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ilove.catのドメイン「.cat」はスペインの自治州・カタルーニャ(Catalunya)文化コミュニティのための、スポンサードトップレベルドメイン(sTLD)です。「.cat」ドメインを通しカタルーニャの文化を広めていくため、カタルーニャにまつわるトピックスをご紹介します。
《カタルーニャ(Catalunya)の旗》
スペイン北東部に位置する、スペインの自治州・
カタルーニャ(Catalunya)。その中心都市はバルセロナです。バルセロナといえば、アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)の「サグラダ・ファミリア(Sagrada Familia)」や、サッカーの「FCバルセロナ(Futbol Club Barcelona)」、世界一予約が取れないと言われるレストラン「エル・ブジ(El Bulli)」などで知られる街。ガウディだけでなく、14歳の時にバルセロナに移り住み少年期をバルセロナで過ごたというパブロ・ピカソ(Pablo Picasso)や、サルバドール・ダリ(Salvador Dali)、ジョアン・ミロ(Joan Miro)など、カタルーニャは数々の芸術家を生み出した街でもあります。
《Dali Atomicus by Philippe Halsman - 1948 》
カタルーニャ出身のダリといえば、猫と写った自身の肖像写真が有名です。LIFE 誌に掲載されたこの肖像写真は、1948年に写真家フィリップ・ハルスマンによりNYで撮影されました。
《Dali Atomicus by Philippe Halsman - 1948 》
左端の椅子はハルスマンの妻が空中で支え、カウントを3まで数えた瞬間に助手たちがネコと水をフレームに投げ込み、4を数えた瞬間にダリがジャンプ。タイミングを合わせること28回、6時間をかけて最高の瞬間を写真に収める事ができたそうです。CG合成などなかった時代に、超アナログな方法で撮影された貴重な写真。ダリの表情や猫たちの動きなど、躍動感に溢れています。
「Dali's Mustache」Philippe Halsman
「Philippe Halsman's Jump Book」Philippe Halsman
■関西カタルーニャセンター
Center Catala de Kansai http://home.att.ne.jp/banana/cck/
■カタルーニャ州政府
Generalitat de Catalunya http://www.gencat.cat/
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11歳になるスコティッシュフォールドの雌猫・ミツバさん。どんこさん宅に出入りし、その気品あふれるシャー!姿が気になっている方も多いのではないでしょうか。取材時は、なかなか出てきてくれないかなと思っていたものの、カメラマンにもシャーを言わず、すっかりくつろいだ姿を披露。ミツバさんと犬のブックさんと暮らす、飼い主の鈴木則彦さん、有紀子さんにお話を伺いました。
—ミツバさんとの出会いは?
鈴木則彦(以下、則彦さん)「学生時代から、半野良猫と暮らしていたんです。東京に出てきてからも、ずっと猫と暮らしたいと思っていて、ふらりとペットショップをのぞいたらミツバがいたんです。一目惚れでした。ミツバを飼いだした10年くらい前は、どちらかというと犬のほうが人気で、ペットショップにもあまり猫はいなかったんですよね。一目惚れとはいえ、衝動的に飼ってしまってはよくないと思い、1週間後にまた行って、まだ残っていたら飼おうと。そして残っていたので、うちにやってくることになったんです。スコティッシュは性格がおだやかっていわれたのですが、全然当てはまらないタイプでしたね。結局は個々の性格なんですよね。2年くらいしてミツバが家に慣れた頃、トイプードルのブックがきました」
〈ミツバ〉
〈ブック〉
鈴木有紀子さん(以下、有紀子さん)「ミツバもブックも雌で、この家は女3人に男がひとり。女が強い家なんですよ(笑)」
則彦さん「ブックはぜんぜん猫おじしなくって、遊んで遊んでとミツバについてまわっていました。ミツバにとってブックは、妹みたいな存在なのかなと」
有紀子さん「そもそも種族が違うから、べったりくっついていることはないですね。でも鼻をツンツンしたり、一緒に並んでいたりまします。性格は陰陽で対照的。ミツバが陰、ブックが陽です」
—ブックさんは散歩に行くと思うのですが、ミツバさんも一緒に行きたい! といった素振りをみせることはありますか?
有紀子さん「ブックと3人ででかけると、帰ってきたらミツバは、じとーって見てきますね。ブックを抱いていると、見てないふりをしながら、視線を感じます」
則彦さん「ミツバを抱いていると、ブックはかまって!かまって!と言ってくる。猫と犬で、甘え方が正反対なのは面白いですね」
有紀子さん「結婚前、ミツバは則彦さんのベッドで寝ていたんですよね。でもそこに私が割り込んできたので、最初の頃、ミツバは“はぁ〜!?”って感じで(笑)。完全に嫌われていました」
則彦さん「でもずっと家にいるのは有紀子なので、ご飯をくれる人だと認識したら、すぐに懐いちゃって。コロッと寝返りました(笑)」
—有紀子さんは猫と暮らしたことはあったのですか?
有紀子さん「ずっと金魚とか、頬ずりできない生き物としか暮らしていなかったんです。だから、いきなり存在感のある2匹と暮らすことになって、最初は大変かなと思いました。でも一緒に暮らしていると、やっぱり素朴に可愛いなと思います。猫と犬の両方と暮らしていて面白いのは、ミツバはほっておいて欲しくて、ブックはかまってほしい。こちらが疲れているときはミツバの距離感が楽だし、暇なときはブックのほうが遊んでくれて楽しい。その差がはっきりしていますね」
—ananの猫特集にも登場していましたが、ミツバさんはどんこさん宅にも出入りしていますよね。
有紀子さん「もともと彼らが猫を飼う前から友人だったのですが、どんこを飼いだしてから、猫の話ばかりするようになりました。実は石田衣良さんの小説『愛がいない部屋』の文庫版の表紙になっているんですよ。これは写真がどんこの飼い主の井上(佐由紀)さん、ブックデザインが小春ちゃんの飼い主の名久井直子さん。ふたりとも、猫を飼う前の仕事です」
則彦さん「長期で旅行にいく時に、ブックはペットホテルに預けるのですが、ミツバは以前預けたらすごくストレスだったようで、どんこ宅にお願いすることにしたんです。2〜3日だったら自動給餌器でいいかなと思っていたのですが、どんこ宅だと、地震や何かあった時にすぐ無事か確認できますからね」
有紀子さん「どんこが特別な猫だと思うのですが、ミツバはクローゼットに隠れつつも、仲良くやっているようで。たまにシャーって猫パンチは出すものの、他の猫だったらもっと大変だったと思います。ご飯も食べるし、トイレもどこでもやるタイプ。神経質なようで、意外に図々しいんです(笑)」
—おしゃれな猫グッズの情報はどこから?
有紀子さん「どんこと暮らしている外山さんが詳しいので、主に彼から聞いていますね。あとは、ウズラの飼い主であり人形作家の友人がつくるBORONや猫用テントcatstudyhouseとか。みんな口コミで紹介したりしています」
則彦さん「テントは目隠しになるから、気に入っていますね。ブックはミツバのしっぽが好きみたいで、手出しをするんですけど、本棚にミツバスペースを作ってからは届かないからか、ずっと棚にいますね」
—ミツバさんは、言葉は理解していると思いますか?
有紀子さん「“ごはん”は理解していますね。でも言葉というより、気配で察知しているのかも。旅行の準備をしていると、スーツケースに入って邪魔してきますからね」
則彦さん「そういえば、たまにブックが猫みたいな鳴き声をするんです。ワンワンと吠えないで、ニャンニャ〜と……。人間が居ない時に、ミツバと会話しているのかもしれません(笑)」
有紀子さん「どんこ宅に預けると、猫たちがみんなよくしゃべるようになったりすると言いますよね。でもミツバはコミュニケーションをとろうとあまりしない。シェルター出身の猫たちは、社会性があるというか、生存本能のために、他の猫や人間ともコミュニケーションしようとする。他の猫たちをみていると、その違いを感じます」
【ミツバさん情報はこちら】
鈴木則彦さんのinstagram
https://instagram.com/booknori
鈴木有紀子さんのinstagram
https://instagram.com/umelon_instagram
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お座布団の上にどっしりと構える雄猫・くまおさん。頼りがいのありそうな風貌にもかかわらず、完全なビビリ性で、そのギャップにファンが急増しています。Instagramでくまおとの日々を投稿している、飼い主の“くまお母”こと鎌田さん(http://instagram.com/kumaokamako/)に話を伺いました。
—くまおさんとの出会いは?
「1年前くらい前に、くまお父(夫)が里親募集サイトでみつけました。実は、16年間、ミウさんというロシアンブルーの雌猫を飼っていたんです。ずっと2人と1匹で暮らしていたのですが、昨年11月に亡くなって。夏くらいから調子が悪かったのですが、ちょうどそのタイミングで夫が関西へ単身赴任することになり、病院を変えるのも引っ越しも負担をかけてしまうかなと思い、夫とは別々に暮らしながら、私がひとりで看取りました。顎の癌だったので食べ物も飲み込めないし……。最後には目も見えず、耳も聞こえず、私の膝の上で旅立ちました。それから、もう猫を飼うことなんて無理だと思っていました。でも、猫がいなくなり、完全にひとり暮らしをすることになって、ちょっと鬱気味になってしまって。そんな時、夫にミロコマチコさんの記事(https://ilovedotcat.com/ja/9115)を教えてもらって。ミロコさんも猫を失った悲しみは10年経っても変わらないって言っているし、だから、いま猫を飼える環境にあるんだから1匹でも里親探しをしている猫を救ってあげられるのではないか、と思い直して。そこから、里親募集サイトで猫を探し始めました」
—そして出会ったのがくまおさんだったと。
「サイトでひと目みて気になって、『湘南鎌倉猫ほっとさぽーと』に問い合わせたら、すぐにお見合いを、と言われて、鎌倉まで会いに行ったんです。見た瞬間、この子だ! って決めました。前に飼っていたロシアンブルーと姿形は全く違いますが、逆に、同じような見た目で雌猫だったら無理だったと思います。くまおはゲージの中で、ずっとシャーシャー言っていたのですが、その怖がっている姿も愛おしかったです」
—家にはすぐ馴染んだのですか?
「1週間はずっとソファーの下に隠れて、全く出てきませんでした。ごはんも、1口も食べていなくて。そろそろ限界かなと思っていたら、夜中にちょろちょろ〜っと低姿勢で食べに出てきたんです。すぐ戻ってしまったのですが、だんだんとソファーから出る時間が増えていき、ある日突然、お座布団の上にちょこんと座っていて。1ヶ月くらいかかりましたが、ようやく慣れてくれたみたいです」
—インスタでよく見るお座布団は、くまおさんのモノだったのですか!?
「いえ、最初は人間用だったのですが、ちょこんと座るもので、くまお専用になりました。自分の居場所だと思ったのだと思います。その哀愁ただよう姿(http://instagram.com/p/vsizi1xOVo/?modal=true)を“くまおじさんスタイル”って呼んでいます(笑)」
—保護される前、くまおさんはどこにいたのでしょうか?
「鎌倉の里山にいたらしいんです。山で保護されてから戻そうとしたら、脱腸(ヘルニア)がわかったんです。それで、人間に飼われたほうがいいと、里親募集することになったようで。それまで、人と暮らしたことはなかったはずなのに、トイレなどもすぐに覚えました」
—でも今日の撮影でも、やはりちょっと逃げ腰ですよね。
「性格は穏やかなのですが、ものすごく慎重なんです。心を開くまで、時間がかかるタイプ。先週、ラグをひいたのですが、全く乗らなくて(笑)。乗っていいかどうか、しばらく観察して、自分で判断してOKだったら乗る。ごはんもカリカリをお皿に乗せて、しばらくしてから食べるんです。野良猫時代の、危機管理能力かもしれません」
—前に暮らしていたミウさんとくまおさんの違いはありますか?
「ミウさんは雌猫だったので、夫に懐いていて。明らかに私に敵対心があって、私はただごはんを運んでくる愛人のような関係でした。くまおは、ザ・雄猫っていう感じもしないのですが、私たち夫婦にとっては息子のような感覚ですね」
—こういっては何ですが……くまおさんは、意外に小さいですよね。
「そうなんです。写真だと8キロ超え?って言われることもあるのですが、5キロしかありません。カラダも脂肪じゃなくて、筋肉。ガチムチなんですよ(笑)。背中が凝っているかなと思ってマッサージをしていたら、舌を出すようになって(http://instagram.com/p/u62Jz8xObo/?modal=true)、ポリポリスイッチって呼んでいます」
—くまおさんと暮らすことになって、一番変わったことは?
「私が明るくなった、ですね(笑)。instagramで猫と暮らしている方とつながるようになって、どんこさん(https://ilovedotcat.com/ja/6209)たちとも交流させてもらって。くまおがきっかけになって、また人とも交流が増えた。本当に猫がもたらしてくれたご縁だと思います」
■くまお母のinstagram
http://instagram.com/kumaokamako/
■くまお父のinstagram
http://instagram.com/kumaomaru/
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猫好きとして知られるミュージシャン・坂本美雨さんが、愛猫・サバ美との生活を綴った書籍「ネコの吸い方」を発売。“ネコ吸い”を自称する坂本さんに共感し、私も“ネコ吸い”です!という愛猫家たちが続々と増えているとか。サバ美との出会いから、自身にも大きな変化が訪れたという坂本さんとサバ美さんに会いにいきました。
—書籍「ネコの吸い方」をつくるきかっけは?
「3年くらい前に、ツイッターで“ネコはお吸い物です”ってつぶやいたら、ものすごい反応があって、“ネコ吸い”を自称し始めたんです。その頃、サバ美の写真集をつくりませんか? というお声がけをいただいたんですが、別の方から、『ネコ吸の吸い方』というタイトルで、マニュアルも含めたフォトエッセイ集を出しましょうと申し出があって、それでいこうと!決めました。でも書いている途中で、筆が止まってしまったんですよね。担当さんは急がなくていいよと言ってくれたのですが、なかなか上手くまとめられずに、しばらく悩んでいました。そうこうしているうちに、自分の人生に大きな出会いがあって、生活やサバ美との関係も変わっていって。この大きな変化は、ネコが連れてきてくれたこと。今だったら、ネコと一緒に変化していく人生やそこから広がったつながりのことを伝えられるかなと思って一気に書き上げました」
—2011年にilove.catで取材させていただいた際には(記事はこちら https://ilovedotcat.com/ja/1332 )、ひとり暮らしで猫を飼うことに不安があるというお話をされていました。そこからご結婚をされて、どんな変化があったのでしょうか。
「友人たちにも、ここ数年で、すごく変わったねって言われます。私はずっと、幼い頃から、自分の感情をみせることが恥ずかしかったんです。でも、最初にサバ美が心をバーンと開いてくれたから、こちらも開くことができた。同じように、人に対しても、開いていいんだよって教えてもらったんです。自分はこういう人間だってことを開きなおったら、唄うことにも抵抗がなくなりました。サバ美が、突っかかっていたネジを外してくれたんです」
—以前のインタビュー時では、これから出会い旦那様が猫アレルギーだったらどうしようともおっしゃっていましたよね。
「実は、オットは猫アレルギーだと判明しました(笑)。今のところなんとかやっていけてます。でも食事療法とか、免疫をあげておくとか、引き続き一緒に乗り越えなきゃいけないですね〜。でも、最初から準備ができている人なんていないし、本当に、人生は何が起こるかわからない。これからも、どうなるかなんてわからないです。怖いものだらけ。音楽では“絶対大丈夫”って唄っていますが、そういう言霊が必要なくらい、人一倍不安なんでしょうね。でも、サバ美やオットと出会い、一緒に乗り越えていくぞっていう覚悟ができたんです」
—音楽をつくるときと、本を書くときの違いはありましたか?
「歌詞はどう受け取ってもらってもいいというか、あえてふり幅を持たせることもあります。1曲ですべての状況を説明するわけではないので。でも今回の本は、状況を絶対にきちんと伝えたいってキモチがあって、ネコ親戚たちやミグノンなど、実在する人や動物たちがでてくるから、誤解があってはいけない。震災があってからは、被災動物のことなども刻々と状況が変わっていたし、自分にとってもその方たちにとっても大事なことすぎて、なかなか筆が進まなかったんです」
—本の中には石黒亜矢子さん(https://ilovedotcat.com/ja/9286)のイラストや対談も掲載されていますよね。
「石黒さんはツイッターをきっかけに、いまでは家族ぐるみの付き合いをさせてもらっています。漫画の中では、サバ美を熟女キャラとしていじってくださっていて。ツイッターに載せていない、私が入院した時に描いてくださった漫画も掲載しています。お互いのネコをいじりあう関係(笑)っていうのも、ネコを通したネコミュニケーションとして面白いなって思います」
—本に登場する"オット”こと、旦那様は編集者ですが、本をつくるにあたりアドバイスはあったのですか?
「なかったですね。だいぶ経ってから“面白かった”とは言ってくれましたけど(笑)。読んでくださった方からは、“オットに出会ってサバ美がネコになった”という箇所に共感したという反応が多くてびっくりしました。この独特な感覚は、私だけのものかなと思っていたので。私はあまりに近い存在としてサバ美を見ているので、ちょっと距離のあるオットがいることで、よりサバ美との関係も俯瞰して感じられる。オットは面白い造形物として見ている感じもします。私の愛情がトゥーマッチなのは自覚していたのですが、オットというクッションがあるので、サバ美自身は、愛されすぎるプレッシャーからは少し開放されたかなと。時にはネコらしく、生きやすくなったんじゃないかなって、今は思います」
「ネコの吸い方」(幻冬舎)坂本美雨 amazon.co.jp
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心理学のひとつである行動分析学を学び、キャットインストラクターとして動物病院や猫カフェでのセミナーをしている坂崎清歌さん(http://happycat222.com)。猫と人が互いに快適に暮らすためのトレーニングのひとつ、クリッカートレーニングについて伺いました。
―坂崎さんが主宰する「猫とのコミュニケーション教室」ではどういったことが学べるのでしょうか?
「私は猫には特別なしつけは必要ないと思っています。猫は適切な環境を用意してあげるだけで、上手に室内で暮らすことのできる動物です。よって、Happy Catでは“猫に健康で楽しく快適に暮らしてもらうために飼い主として何ができるか”という視点から、必要な知識を教えています。猫と上手にコミュニケーションを取るためには“猫の学習の仕組み”を知る必要があります。例えば“適切な環境”の“環境”には、飼い主のことも含まれます。猫に対する飼い主の適切な行動や反応が、猫の暮らしを快適なものにしていくのです。“猫に何かをさせる”のではなく、人間が“猫と暮らすために勉強する教室”と思っていただければいいと思います。そもそも教室を開くきかっけは、たまたま知ったクリッカートレーニングを、にゃんまるが気に入ってくれたことからスタートしました。〈クリッカートレーニング〉という名称ですが、いってみれば猫と楽しむゲームです。猫にとってこんなに楽しいゲームなら、多くの猫にこの楽しさを体験させてあげたいと思い、勉強を始めたんです」
〈メインクーンのだいきち〉
〈茶トラのちゃあ〉
〈キジ白のにゃんまる〉
〈黒猫のピコ〉
―クリッカートレーニングというのはあまり聞き慣れない言葉ですよね。どこで知ったのですか?
「たまたま本屋さんで『猫のクリッカートレーニング』という本を手にしたんです。1960年代にカレン・プライアという人が開発したトレーニング法を、行動分析学の杉山尚子先生が翻訳した本。その本には難しい専門用語などは一切なく、学習心理学や行動分析学を知らなくても簡単に読むことができ、すぐにクリッカーゲームを始められました。読み終わった次の日に始めて、すぐに私もにゃんまるもクリッカーゲームに魅了されました」
『猫のクリッカートレーニング』
〈クリッカー〉とよばれる道具
トレーニングに使うおやつ。カリカリを半分にしたもの。
―行動分析学には以前から興味があったのですか?
「11年前、飼っていた猫を病気で亡くした時、“自分の知識不足だったのではないか、もっとしてあげられることがあったのではないか”と、とても後悔したんです。猫について勉強できる場は当時も少なかったのですが、オープンスクールや猫の講座など、見つけたものはどんどん受講しました。その中で猫の写真講座も受講したのですが、写真を撮ることでより一層猫の行動を観察するようになり、それがその後のクリッカーゲームに活かされたと思っています。クリッカーゲームのコツはとにかく猫を観察することですから。クリッカーゲームをうちの猫たちと楽しむようになってまもなく、本を一冊読んだだけの自己流ではなく、もっと猫を楽しませてあげるためにちゃんと勉強したい!と思うようになりました。でも猫のクリッカーを教えてくれるところはいくら調べても見つけられなく……。仕方なく、犬のクリッカーの講座を受講し勉強を始めました。そこでクリッカートレーニングは行動分析学がもとになっていると初めて知り、行動分析学の本を読むようになりました。その後、縁あって杉山尚子先生に行動分析学を教えていただく機会を得て、自分でも教室を開くようになったんです」
―クリッカートレーニングは、具体的にどんなことをするのでしょうか?
「クリッカートレーニングは、ゲームとして猫と人が一緒に楽しめるものです。一般的にはトリック=いわゆる“芸”と呼ばれるようなことを猫に教えることができます。ですが、これは結果であって目的ではありません。例えば“お手”を教えるとします。猫が“お手”をしてくれたらとても可愛いですよね。でもこの“お手”ができるようになったことは可愛いだけではなく、前足を触られることが大丈夫になる、というトレーニング的な意味合いを持っています。前足を触られる→爪をにゅっと出される、と段階的にトレーニングを進めていくことで、爪切りされるのが大丈夫な猫、になっていきます。そのためには、まずは猫と一緒にクリッカートレーニングをゲームとして楽しみながら、人もトレーニングの腕を磨く必要があるわけです」
―食いしん坊の猫だと、ご飯をくれくれというアピールをすごくしますよね。ニャーニャーと鳴く姿に負けないようにと思っていても、ついついあげてしまうのですが……。
「そんな時こそまさにパズルフィーダーやクリッカーゲームがお勧めです。今はこちらの望んでいない行動=ニャーニャー鳴くことで猫は食べ物を得てしまっている状況ですよね? そうではなく、猫がこちらの望んでいる行動をしたら猫の望みを叶えます。“ニャーニャー鳴いても食べ物は出てこないけど、自分が何か頑張ることで食べ物が手に入る”と猫に教えるわけです。それがたとえどんな簡単なことでも、既にいつもしているようなことでも、できるだけ褒めて望みを叶えてあげる。猫に変わって欲しいなら、まず人間側が変わらないといけないんですよ」
〈パズルフィーダー〉
―深いですね。人間同士にもあてはまりますね。
「猫を変えようとするのではなく、自分自身の行動を変えれば、猫の行動も変わっていきます。例えば噛み癖のある猫がいたとして、噛んでから怒っても意味がない。噛むという失敗行動をさせている時点で、それは飼い主の失敗なんです。もしかまって欲しいから噛んでいた場合、噛んだことを怒ってもそれは猫を喜ばせていることになります。だから、そもそも噛ませないようにすることが大切。噛んでいない時にこそ、かまってあげてください。そうすれば、猫に“噛む”以外の行動で自分の望みが叶うことを教えてあげることができるんです。ダメな行動を怒っても、その行動をやめさせる事は一時的にしか出来ません。それよりもどんな些細なことでも褒めてあげることが必要です」
―褒めるというのは?
「一般的に褒めるというと“いい子だね”などの言葉をかけることかもしれませんが、猫にはそれでは通じません。トレーニングでいう“褒める”というのは、行動を増やすこと。自分が望んでいる行動が増えていなければ、それは褒めたことがきちんと伝わっていないということになります。例えば、猫がお手をした時に“よくやったね~”と撫でたとします。でもその猫がもし撫でられることを望んでいなかったら? 望んでいない、もしかしたらイヤかもしれない“ナデナデ”
のためにもう一度お手をしようとは思わないでしょう。“褒める”ことができるようになるためには、猫が本当に望んでいることを観察する必要があります。もちろん、おやつより撫でられるほうが好きな猫もいるわけで、食べ物をあげればいいなどという簡単なことではありません。一概にこのやり方をすればいいという方法があるわけではなく、とにかくその子の望みを叶えられるように観察することが大切です」
―猫の望みを叶えるということで言えば、室内飼いだとキケンなことは少ないと思いつつ、猫にとっての楽しみがあまりなく、ストレスになっているかもと思う時があります。
「室内飼育による退屈の軽減、という側面からもクリッカーゲームは非常に有効です。猫に楽しく過ごしてもらうためには、猫の狩猟本能をいかに満足させられるかに着目する必要があります。“自分が何かをしたら獲物(食べ物またはオモチャ)をゲットすることができる”と、感じることのできる遊びが猫には必要なんです。例えば、ご飯を食べるためにブロックをずらして遊ぶパズルフィーダーなどを使うのもよいですね。犬は破壊する危険もあるので市販品が良いですが、猫は手近にある箱やプラスチック容器などいろいろなものを使って簡単にパズルフィーダーを作ってあげることもできます。長時間家を空ける時に、いくつかパズルフィーダーを設置しておくと退屈を軽減してあげられるのでお勧めです」
―トレーニングをすることで得られる一番のよい点は?
「しっかりした関係性が構築できることです。いわゆる信頼関係ですね。よく信頼関係があるからトレーニングができると思われるのですが、トレーニングをすることで信頼関係ができあがるんです。自分の行動を褒めてくれたり、認めてくれる相手には好意を持ちますよね? そして好意があるから何かやってあげたいと思うようになる。これはどちらか一方のことではないんです。猫も人間側の行動を強化しているんですよ。自分が教えたことを猫が上手にやってくれたとしたら、それは褒められているのと同じ。“あなたの教え方が良かった、だからできるよ”という猫からのメッセージです。猫に認めてもらえたということ。こうやってお互いに認め合いながら関係を築いていくことで信頼関係はできあがっていくわけです」
―猫の“しつけ”というと主従関係が必要に感じますが、そうではなくお互いの信頼関係を築くためにトレーニングが効果的なんですね。
「トレーニングというと難しくとらえる方もいるかもしれませんが、猫との新しいコミュニケーション方法として、また猫と楽しむゲームとして、クリッカートレーニングを猫との生活に取り入れて欲しいです。問題行動があるからトレーニングをするのではなく、猫が楽しんでくれるから一緒にトレーニングを楽しむ。その結果、人間から見た時に問題だと思われていた行動も改善されていく。それが私の目指すトレーニングなのです」
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2011年3月11日におこった東日本大震災から3年。ilove.catでは、福島県動物救護本部による警戒区域内に残された犬や猫を保護する施設「三春シェルター」を取材してきました。いまだ飼い主がみつからない100匹近くもの猫たちが、新たな飼い主さんを募集しています。シェルター設立から関わっている渡邊獣医師は「ウイルスキャリアや高齢な個体の管理頭数が多いことによる譲渡の停滞。そしてその猫たちを、譲渡をすすめることでの心の葛藤」といった課題があると言います。また震災後3年目を迎え、当初の目的である飼い主さんを探すことよりも、今は新しい飼主を求めているとのこと。そして新たに猫を飼うことができなくても、ボランティアとしてシェルターでお手伝いすることもできます。人だけでなく、動物たちにも大きな変化を与えたあの日の震災。ilove.catでは1匹でも多く、新たな飼い主さんが見つかるように引き続き取材します。
(追記:2015年12月25日、すべての犬猫の飼い主や里親がみつかり、三春シェルターは閉鎖されました)
■第一弾レポート
https://ilovedotcat.com/ja/6944
■第二弾レポート
https://ilovedotcat.com/ja/7318
■第三弾レポート
https://ilovedotcat.com/ja/7596
■第四弾レポート
https://ilovedotcat.com/8514
(追記:2014年9月末で緊急避難的収容施設としての業務が終了しました。撮影させていただいた猫54匹はすべて譲渡されました。ご協力いただいた皆様、そして里親になってくださった皆様、ありがとうございました)
こもり
メス、雑種、3歳
問い合わせ番号:20279
名前のとおり、いつもベッドの中にこもっているおとなしい子です。人に対する警戒心はさほどなく、体のどこを触っても怒りません。なでるとゴロゴロと喉をならします。抱っこも得意ではないけれどさせてくれます。ベッドの中がお気に入り。でもご飯の時間になると、ささっとベッドから出てきて、今か今かとご飯を待っています。
ケンゾー
オス、雑種、6歳
問い合わせ番号:20427
薄いグレーにベージュが混じった美しい毛色で、顔が小さくイケメンです。ただ、右下の犬歯がないという秘密を持っています。とても活発で食欲旺盛。他の猫ともケンカをせず上手に付き合えます。まだ抱っこは苦手ですが、ご飯に夢中になっている時は触らせてくれます。人見知りなところもありますが、とても魅力的な猫です。
トンボ
オス、雑種、3歳
問い合わせ番号:20343
大きな音には敏感で人見知りなので、急に近づいたりすると驚いて逃げてしまうこともあります。でも慣れている人には体を触らせてくれるようになってきました。機嫌が良い時は、自分から膝の上に登ってきてくれます。猫同士では仲良く遊ぶことができ、とても活発で元気な男の子です。話しかけると目を細めながらこちらを見つめ、とても小さく可愛い声で返事をしてくれることも。遊ぶ時にはとてもやんちゃで、他の猫を追いかけたり、おもちゃを相手に猫キックをしたり。いつでも本気モードで楽しそうに遊んでいます。
ミケ
メス、雑種、6歳
問い合わせ番号:20001
とてもパワフルで遊ぶことが大好きな女の子。猫じゃらしを見ると、機敏な動きで追いかけてきます。猫じゃらしが好き過ぎて、おもちゃを持っている人を見ると付きまとうこともしばしば。以前は人が近づくとすぐに逃げてしまうことが多かったけれど、最近では慣れた人には自分から近づいて来てくれたり、体を触らせてくれます。なでると甘えスイッチが入り、ゴロンと横になり大きな音で喉を鳴らしてくれることもあります。
ハイジ
メス、雑種、2歳
問い合わせ先:20441
とても遊び好きで、活発な女の子です。普段は自分からすり寄ってくることはありませんが、ご飯の時間になると「ニャー」と鳴いて足元にスリスリしてきます。食欲が旺盛で、ご飯はあっという間に完食。センター分けの前髪と鼻の黒模様がチャームポイントです。
ピーチ
メス、雑種、2歳
問い合わせ番号:20450
まだ触ることはできませんが、少しずつ距離を縮めてきています。座っているとさりげなく寄ってきてくれますが、一定の距離を保ったまま。おもちゃで遊ぶことが好きで、小柄ながら活発です。もっと人に慣れてもらい、甘えを覚えさせてあげたい。
たびと
オス、雑種、5歳
問い合わせ番号:20325 FIV(+)
短い手足とポテっとした大きな体をしているので、たぬきみたいな雰囲気をした猫。もともとはかなりの怖がりで人を寄せ付けなかったけれど、今では人にくっついているのが大好き。おっとりした性格で甘え上手。初対面のボランティアさんにも、自分からすり寄って甘えることもあります。
ツネキチ
オス、雑種、3歳
問い合わせ番号:20319 FIV(+)
とても元気で、食欲旺盛な男の子。すらりと長いしっぽに、綺麗なハチワレ柄、そして鼻の脇には愛らしい二つのほくろ。まだ抱っこは苦手ですが、甘えたがりで必死にスリスリをしてきて存在をアピールしてきます。ふわふわと柔らかい毛並みをしています。
ミント
メス、雑種、4歳
問い合わせ番号:20468 FIV(+)
グリーンの大きな目がチャームポイント。シェルターに来た頃は、シャーと威嚇をして触ることすらできなかったけれど、今では名前を呼ぶと返事をしてくれるほど穏やかに。お腹を撫でると、甘えモードになり、ゴロンゴロンと寝転がってアピールしてきます。
出川
オス、雑種、6歳
問い合わせ番号:20249 FIV(+)
とても特徴のある面白い声をしている出川くん。ご飯の時には、この個性的な声で鳴いてアピールをしてきます。甘えたがりで、掃除中のスタッフの足元やほうきの目の前で横になり「掃除なんかより僕をかまってよ!」と見つめてきます。
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2013年9月に東京大学駒場キャンパスで行われたSYNAPSE Classroom vol.2「ネコとヒトの( ) -Love Metamorphose-」。ネコ研究の第一人者である齋藤慈子先生(東京大学教養学部統合自然科学科講師)を迎え、ネコに関する実験や心理について学びしました。ゲストにはネコ好きの映像作家・山口崇司さん、アーティスト・Houxo Queさん、Webプロデューサー・西村真里子さんが参加。ヒトとネコの不思議な関係性について、齋藤先生のレクチャーを振り返ります。
「私が学部生の頃は、DNAの配列を調べて生物がどのように進化してきたのかを調べる研究が盛んでした。でもDNAは目に見えないので、できるだけ目に見える形で研究ができないかと考えたんです。つまり、動物の行動を観察することで進化の過程を研究できるのではないかと。行動生態学という分野のに近い比較認知科学という分野で、簡単に言えば動物の心理の研究です。ヒトを含めた、動物の心の動きを観察し、それを系統分析するのが1つめの目的です。
生物の進化において、はじまりからどんどん分岐していくことで、系統樹が描けます。ヒトに最も近い種はチンパンジーですが、両者に共通してみられる心の働きは、共通祖先にまでその起源が遡れると考えます。これが進化史の再構築です。もうひとつの目的は、ヒトを含む動物の心の働きが出てきた原因を探ります。例えばコウモリと鳥は両方とも翼を持ち空を飛びますが、コウモリは哺乳類で鳥は鳥類のため、系統的にはかけ離れています。これは空を飛ぶ必要があるという共通の原因があったから。こういったことを研究するのが比較認知科学です」
「大学で私が比較認知科学を研究しようと思った時、ネコを研究対象に選びました。なぜネコだったかというと、可愛かったから。中学生の頃から実家では2匹のネコを飼っていて、多い時には7匹くらい、全部で23匹もいました。そういう環境で暮らしていたから、被験体がたくさんいたという理由もあったのですが。とはいえ、単に可愛いからといって研究はできません。イヌとネコは伴侶動物と言われ、人間とともにパートナーや家族として密接な関わりもつ動物の代表です。イヌネコともに日本ではそれぞれ1千万頭前後、合わせると2千万頭も飼われいます。ペットを飼うことの身体的な効果を研究する分野もあります。人間とペットの健全でよりよい関係を築くためにも、より認知行動学を研究する必要がある。そう考えて研究をスタートしました」
〈アーティスト・Houxo Queさん〉
〈Webプロデューサー・西村真里子さん〉
〈映像作家・山口崇司さん〉
「ネコは社会的なコミュニケーション能力が発達していないと思われていますが、人とネコは共存していて、野生種と比べ、イエネコはかなり変化しているのではないかと。ライオンやチーターといった例外を除いて、ネコ科の動物は単独種ですが、イエネコは人の与える餌に寄ってくるので、他個体と共存し、複数頭飼っている人はわかると思いますが社会的な順位なども形成されています。ネコとネコの間はもちろん、ネコと人の間でもコミュニケーションは成り立ちます。人間に対して拒否反応を示さないためには、生後2ヶ月までに人間と触れ合うことが必要と言われています。ネコから見たらヒトは他種なのですが、仲間として認識されている。また私は先日、飼い主の声を聞き分けられるかという研究を発表しました。ネコを飼っている人から見たら当然の話なのですが、研究として科学ジャーナルに掲載することで、ネコが研究対象になりえるということをアピールしました。研究としてネコの社会的知性の話は、イヌに対向してもっと発展させていくべきだと思っています」
■SYNAPSE Classroom vol.2「ネコとヒトの( ) -Love Metamorphose-」
http://synapse-academicgroove.com/2013/08/09/synapse-classroom-vol-2/
*レポートはこちら
■駒場いぬねこ研究室
http://beep.c.u-tokyo.ac.jp/~inu-neko/index.htm
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ネコの研究をする前に
「誰しも若かりし頃、なぜ自分は存在するのかと考えたことがあると思います。その答えを知りたくて、生物の進化について研究しようと大学に入りました。進化と言えばチャールズ・ダーヴィンを思い浮かべますよね。進化とは生物の遺伝的につくられている特徴、具体的な例としては、目の色や髪の色などが世代を経るごとに変わっていく事を指します。必ずしも高等な生き物が後からでてくるというはわけではありません。進化を説明するのが、ダーウィンが考えた自然淘汰理論です。 自然淘汰理論には4つの前提があります。ひとつは、生き物は繁殖する個体よりも多くの個体が産まれるということ。シャケの卵であるいくらを思い浮かべるとわかりやすいですが、いくらのほぼ大多数は途中で死んでしまいますよね。また2つめは同じ種でも、顔の形や大きさや性格など個体差がある。3つめは、その個体差の中には生存と繁殖に影響を与えるものがあるということ。食べられそうになったら、すばしっこい動物のほうが生き残るし、かっこいい人はより子孫を多く残す。個体によって差があります。4つ目はそういった個体差の中には遺伝が影響しているものがあるということ。子どもの顔が親とそっくりという現象もDNAから伝わった結果です。これら4つの前提が積み重なり、その時々により多くの子を残す遺伝的な特徴が次の世代に伝わることで、生物は進化してきたわけです。これが自然淘汰のプロセスで、人間もネコも同じプロセスを受けてきました」
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ネコ好きとイヌ好きを比較する
「イヌが好きな人とネコが好きな人は、ちょっと違いますよね。私は、イヌが好きな人はリア充ではないのかなと思うんです。極端なイヌ好きとネコ好きの例をあげると、ヒットラーはイヌ好きでヘミングウェイはネコ好き。イヌ好きな人は封建的で、ネコ好きな人は自由なタイプというイメージがあります。性格を分析する際に、1.外向性/内向性、2.愛想のよさ、3.誠実さ、4.神経質、5.開拓性=保守的でない、という5因子でタイプ分けができます。これらを元にイヌ好きネコ好きの4500名を対象にした研究結果では、外向性や愛想のよさ、誠実さはイヌ好きの人が高く、神経質と開拓性はネコ好きの人が高かった。データとしてみていくと、ネコ好きな人は人と接するのが苦手で閉じこもりがちだけれど、新しいモノ好きとい分析ができます。そういう人がネコに対してどんな魅力を感じているかというと、ilove.catのインタビュー記事のおよそ半数の人が“距離感がいい”という言っていました。距離感があるほうが心地よいと感じている。ネコ好きな人がイヌが苦手な理由は、私もそうなのですが、イヌはずーっと私のことを見ている。その密着度がちょっと疲れてしまうなと。他にもインタビューの中で、ネコは自由気ままで自立しているところがいいとありました。一方、イヌ好きの人は忠実で従順なところが好きといいますよね」
家畜化された動物たち
「ネコの魅力は行動だけでなく、容姿も可愛いと言われます。その可愛いという感覚を真面目に分析しようと思います。まずは家畜化の歴史から辿ってみると、10数年前までは人とネコが共生し始めたのはいまから4000年前の古代エジプトの頃ではないかと言われていました。それが、2004年にキプロスという島でネコと人間が同じお墓の中で埋葬されていたという発見がされました。この発見から、約1万年前から人とネコは共生していたのではないかというのが最近の説です。また遺伝子からネコがどこで家畜化されたのかも調べられています。ヤマネコとイエネコの遺伝子を比較し、共通点を調べていくと発祥の地がわかります。ネコの祖先種は、単独性のリビヤヤマネコだといわれています。一方、イヌはオオカミが祖先種で、群れ生活をしています。 リビヤヤマネコがなぜ人と共生するようになったかというと、人が農耕を始め、食べ物を蓄えるようになった時、ネズミなどげっ歯類が集まってきました。そのネズミを捕ってくれるネコを人間が受け入れ、共生しはじめたのではないかと言われています。また狩りをするには野生性が必要で、完全に家畜化されるというよりは、半野良として人間が与える食事以外にも自分で獲物を探したりもしていました。人間は大型動物や肉食動物などいろんな動物を飼ってみるのですが、餌の供給が問題となり、家畜化されるのは草食動物が多いですよね。また人間が動物をコントロールするためには、優位に立つ必要がある。そのためには順位のある群れで生活していて縄張りをつくらないということが重要です。こう考えるとイヌとネコでは大きな違いがあります。ネコは単独性であり、人の言うことを聞いてこなかったのです」
研究対象になりにくいネコ
「大学生の時、ネコに順番がわかるのかという研究をしていました。しかしイヌと違って、ネコは餌で釣れない。また外に連れ出せないので、お宅に伺わなければいけないし、知らない人が来たら逃げてしまうネコもいます。心理学の分野ではネコの行動は研究されてきましたが、基本的にネコは研究対象に向かないといわれてきました。 社会的知性という言葉があるのですが、他の動物に対して社会的な環境ででてくる心の働きのことで、同じ種として認知するかどうかといった簡単なことも含まれます。また表情の認知といった複雑なことも、社会的な文脈で心の働きの研究がされています。イヌに関するこういった研究の論文は、毎月雑誌に発表されています。イヌネコを飼っていたら当然と思うような行動も、研究として数値化して発表されているんです。ほとんどが、イヌはなんて賢いんだろうって結果なのですが、ネコについての研究は全くといっていいほど発表されていません。またこれは個人的な主観かもしれませんが、研究者として生き残るためには、自己アピールが上手くないといけない。イヌ好きな人は社交的で、研究者にもイヌ好きが多く、ネコ好きな研究者はなかなか生き残っていけないのではないかなと思っています」
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ネコを可愛いと思う理由
「私は養育行動にも興味があり、私自身も1児の母として暮らしているのですが、自分で子どもを産むまでは、ネコは可愛いと思うものの、子どもは全く可愛いと思えなかったんです。そこで可愛いについての研究もはじめました。まず可愛いとは、動物行動学者のコンラット・ローレンツが提唱した〈ベビースキーマ〉という概念が元になっています。幼い動物というのは頭、目が大きくて、ほっぺたが膨らみ、手足が短い。そういった要素に可愛いと感じ、養育行動が引き起こされるとされています。哺乳類は母親の保護なしでは生きていけません。そこで親側が養育行動を触発されるような形態になっている。その〈ベビースキーマ〉の基準を変えることで、可愛いと感じなくなるかどうかという研究もされています。また可愛いモノを見ていると手先が器用になるといった研究があったり、可愛いモノで心の働きが変わるのではないかということを調べることで、養育行動の研究をしています。愛着の対象としては、人間の子どもだけではなく、イヌやネコなどペットを自分の子どものように考えている人も多いですよね。子どもに対応するために進化した基準が、イヌネコにも応用されているのではないか。子どもに話しかけるように、ついつい高い声でペットに話かけてしまうことも研究されています。 ではなぜイヌではなくネコなのか。イヌは鼻が長い。小型犬はより〈ベビースキーマ〉を強調するために改良されていますが、ほとんどのイヌは鼻が長く〈ベビースキーマ〉からは外れます。一方、ネコは成猫になったとしても〈ベビースキーマ〉の要素を持ったままです。またイヌよりもネコのほうが目が顔の前についていて、鼻も小さい。だからその可愛いという要素が強い。形態的な特徴もそうですが、ネコと乳幼児には似た特徴が多くあります。ネコは抱きやすく、新生児と同じくらいのサイズで、2〜3歳児くらいの知能を持っているとも言われています。とはいえ、子どもは親の保護がなければ生きていけませんが、ネコは子どものように振る舞いながらも1個体の動物として自立している。子どもとネコの違いを調べることで、可愛いと思う行動・心理を分析する事ができるのです」
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