介します。 『愛しのチロ』(平凡社)945円  Amazon.co.jp 「チロちゃんはアタシのお股に座りながら、『吾輩は猫である』を読んでもらうのが好きでさ。女の子だから、おしっこをしている所を撮った時には、すごく嫌がってトイレでしなくなったりね。ヨーコが入院している時も一緒に帰りを待っていたんだよ。チロちゃんとふたりでさ、西の空をずーっと見ていたんだよね」 猫嫌いのアラーキーが、気がつけくとチロの魅力に夢中になっていた。捕まえたヤモリを自慢げに披露したり、バルコニーを走り回る、やんちゃなチロの姿を見ることができる。この写真集を一番楽しみにしていた妻・陽子さんは、残念ながら仕上がった本を見ることは出来なかった。 『センチメンタルな旅 冬の旅』(新潮社)3,150円  Amazon.co.jp 「チロちゃんとは、ヨーコより長い付き合いなんだよ。ヨーコが死んだ後、10年以上も一緒に過ごしたからね。ヨーコが寝てたベッドに、チロがちょんと座ってさ。女だねぇ」 愛妻・陽子さんとの新婚旅行の模様を収めた自費出版写真集『センチメンタルな旅』と、陽子さんが病に倒れ亡くなるまでの数ヶ月間を克明に収めた『冬の旅』。その2つの作品を再構成した写真集。陽子さんの不在を受け入れるアラーキーを、チロは静かに見守っていた。 『古希ノ写真』(タカ・イシイギャラリー刊)7,350円 ART iT ONLINE STORE 「ベランダで写真を撮っていると、足下にチロちゃんが来るんだよね。ベランダがアタシの楽園だったんだよ、チロちゃんがいたからね。朝シャワーを浴びる時、バスルームの扉をちょっと開けておくと、チロちゃんがついてくるんだよ。シャワーが終わるまで待っていて、終わったら桶に溜まった水を飲みにくるの。でも、今は居ない。今でも扉を開けているんだよ、もしかしたらチロちゃんが来るんじゃないか、ってね」 古希(70歳)を迎えたアラーキーが、愛猫チロの死の直後に作った写真集。大切な人を失うことで生まれた喪失感や孤独を抱え、過去を振り返りながらも、未来へと目を向けるアラーキー。尽きることのない、生への挑戦を感じることが出来る。 『センチメンタルな旅 春の旅』(RAT HOLE GALLERY)SOLD OUT Bueno! Books 「不在ということが、もっともっと膨らんで浮かんでくるんだよ。最初にチロちゃんが来た時のことだけどさ、猫が嫌いなアタシの所へ来て、ネコロリコロリしてたこととかね。居なくなると、色んなことをグワーって思い出すの。だから死ぬとさ、消えると、亡霊のようにその場所に浮かんでくるんだよ」 妻・陽子との最後の時間を捉えた写真集『センチメンタルな旅 冬の旅』から20年。再び愛する者を失ったアラーキーは、またしても最後の姿をカメラに収めた。『センチメンタルな旅 春の旅』はチロにとっての旅の終わりでもあり、始まりでもある。 『チロ愛死』(河出書房新社)1,575円 Amazon.co.jp 「横になってる時でも、チロちゃんはカメラを構えるとグゥーッてこっちを見るんだよね。目にチカラが入って、涙が溜まっててさ。こういうふうに、クルッと顔をこっちに向けたりね。こんなんで見つめられちゃあ…たまんないよね」 モノクローム一色だった『センチメンタルな旅 春の旅』とは異なり、チロの最後の姿をカラー写真で収めた写真集。生々しくも、愛に溢れた日々が詰まっている。偶然にも、インタビューした日は荒木さんの亡き妻、陽子さんの命日。チロの思い出話を語りながらも今を生きるアラーキーは、愛する者を失った悲しみを騙すために、写真を撮り続けているのかもしれない。

Mar 2, 2011

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言わずと知れた愛猫家の美術家・横尾忠則さん。昨年9月、横尾さんの愛猫タマさんが不慮の事故に遭い、瀕死の重傷を追ってしまいました。ところが横尾さんによる必死の看病と、18歳とは思えないタマさんの生命力により、死の淵から見事回復。その献身的な看病を讃え「世田谷区動物フェスティバル」から表彰されたニュースは、ネットでも話題になりました。そこで、タマさんとの出会いから猫の魅力について、横尾さんに語っていただきました。

自ら運命を切り開いたタマ

—タマさんとの出会いは? 「タマは元々、野良猫だったんです。以前に2匹の猫を飼っていたんだけど、亡くなってからはしばらく喪に服すために、猫は飼わないようにしていて。猫にも礼節があるじゃない。そう思ってたんだけど、ある日庭に目が悪くてひょろひょろしていて、あまり見かけない猫がいてさ。他の猫は呼んでも餌を食べに来ないんだけど、タマだけはふらふら〜とやってきてね。台所でうちのカミさんがご飯をあげたりして、いつの間にか家に居るようになったんだよ」 —では、タマの方から横尾さんに近づいて来たんですね。 「猫は自分で運命を切り開くの。家の周りには野良猫が沢山いて、タマよりももっと強そうな猫もいる。タマは目も悪いし、家に来なければどうなっていたかわからない。正直、飼うならもっと可愛い顔の猫を探したと思うけど(笑)」 —「タマ」という名前はどこから? 「家で飼いはじめてしばらくしたら、タマのお腹がポッコリ膨れてさ。“ああ、妊娠しちゃったよ、どうしよう“と思って、色んな知り合いに声をかけて里親になってくれる人を見つけたんだよ。でも、一向にタマのお腹の大きさが変わらないし、全然産まれなくって。しばらくして、ご飯の食べ過ぎで太っていたってことが判ったんだよね。妊娠じゃなかったの!(笑)。まるでダチョウの卵が入っているかのように膨らんでいたから、名前を『タマゴ』にしたんだ。でも“タマゴ!タマゴ!”って呼んでいると、近所の人に玉子を食べたくてカミさんに要求しているみたいで恥ずかしいじゃない。だから、『ゴ』をとって『タマ』にしたんだよね」

不慮の事故から、奇跡の生還を遂げたタマ

—タマさんが事故に遭われたのは、昨年の9月でしたよね。 「突然事故にあってね。メス猫だからテリトリーが狭くて、家の周り以外には出て行かない。だから、家の近くで多分バイクに跳ねられたか、誰かに蹴られたのかはわからないんだけど…這うようにして家に帰ってきたの。外からは傷は見えなかったんだけど、今まで聞いた事のないような声で鳴いていたから、慌ててうちのカミさんが病院に連れて行ったんだよね。そしたら獣医は“瀕死の状態でもうダメだろう。内臓が肺まで上がっていて、今晩一日持つかどうかわかりません”と。手術をするかと聞かれて、イチかバチかやってもらうことになってね。お腹を切って内蔵を元に戻して、まるで“神の手”に見えたよ(笑)。それから、毎日家族で見舞いに行って、徐々に徐々に元気になったの」 ーきっと、タマさんの生命力がとても強かったのですね。 「病院でも優等生でさ、入院していたのは2週間くらいだったけど、看護婦さんにもなついていたみたい。そしたら突然、『世田谷区動物フェスティバル』から表彰状が届いてさ。病院から熱心に看病しているっていうことで、推薦してくれたみたいなんだけど。最初は冗談かと思ったら(笑)、世田谷区長さんからだったので驚いたよ」 —退院してから、タマさんに変化はありましたか? 「人なつっこくなったかな。朝、顔を洗う時も一緒についてきたり、トイレ入る時にもついてきてね。トイレに行くなんて、いちいち猫に言わないのにさ(笑)。必ずついてきて、お尻を叩いてってせがむんだよね。どこに行けば、好きな“お尻叩き”をしてくれるか、常にアンテナを立てているんだよ」 —普段のタマさんはどんな性格ですか? 「24時間寝っぱなし。起きているのは1時間くらいしかないんじゃないかな。だから、写真撮っても寝てる写真しか採れない(笑)。僕がベッドでくつろいでいると、曲げた片足の上に必ず乗ってくるの。一緒にテレビを見ているのかなと思ったら、目をつぶっていて。猫は動くモノが好きなのに、テレビには全然興味がないみたい。冬は寒いから、外に出たがらないしね。今はずっと引き出しの中で寝てるよ。タマは人間でいうと80歳くらいだからね。僕とどっちが先に行くかなって考えてる(笑)。タマはあと10年生きるとは思えないし、僕自身も10年は無いと思ってるから、今いい競争をしているよ」

自由奔放な猫は芸術家 !?

—横尾さんは、アンディ・ウォーホルが描いた猫の絵本『
Cat,Cat,Cat』の監修をされていましたよね。また『猫のいるY字路』や『魔除け猫』など、作品の中にも猫が登場することもあります。絵を描く時、猫からインスパイアされることはありますか? 「ないねぇ(笑)。猫を絵に描くと、絵が幼くなってしまうんだよね。今は子どもっぽい絵が流行っているじゃない? 幼児っぽい絵はブームだけど、そうはしたくない。ピリッとした緊張感がないとね。猫の生き方や態度は、とても勉強になるけど」 —タマさんが入院している時、ご自身のブログに「ぼくは猫のタマを教育できなかったが、タマはぼくを教育した」と書かれていました。 「それはね、猫という生き物は、いい意味でわがままで“自己に忠実”なの。人間は結構、妥協しちゃうじゃない。自分の思いに忠実でなかったり、妥協してしまうことは、社会の中で行きて行くには必要な時もあるんだけど。猫は一切、妥協しないんだよね。だから“猫は芸術家のあるべき姿”だと考えるわけ。昔、子猫がいたずらをするから、ゴミ箱にポイッって入れたらしばらく出てこない。それでどうしたものかとゴミ箱を見てみると、中で紙くずとか引っ掻き回して遊んでいるの。猫は、どんな状況に置かれても遊べる自由さを持っている。人間も“どんな状況に置かれても遊んでやる!”という自由さを持っているべきなんだよね。そういう意味で、僕は猫に教育されているんだよ」

タマ photo by 横尾忠則

横尾忠則(よこお・ただのり) 美術家。兵庫県生まれ。パリのカルティエ現代美術財団での個展など海外での発表が多く、近年は東京都現代美術館 、金沢21世紀美術館、国立国際美術館など美術館での個展を毎年開催。絵画、写真、小説等々、ジャンルを超え幅広い芸術活動を展開する。近著に泉鏡花文学賞を受賞した小説「ぶるうらんど」、「ポルト・リガトの館」「猫背の目線」など。今年は岡山県立美術館(6/1~7/10)、高知県立美術館(7/17~9/25)で個展を開催、また「ヨコハマトリエンナーレ2011」(8/6~11/6)に出品する。 http://www.tadanoriyokoo.com

Feb 18, 2011

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